パワーインテグリティーにまつわる5つの俗説

Alexsander Tamari
|  投稿日 May 23, 2017  |  更新日 September 25, 2020

パワーインテグリティーは新しいものではありませんが、現在ますます注目が高まっており、今後も関係者の一番の関心事であり続けるでしょう。製品の高速化と小型化の傾向が継続するなか、もはや1ミリも無駄なスペースはありません。設計はこの事実を踏まえて進める必要があるでしょう。業界に23年以上従事されている方であれば、パワーインテグリティーに関する下記の俗説を耳にされたことがあるかもしれません。

 

銅箔を使え

皆さんは、「銅箔は使えば使うほどよい」と教えられたかもしれません。銅箔の流し込みを行うだけで、パワーインテグリティーに関連する問題は、すべてとは言いませんが、その大半が解決します。ただし、これに当てはまらない場合もあります。たとえば、熱に関係する問題は解決するものの、浮島や半島が残るといった他の問題を引き起こす場合です。無害に見えるものの、浮島や半島は特定の共振周波数を持っており、一定の状況下で障害を引き起こします。こうした障害はランダムに現れることもあるため、正確に特定して修復することは極めて困難です。これを呪いか何かのせいにする前に、銅箔の流し込みによって浮島や半島が発生していないかどうかを必ず確認しなければなりません。それを怠ると、設計を断念して、レイアウトをやり直すはめになります。

 

他に考慮すべきことはコストでしょう。これはエンジニアの頭にいつもあることではないかもしれません。銅箔は安価なものではありません。特に予算の制約がある今、やみくもに余計なプレーン層を追加するわけにはいきません。過大設計は高額になってしまいます。

 

 

 

IPC-2152は絶対に外さない

これは皆さんが驚かれることかもしれません。確かにIPC-2152は重要であり、許容範囲の温度上昇に対して配線幅を最小化するという手段で問題を回避する際の手引きとなります。ただし、そのためにIPC-2152を適用すると、電力配電回路網に必要以上のスペースを割り当てざるを得なくなります。つまり、貴重な面積が占領され、設計のレイヤーが増えてしまいます。

 

IPC-2152はいつでも使える優れたツールであり、効率的な電源供給の設計には有効ですが、むやみに適用すべきではありません。パワーインテグリティーツールとともにIPC-2152をもっと慎重に使用すれば、電力配電回路網の面積を削減しながら、製造に向けて安全に設計を進めることができます。

 

 

 

ビアが多くなり過ぎることはない

精通している方であればお気づきかもしれませんが、IPC-2152はビアとなるとあまり適切ではありません。配線幅と同様に、IPC-2152はかなり保守的であり、基板には大きめのビアが必要以上に形成される可能性があります。銅箔に大きな穴が開いてしまっては問題でしょう。つまり、電流が使う面積が減るために電流密度が増加し、結果として温度が上昇します。それだけでなく、残りの設計に割り当てられるはずの面積が奪われ、特に最後の10%の基板の配線を完成させるのが困難で時間のかかる作業になってしまいます。他のIPC-2152のルールと同じく、これらを理解して考慮に入れる必要があるものの、むやみに従うことは避けなければなりません。

 

 

銅箔はみな同じ

すべての銅箔が同じように作られているわけではありません。この事実は多くの場合に見落とされています。些細ではあれ、電力配電回路網を解析する際に軽視されがちな要素は、銅箔の導電率です。前述のとおり、すべての銅箔が同じではありません。PCB銅箔と純銅箔では導電率が違うため、異なる伝導率を使って設計を解析すると、結果も大きく異なる可能性があります。調査したところ、PCBの平均導電率は4.7e7 S/mであるのに対し、純銅箔では5.88e7 S/mとなりました。実に22.3%もの違いがあるのです。この重要な値は、製造業者に確認しておくべきでしょう。

 

専門家になるべし

これまで、設計者はパワーインテグリティー解析の専門家になる(または専門家を知っている)必要がありました。さまざまなオプションやパラメータがあるソフトウェアがあまりにも複雑なため、パワーインテグリティーやシミュレーションの専門家に設計を何度も転送しなけれならないからです。これは理想から程遠い状況です。しかも、高額なコストと時間がかかり、基板が完成するまで何度も転送を繰り返す必要があるのです。

 

消費者が求めるように現在の設計は極めて小型化しているため、最新の製品についてはパワーインテグリティー解析が避けて通れない必須のプロセスになっています。忘れないでください。銅箔がすべての問題を解決してくれるわけではなく、ビアも思っていたほど扱いやすくはありません。IPC=2152は完全な解決策などではなく、むしろ出発点にすぎないのです。

 

本当に必要なのは、電流用の設計ソフトウェアと統合できる使いやすいツールです。視覚的に問題を特定でき、設計中に変更が可能なツールを選択してください。そうすることで、シミュレーションの専門家と絶えずデータをやりとりする必要はなくなります。

筆者について

筆者について

Alexsanderは、テクニカル マーケティング エンジニアとしてAltiumに入社し、多年にわたるエンジニアリングの専門知識をチームにもたらしてくれています。エレクトロニクス設計への情熱と実践的なビジネスの経験は、Altiumのマーケティング チームに彼ならではの視点を提供してくれます。Alexsanderは、世界の上位20校であるカリフォルニア大学サンディエゴ校を卒業し、電気工学の学士号を取得しています。

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