PCB設計における自動インタラクティブ配線とPCBオートルーターは何が違うのか

投稿日 October 2, 2017
更新日 December 25, 2020

飛行中のAT-6
編集クレジット: Santiparp Wattanaporn / Shutterstock.com

 

 

しばらく前、私は第二次世界大戦時代に戦闘機パイロットが訓練に使っていたAT-6に乗って、空を飛べる機会をいただきました。飛行機の大ファンである私にとって、これほど素晴らしいプレゼントはありません。飛行体験までの5か月間は、大きな期待に胸を膨らませていました。そして、当日。それまでに感じたことがないほどの喜びをかみしめながら、いよいよ真っ青な空に向かって離陸です。パイロットは緩横転を披露してくれました。ところが、トップガンに対する私の期待は粉々に崩壊しました。それからのフライトは、飛行機酔いのための袋に顔をうずめて過ごすことになったのです。自分の身体が高速のアクロバット飛行に耐えられないのだとわかったとき、本当にがっかりしました。

それは、PCB設計で初めてオートルーターを使ったときの落胆と同じ気分でした。というのも、オートルーターは私と同じ程度の能力で配線に対応してくれると期待していたのですが、残念ながら、配線後の設計はとんでもないことになっていました。配線自体は完了していたものの、体裁を整えるのに数時間や数日という長い時間がかかりそうなクリーンアップを手動で行う必要があったのです。

ところが、最近では自動インタラクティブ配線技術のおかげで、設計者は自動配線を活用できるようになっています。自動インタラクティブ配線は自動配線とは異なるだけでなく、多くの点で自動配線よりも優れています。自動インタラクティブ配線の利点についてお話しする前に、まずはオートルーターと自動インタラクティブルーターの基本的な違いを確認しておきましょう。

 

自動インタラクティブルーターとPCBオートルーターの違いとは?

この2つのルーターは似ているようもののように思えますが、実際にはまったく違うものです。もちろん、どちらも配線エンジンですが、オートルーターではすべての配線が行われる一方で、自動インタラクティブルーターでは設計者が配線をコントロールできます。

オートルーターはスタンドアロンのアプリケーションとして長い間利用されてきました。現在ではPCBレイアウトソフトウェアと連動するようになっているものの、実行するには独自のデザインルールが必要です。これらのルールは手動で設定することも、レイアウトソフトウェアからインポートすることもできます。オートルーターを実行すると、設計に含まれるすべての有効なネットで配線が試みられます。ここでは、さまざまな配線ストラテジで事前に設定された条件を使って、一連の経路で配線が実行されます。完了すると、設計者は自動配線されたトレース情報をレイアウトアプリケーションにインポートし、既存の配線と置き換えます。オートルーターによって配線された使いものになるトレースの分量は、設計者の設定に完全に左右されるものの、結果は思い通りにはならないでしょう。

一方、自動インタラクティブ配線がうまくいくかどうかは、設計者が追加で設定した内容に左右されません。自動インタラクティブルーターはレイアウトアプリケーションに不可欠なため、既存のデザインルールが使用されます。これらのルールは、一般的な手動の配線で使用されているものです。自動インタラクティブルーター用のコマンドも、レイアウトツールの既存の配線メニューから簡単に使用できます。設計者は自動インタラクティブルーターで配線するネットやネットのグループを選択し、自動インタラクティブルーターを実行するだけです。配線は設計者がコントロールできるため、高速な自動配線を使って基板を手動で配線しているような感覚で作業できます。

 

 

3Dマザーボードのトレース配線

オートルーターの設定はかなり複雑になる場合がある

 

自動インタラクティブ配線と自動配線が異なる理由

オートルーターを正しく機能させるためには、たくさんの設定が必要になります。すべての配線が希望どおりに実行されるためには、オートルーターを仕込んでおかなければなりません。そのためには、オートルーターにデザインルールと配線ストラテジを読み込む必要があります。ネットクラスやトポロジーの制約といったデザインルールは、レイアウトソフトウェアからインポートできるものの、オートルーターで最高の性能を達成するためには微調整が必要です。とはいえ、ここで本当に困難になるのは、さまざまな自動配線のストラテジを設定することです。これらのストラテジでは、トレースの配線方法や配線を断念する前の試行回数を指定します。ここには誤った配線距離や、オートルーターが実行する配線のクリーンアップの試行回数も含まれます。自動配線のストラテジの作成は難しく、オートルーターがさまざまな状況でどのように機能するのか、ということは理解できるくらいの経験が必要になります。

 

一方、自動インタラクティブルーターでは面倒なストラテジの作成を行わずに、配線経路を指定できます。つまり、設計全体ではなく選択したネットでのみ配線が行われるため、オートルーターのようなストラテジが必要ありません。自動インタラクティブルーターは、配線の対象となるネットやネットのグループを選択すると実行できるのです。ここでは、ルーターによって配線経路が選択されるようにするか、設計者が手動で作成した経路をテンプレートとして使用するかを選択できます。配線経路のテンプレートを作成すると、配線が行われる場所を指定しながら、トレースを配線するという面倒な作業を自動インタラクティブルーターに任せることができます。

 

 

青い回路基板でのトレースの配線

自動インタラクティブ配線では、一様な配線パターンの作成が可能

 

自動インタラクティブ配線では、自動配線されない

自動インタラクティブ配線では、オートルーターに付随するような問題が発生しない一方で、自動配線された基板はさまざまな望ましくない結果にいたる可能性があります。トレースにうっとうしい小さなでこぼこのほか、角やスタブがあったり、基板のあちこちにトレースがさまよっている可能性もあります。これは、オートルーターがすべての配線を完了させるために、トレースをはぎ取って配線を再試行するために発生します。また、オートルーターは基板全体の配線を完了させようとします。そのため、一様な配線パターンを作成することではなく、配線を完了することに焦点が置かれます。結果として、バスなどの配線パターンが、厄介な個々のトレース配線の領域に分割されてしまうことがあります。

 

自動インタラクティブルーターの焦点はこれとはかなり異なり、基板全体ではなく選択したネットだけが配線の対象になります。選択したネットにしか焦点を置かないことで、ぴったりとした一様な配線パターンでトレースが配線されます。また、選択したトレースのグループで配線経路を指定することもできます。これは、配線に関する決定が設計者でなくルーターによって行われるオートルーターとの大きな違いです。

 

自動インタラクティブ配線では、オートルーターの機能を使って、正確な配線を手動で行うことができます。

 

基板設計CADのAltium DesignerActiveRouteでは、こうした自動配線の利点を活用できます。アルティウムが提供している基板設計の配線ソリューションの詳細についてはアルティウムのエキスパートまでお問い合わせください。





 

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