初心者向け製造用PCB設計ガイドライン

投稿日 November 8, 2017
更新日 December 8, 2020
初心者向け製造用PCB設計ガイドライン

プロの設計者は、製造のための設計ガイドラインをよく話題にしますが、具体的にはどのようなもので、PCB設計ソフトウェアにどのように実装されるのでしょうか。PCB開発において、製造に適した設計(DFM)は非常にシンプルで、最大限の歩留まりで製造可能であることを保証できる場合のみ、設計案を採用すべきということです。このような簡単な説明では不十分であり、製造業者は設計ソフトウェアでPCBレイアウトを取り込めば、何でも製造できると考えてしまうのも無理はありません。

実際には、製造業者によって、製造能力、利用可能な材料や標準的なノータッチサービスは大きく異なります。よくあるミスや見落としによって基板が製造不能になり、大規模な再設計が必要になる場合があります。この記事では、新人や経験豊富な設計者が陥りがちな、よくある失敗を簡単にご紹介します。私自身もこのような失敗をした経験があります。しかし、皆さんはこのような失敗から必ず立ち上がり、基板を確実に製造できるのです。

製造用PCB設計の基本的なコツ

以下のポイントは、主に2つの重要な項目に関連しています。

  • 材料に関する考慮事項、特にコア/積層材料と銅箔の重量について
  • 製造上の制限事項、特にPCBレイアウトの形状と間隔について

上記を念頭に置き、設計を成功させるために必要な、製造用PCB設計における基本的なガイドラインについて解説します。

まずレイヤースタックアップを取得

新しい設計に取り組み、基板上に部品を配置し始めると、その手軽さに驚くことでしょう。インピーダンス制御や特定のバスの静電容量、密集したデジタル信号の配線を必要としないシンプルな基板であれば、標準化されたレイヤーの厚さで均等な層数の基板で配置を始めることも可能です。設計によっては、製造されたプリント基板が想定通りに機能しないこともあります。

PCB DFMガイドライン
PCB製造業者は、設計が製造可能であることを確認するため、スタックアップ表を送ることがあります。

趣味で使用するマイクロコントローラーの基盤であっても、ほとんどの設計では、少なくともレイヤーの配置と材料特性を知る必要があります。デジタルバスやインピーダンス制御されたトレース幅の設計や計算を始める前に、製造業者に連絡して、標準的なレイヤースタックを入手してください。レイヤースタックがない場合、想定通りに機能しないレイヤーで基板を製造してしまう可能性があるからです。もう一つのリスクは、製造できないレイヤースタックを作ってしまうことです。多くの場合は、スタックアップの仕様に合致する材料の在庫がない事が原因です。

銅箔の重量と電流密度、積層数を合わせる

選定した材料やスタックアップを承認してもらう際には、製造業者が銅箔の重量変更を要望する場合もあります。製造業者の材料一式で可能な銅箔重量を採用する必要があり、単に設計者として希望する重量を指定することはできません。特定の電流密度(パワーレールなど)に必要な銅の重量とトレース幅の見積もりに時間がかかった場合は、製造業者とスタックアップを決定する際に、必要な重量を必ず指定する必要があります。

銅箔同士のクリアランスを確保

新たなPCBレイアウトを始めると、ECADソフトウェアがほぼすべてのPCBに適切な値となるデフォルトのクリアランスルールを適用します。多くの場合、これらのクリアランス値は過度に安全範囲内で設定されるため、設計を始める前に正しいクリアランス値をプログラムしないことが一般的です。さらに、過度に小さいクリアランス値を入力すると、配線同士の距離を十分に取れず、基板が作れなくなります。

ポリゴンクリアランス
このトレースの近くに配置されたポリゴンをよく見てみると、DRCエンジンがこのウィンドウのトレース間の距離に沿って、クリアランスの問題にフラグ付けしました。トレースとポリゴンのクリアランスに関するルールは、十分な距離を取って設定する必要があります。お互いが近すぎる場合、製造中にこれらの間で意図しないショートが発生する可能性があります。

解決策:配線・配置を始める前に製造業者の最小値を把握し、これらの値を設計ルールとしてPCBプロジェクトにプログラムします。よくあるクリアランス違反の対策を確実に打ちたい場合は、以下のクリアランスに注意しましょう:

  • トレース同士
  • トレース/パッドからポリゴン
  • トレースからパッド 
  • パッド同士

最後の2点は、SMDパッドとスルーホール(ビアまたは部品リード)用のランディングパッドに適用されます。なお、銅箔が重いとエッチング補正が必要なため、これらの値は大きくなります。

ドリルヒットの重複

前回のガイドラインに沿ってパッド同士の最小間隔を設定した場合、この製造のための設計ガイドラインにすでに対処している可能性があります。ドリルヒットの間隔が狭いと、CNCドリルのブレによってドリルヒットが重複する可能性があります。理想的なヒット位置からわずかにずれるため、ビアやスルーホールのリードを配置する際に考慮しなければなりません。

ビアやスルーホールのリードのパッド間クリアランスに合わせたとしても、ドリルヒットのクリアランスを満たしたことにならない場合がありますのでご注意ください。例えば、10milのビアを12milのパッドに配置するとします。パッド同士の最小間隔が5milしかなく、ドリル間の間隔が10milの場合、パッド間の制限に沿うだけでは、3milのドリルヒット制限に違反することになります。

同様の問題は、以下のサーマルリリーフとGNDプレーンのクリアランスのように、プレーンを通過するドリルヒット間で発生する可能性があります。2つの緑の領域は、これらのネットのビアウォールとプレーン間のクリアランスを示しており、ここに残っているスライバは非常に小さく、製造することはできないでしょう。以下の具体例では、このような製造上の不具合によってデバイスが機能しない事態は起こりませんが、一般的にはそうでないこともあります。このような欠陥がスルーホールの間の表層にあった場合、狭い銅箔の部分が製造中にエッチングされてしまい、半田ブリッジが発生する危険性があります。

PCB DFMガイドラインのクリアランス
この2つのスルーホールの間隔が近いため、プレーン層には過剰にエッチングされ、製造された基板には現れない微小の銅箔のスライバが残ります。

この場合、より大きなパッドを使用するのが妥当であり、IPCの基本的なクラス要件を満たすには、(ドリル径)+8milの最小パッドサイズを使用すれば、ほぼ確実にドリル間のクリアランス制限を満たすことができます。

形状の小ささ

基板に部品やトレースを実装し始めると、トレースやドリルヒット、パッドを必要以上に小さくしてしまいがちです。クリアランスのルールによって、すべての設置間隔はすでに決まっていますが、それと同様に重要な設計要件が、形状の最小値です。その中でも穴とトレース幅の最小値の2点は要注意です。この点は、製造業者の形状サイズを調べ、設計ルールにプログラムすることで簡単に対応できます。ほとんどの基板に適用される典型的な製造上の制限は、トレース幅4milとドリルホール幅6milです。インピーダンスの制御を必要としないシンプルな基板では、トレース幅8mil〜10mil、ドリル径10milを採用するのがベストです。

ソルダーマスクのスライバ

ソルダーマスクのスライバは、開口部が近接する部品同士の間に流れる溶融はんだの堰き止めとして確実に機能するようにするためのもので、アセンブリの際に見過ごされがちな点です。パッドが適切な間隔で配置されていても、NSMDパッドのソルダーマスクの開口部が大きすぎる場合、パッド間に非常に薄いソルダーマスクのチャンネルが残ってしまうことがあります。

ソルダーマスクスライバに関する欠陥
このQ9とQ10の間に残ったソルダーマスクのスライバは、薄すぎるため製造できません。ただし、パッド同士のクリアランス要件は満たしています。この解決策として、これらのパッドではソルダーマスクの開度を0milにする必要があります。また、これらのコンポーネントの間隔を数mil広げなければならない場合もあります。

ここでいうソルダーマスクのスライバ(形状が鋭角になった先端部分や微細な部分)の限界値は、一般的に5milです。ソルダーマスクのスライバが製造業者の限界値を下回ると、硬化後に折れる可能性があり、2つのパッド間で半田ブリッジが発生してしまうためです。この場合、間隔を空けるか、半田ブリッジが発生したパッドのソルダーマスクの開きを小さくして、十分な大きさのスライバを残すことが解決策となります。

シルクスクリーンの重複

配置および配線が終了したら、シルクスクリーンを確認し、デジグネータが重なっていないことを確認する必要があります。重複があれば、すべてがクリアになるまで、PCBレイアウトでこれらを移動させることができます。実際には、製造やアセンブリを成功させるために必要な条件ではありませんが、真摯な製造業者であれば、設計レビューの際に問題点として指摘します。

さらに深刻な問題は、シルクスクリーンと半田を塗るパッドやホールが重なってしまうことです。3Dモデルビューワーやガーバーで必ず目視で確認してください

上記のガイドラインは、ほぼすべての設計に当てはまる、最も一般的なDFMの問題に対処するものです。上記のガイドラインをプロジェクトに取り入れると、通常の設計プロセスの一部となります。これらのポイントをデザインルールにプログラムしておけば、製造前の設計レビューの一環として、基板をいつでも確認することができます。

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