ハイパーループの栄光に向けてのBadgerloopの活動、イーロン・マスクの関心を惹く

Judy Warner
|  投稿日 July 24, 2017  |  更新日 March 16, 2020

Team Badgerloop,  Pod II W Team

6月のポッド2号機公開時のBadgerloopチーム

 

イーロン・マスクがハイパーループ方式の輸送システムの構想をホワイトペーパー紹介したのは2013年のことです。彼は完全なオープンソース方式による開発を提案し、ポッド コンテストに参加する大学を募集しました。コンテスト用のポッドを試運転で走らせる1マイル近い縮小版の真空チューブの建設資金は、スペースXが負担しました。スペースXが定めた一連の要件に適合しスペースXが強く望んでいるチューブ走行を第1回のコンテストで実現するチャンスを獲得できたポッドは、3つだけでした。

 

すべてのチームにとって最初の関門は構想と設計でした。 選出されたいくつかの設計案が、2016年1月のデザイン週間の週末にテキサスA&M大学で採用され審査されることになっていました。1,000件の設計案のうち120のチームのものだけが選出され、デザイン週間の週末に参加できることになりました。目標を達成できたのはBadgerloopチームだけではありませんでしたが、Badgerloopチームは、「設計製作全般」のカテゴリーで印象的な世界レベルの競争相手たちの中で第3位を獲得しました。これにより彼らは、ポッドを製作し2017年1月の第1回コンテストで競争するチャンスを確立できました。

 

通常の学年期間や夏季期間でBadgerloopチームの陣容は変化しましたが、メンバー数は30 ~ 80名でした。キャッスルは12人ほどのリーダーの1人で、電気担当チームの重要人物です。電気システムチームは、Altium Designerを使用して、STMのNucleoを採用した1枚のマイクロコントローラー基板とシールドを設計しました。この基板は次回新たなポッドを開発する際にも再利用できるようになっています。また、彼らはバッテリー安定化基板と電磁弁制御基板も設計しました。ワークフローを簡素化するため、彼らは、チームメンバーが2つの大陸と3つのタイムゾーンに分散してしまう夏季期間中でも密に連携しながらプリント基板設計を行えるよう、サブバージョンネットワークを開発しました。

 

 

Pod II unveiled, aka the pod built for Elon Musk

2017年6月17日に公開されたポッド2号機

 

 

Badgerloopチームは2016年12月にポッド1号機を公開し、1月下旬の第1回ハイパーループポッド コンテストに向けて国内を輸送しました。彼らの目標は高く、ポッドのチューブ内走行を目指して週40 ~ 50時間も作業しました。検査手続きの息詰まるような緊張感の中で、彼らは誤って12Vバッテリーをオンのままにしておいたため、電力がすべて失われてしまいました。彼らがせっかく見つけた代わりの電源も、電子システムを完全に破壊してしまい、チューブ走行を行うという希望がすべて失われてしまいました。ポッドは自動式でサイズも縮小版だったため、Badgerloopチーム以外の競争相手のポッドにはいずれも客席がなかったのですが、Badgerloopチームのポッドには客席があったのです。おまけにオーディオシステムまで付いていました。コンテスト期間の前と期間中に、チームはイーロン・マスクに対し、彼らのポッドに来て座ってみてくれるよう何度もツイートしました。スペースXの技術者たちは、マスクのチームが来ることは絶対にないだろうと思っていました。おまけに、彼らのポッドの展示場所は、マスクがイベントから立ち去る前に短いスピーチを行った演台から1/4マイルほど離れた位置にありました。 しばらくすると、Badgerloopチームのポッドの方に向かって群衆が移動し集まり始めました。さらに人数を増やしつつ群衆が近寄ってみると、Badgerloopチームとキャプテンを歓迎するためにやって来たのはイーロン・マスクではありませんか。チームは、「私たちはあなたのためにこれを製作したんです」と訴えながら是非乗り込んでくれるように誘っていたのですが、マスクは遠慮していました。最終的には、群衆の中の誰かが「ポッドに乗ってみてよ!」と叫んだのに応えたマスクが、微笑みながらBadgerloopのポッドに乗り込み、マスコミ向けのポーズをとりました。チームは熱狂しました。チームが撮影したコンテストの8分の動画とマスクが乗った瞬間の映像は極めて貴重です。

 

 

Elon Musk sitting in the Badgerloop Pod

 

 

Badgerloopチームは、自分たちの設計における将来のテクノロジー、スケーラビリティ、イノベーションに常に注目しており、磁場を特定の速度で回転させることで推進力を発生させるホイール状のハルバッハ配列を採用しています。スペースXは彼らの先見性を認め、コンテストの終了時にはイノベーション賞を贈りました。

 

 

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私はキャッスルに、Badgerloopチームがコンテストで成功と失望を感じたのは主にどんな点か、聞いてみました。彼は次のように説明しています。「実際に世界の技術が直面している多くの課題を関係者全員が経験できました。私たち全員が、教室での学習に固有な制約を大きく超えるさまざまなことを学習できたのです。コンポーネントの供給元を知るとか、コストや納期を考慮に入れるとかいった単純なことに目を開かされました。発生した多くの想定外の問題点から学習でき、対処方法も分りました。単に部品やリソースを渡されるのと違い、自分たちで賢くリソースを割り当てたり予算に組む方法を学習しなければなりませんでした。正しく行えたことからだけでなく、間違えたことからも学習できました」。キャッスルと仲間のチームメンバーは、この経験が就職時の履歴書に追加すべき非常に貴重な財産になるであろうことを理解しています。またキャッスルは、チームのリーダーを務めたことでより大きな責任感を実感できたと言っていました。

 

 

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ライアン・キャッスル(Ryan Castle)、Badgerloop電気担当チームリーダー

 

一方、彼らが失望したのは何よりも、ポッドをチューブに入れられなかったことです。また彼らは、急行便での運送費用を掛けすぎたことも理解しています。高品質な試験機器に割り当てた資金が少なかったことも後悔しています。たとえば、オシロスコープを共同で使用しなければならなかったため、キャンパス内の他の学科に借りに行く必要がありました。

 

次回は、もっと設計を簡素化し合理化することでしょう。キャッスルが個人的に後悔していることのなかで最も大きいのは彼のGPA(成績評価点平均)がわずかに低下したことですが、自身が学習できたことやチームが達成できたことを思えば取るに足らないことであると理解しています。次回、このチームはテストにはるかに多くの時間を割くでしょう。彼らは現在では、成功のためにはテストがいかに重要かを理解しています。

 

新しいポッド(ポッド2号機)は、6月17日の公開イベントで一般に公開されました。ポッド2号機は、白紙の状態から開発したものです。チームは、もう一度、自分たちのポッドをチューブに入れるという目標を定めました。今回は、ロケットで使用されているような低温ガススラスターを推進力に使用する予定です。このポッドははるかに高速で、約150メートル/秒(335マイル/時)の速度を実現できます。ただ、真空チューブの長さはちょうど1マイル足らずですので、スペースXが安全上の理由から最高速度での走行を許可してくれるかどうかは分りません。ポッド2号機の制動方式は、リニアアクチュエータでI形梁にクランプする摩擦式ブレーキです。このポッドは前回のものよりわずかに小さく、外殻は炭素繊維製となっていますが、前回と同様、人(イーロンという名前のあの人など)が中に乗ることができます。このポッドは自動制御式ですが、BadgerloopチームとスペースXのいずれもが非常ブレーキを掛けることができます。

 

昨年チューブ走行を実現させた3つのチームはすべて、大学院生と博士号取得者から構成されたチームでした。Badgerloopチームはメンバーのほとんど全員が学部学生ですが、それが理由で、ウィスコンシンのバスケットチームUWバジャーズのように熱心なこのグループの士気が落ちるとは思われません。

 

8月下旬に行われる第2回ハイパーループ コンテストでの彼らの主目標を聞いたところ、キャッスルが挙げたのが次の3つです。

 

●       チューブに入れること。

●       安全性。これは、推進システムのエネルギー量が大きくきわめて危険なためです。

●       最高瞬間速度を達成し、正しく減速し、そして勝つこと!!!

 

(コンテスト用ポッドの飛行シーンを見る)

 

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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