片面基板の設計の要点

投稿日 June 1, 2020
更新日 November 30, 2020
片面基板の設計の要点

プリント基板は電子回路の配線手段として登場し、電子部品と歩調を合わせて進化してきました。

1960年代に入りトランジスタが使われるようになると、真空管時代の空中配線に変えてプリント基板が使われるようになりました。そしてその後 IC・LSI が現れ、その進化に合わせて基板の多層化が進みまました。その結果、現在のデジタル機器では当り前のように多層基板が使われるようになりました。

片面基板はプリント基板の原型であり、今では時代遅れなものに見られがちです。しかしまだ役目を終えた訳ではなく、いたるところで使い続けられています。例えば、回路規模が小さく実装スペースに余裕がある家電製品などでは、さほど実装密度を上げる必要は無く、片面基板で充分な場合があります。そして、なによりも片面基板は安価ですので、今後も需要が途絶えるは無さそうです。

そこで今回は、このシンプルな片面基板を取り上げ、設計上の要点を解説したいと思います。

片面基板の特徴と課題

片面基板では、ただ一つの銅箔面で全ての配線を完結しなくてはなりません。片面基板の設計ではこの事によって生じるさまざまな課題を解決しなくてはなりません。

例えば、片面基板では配線を交差させる事はできません。またプリント基板は電子部品間の端子間を接続し回路を形成するという役割の他に、部品を固定するというもうひとつの役割がありますが、片面基板ではこの事に対する特別な配慮が必要になります。

ストレスに耐えうる強度を得るために

片面基板に於いても、両面基板と同等の精度でエッチングや穴加工を行う事ができます。しかし片面基板でよく使用される紙フェノール基板は、両面基板で使われるガラス基板ほどの強度は無く、熱に対しても敏感です。このため、精細な配線パターンを用いると断線の危険性が高まります。

また、スルーホールが形成されませんので、片面に置かれたパッドだけで部品を保持しなくてはなりません。このため、大きなサイズのパッドを使って、穴加工後の箔残りを十分に確保しなくてはなりません。

  • 配線パターンの

両面基板ではピン間3本の線幅基準である、0.14mm幅の配線パターンが当たり前のように使われます。しかし、紙フェノールの基材を使う片面基板では、強度が不十分な上に熱による収縮・膨張によって断線が起こりやすくなります。このため、片面基板ではピン間2本またはピン間1本の線幅基準である、0.2mm~0.3mm程度を最小線幅とします。この最小線幅は、基板のサイズや用途を考慮してケースバーケースで決める事が必要ですが、もし0.2mm以下の線幅で配線する場合には、ガラス基板を用いるのが一般的です。

尤も、実際に片面基板が使用されている例を見てみると、1,27mm程度 のグリッドを使って、0.5mm以上の線幅で配線されている場合が多いようです。

図1. プリント基板の線幅基準
図1. プリント基板の線幅基準
2.54mmピッチのピン間に、何本の配線を通すかによって線幅が決まります。線幅は、ピン間1本、2本、3本に対してそれぞれ、約0.3mm、0.2mm、0.14mmとなります。この基準はスルーホール基板が前提とされています。スルーホールが形成されない片面基板では、大型のパッドを用いなくてはならないので、2.54mmピッチのピン間に配線を通す事は困難です。
  • 片面基板のパットサイズ

片面基板ではスルーホールが形成されない為、部品を半田面のパッドだけで支えなくてはならず、両面基板よりもパッドサイズを大きくしなくてはなりません。小型の抵抗やコンデンサ、ピン数の多いICなどでも、穴径に対して1.0mm以上大きいサイズのパッドを用いて、穴加工後の箔残りを0.5mm程度確保します。

また重い部品や、バッテリーなどの保守性が求められる部品に対しては、穴径 + 2.0mm程度のパッド径を目安とします。そしてそれでも不十分な場合には、パッドの形状を工夫して銅箔の面積を増やします。また、ラジアル型の大きな電解コンデンサなどでは、糊付けによって部品を基板に固定します。

図2. 両面基板との構造の違いとパッドのサイズ
図2. 両面基板との構造の違いとパッドのサイズ
片面基板ではスルーホールが形成されないため、大きなサイズのパッドが必要になります。

・ティアドロップの付加

プリント基板のエッチング工程では、鋭角な形状の銅箔部分に溶液が溜まりやすく、そのために銅箔が痩せてしまうという傾向があります。熱に弱く、柔らかい材質の片面基板ではこの「銅箔の痩せ」による断線を防がなくてはなりません。

特に、部品パッドからの引き出し部は断線が起こりやすい為、ティアドロップによる、鋭角の解消と補強が必要です。

基板設計ツールのAltium Designerでは、このティアドロップを自動的に発生させる事ができます。

図3. Altium Designerのティアドロップ設定画面
図3. Altium Designerのティアドロップ設定画面
[ツール] - [ティアドロップ] により、ティアドロップの設定画面が現れます。パッドとの接続部だけでなく、ネックダウンやT分岐の部分にもティアドロップを発生させる事ができます。
図4. ティアドロップが付けられた片面基板の配線例
図4. ティアドロップが付けられた片面基板の配線例
抵抗のパッド径は3mm、コンデンサのパッド径は2mm、トランジスタのパッドは1mm x 2mmの長円形状。最小線幅は、0.5mm。

ジャンパーで接続

片面基板では配線を交差させる事ができない為、ジャンパー線で配線をまたいで横切ります。片面基板ではこのジャンパー線による接続は不可欠であり、Altium Designerでは、フットプリントのパッドに特別な属性を持たせる事により、ジャンパーによる配線をサポートしています。

ジャンパー線で配線を行う場合には、ジャンパーとして使用する部品のパッドに、ジャンパーIDを与えます。このジャンパーIDは任意の数字です。通常、ジャンパーは2つの端子で構成されており、この2つの端子のジャンパーIDが一致していれば、ジャンパーとみなされます。

ジャンパーの挿入は以下の手順で行います。

  1. 部品ライブラリからジャンパーとして使用するフットプリントを呼び出して配置する。
  2. 対になっている2つのパッドにネット名を付ける。
  3. 両方のパッドに同じジャンパーIDを与える。

この手順により部品がジャンパーとみなされ、パッド間に弓型の線が表示されます。

図5. ジャンパーの利用
図5. ジャンパーの利用
2ピンの部品を配置し、両方のパッドに同じネット名と同じジャンパーIDを付けます。

 

ジャンパーは片面基板の配線には欠かせないものですが、多用するとスペースを浪費します。このため、安易なジャンパーの使用は避けなくてはなりません。

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