Altium Designerがサポートするガーバーとその後継フォーマット

Altium Designer
|  Created: March 22, 2021  |  Updated: March 9, 2021
 Altium Designerがサポートするガーバーとその後継フォーマット

設計を終えたPCBを製作する場合には、ガーバーデータを出力してプリント基板メーカに渡します。そして、基板メーカーではこのガーバーデータからアートワークフィルムを作成して基板上に配線パターンを形成します。このガーバーのフォーマットは標準化されたもの(または、標準的に利用されているもの)が複数存在します。Altium Designerはこれらを広範囲にサポートしています。

図1. Altium Designerがサポートするガーバーフォーマット
図1. Altium Designerがサポートするガーバーフォーマット
Altium Designerの [ファイル] - [Fabrication Outputs] によって表示されるメニューには、[Gerber Files]、[Gerber X2 Files]、[IPC-2581]、[ODB++ Files] の4つのフォーマットが示され、状況に応じてこれらを使い分ける事ができます。

これらのフォーマットの中で業界標準として使用されているのがガーバー RS-274Xです。これは、拡張ガーバーと呼ばれ、基板メーカとのデータの受け渡しは、ほとんどどこのフォーマットで行われています。

ガーバー RS-274Xは全ての基板メーカが例外なくサポートしており、標準中の標準であるといえます。しかし、プリント基板の多層化が進む中で、よりインテリジェントなフォーマットへの移行が進みつつあります。

そこで、今回はAltium Designerがサポートする新旧のフォーマットを、時系列的に見ていきたいと思います。

ガーバーRS-274DとRS-274X

業界標準として普及しているガーバーフォーマットにはRS-274DとRS-274Xがあり、それぞれ標準ガーバー、拡張ガーバーと呼ばれています。

ガーバーフォーマットは、もともとはフィルム作画機(フォトプロッタ)メーカーGerber-Systems社(現Ucamco社)の社内規格でしたが、デファクト・スタンダードとして定着したため、1979年にEIA(米国電子工業会)でRS-274D として規格化されました。

このガーバーRS-274Dは、アートワークを「点」と「線」の組み合わせだけで表現するベクトルデータです。これには、作画するすべての「点」と「線」の座標が示されています。そして、この「点」をFlash、「線」をDrawと呼んでいます。しかし、この「点」と「線」には形状とサイズが示されておらず、Dコードと呼ばれる作画に使用するツールの番号が示されています。このため、実際に作画する際には、このDコードに対してツールの形状とサイズを与えなくてはなりません。 

初期の作画機(フォトプロッタ)では、シャッター付きの穴に光を通して光束を制御していました。このため、作画ツールをアパーチャ(穴)と呼び、そのサイズを示すリストをアパーチャ・テーブルと呼んでいます。RS-274Dで作画する際にはガーバーデータだけでなく、必ずこのアパーチャ・テーブルが必要になります。

また、RS-274D には面(ポリゴンやリジョン)を表現するパラメータがありませんので、ベタで塗りつぶす部分には、多数の「線」を並べなくてはなりません。このため、基板の配線パターンが単純であってもベタ領域が多いとデータ量が激増します。

このようなRS-274Dの改良版としてガーバーRS-274Xフォーマットが策定されました。これには、アパーチャの定義が含まれており、別個にアパーチャ・テーブルを用意する必要はありません。また、ラスタープロッターへの対応として「点」と「線」だけではなく「面」の表現が可能になっています。これらの利点によってRS-274X への移行が急速に進み、今ではRS-274Dが使われる事は無くなりました。

しかし、何十年も電子機器を作り続けている企業では、新旧のガーバーファイルが残されており、再利用の際にはそれらがRS-274D(標準ガーバー)なのかRS-274X(拡張 ガーバー)なのかを知らなくてはなりません。これは、ファイルをテキストエディタで開いてみるとすぐに見分けられます。RS-274Xでは座標値の記述の前にDコード(ツールの形状とサイズ)が定義されており、この記述が無ければRS-274Dである事がわかります。

図2. ガーバーRS-N74X(拡張ガーバー)のアパーチャ定義
図2. ガーバーRS-N74X(拡張ガーバー)のアパーチャ定義
座標値の記述の前にアパーチャが定義されています。

ODB++

ガーバーRS-274DとRS-274Xは、Altium Designerの最初期のWindows-PCBツールからサポートされています。その次にサポートされたのがODB++です。このフォーマットは、PCBの製造と実装に必要なデータを包括的に受け渡しする事を目的に、Valor Computerized Systems社によって策定されました。これには、アートワークイメージだけでなく、レイヤスタックの情報やドリル情報が含まれています。さらに、実装される部品やネットリストなどの、インテリジェントな情報も含まれています。

このフォーマットでは、複雑な多層基板のデータの受け渡しが簡素化されます。また部品実装を含む情報の伝達が一度に行えるため、機器の製造を一括外注するような場合には特に便利なフォーマットであるといえます。

図3. ODB++の設定画面
図3. ODB++の設定画面

GERBER X2とIPC-2581

ガーバーRS-274Xでは、基板を構成する各層ごとにファイルが独立しており、多数のファイルの受け渡しが必要で、ドリルデータも別途に用意しなくてはなりません。また、レイヤ構成の情報が無くファイル名での判別が必要になり、基板メーカ側でも取り扱いに手間取ります。このような課題を解決するため、Altium DesignerではGERBER X2とIPC-2581をサポートしています。

GERBER X2は、旧Gerber-Systems社を買収したUcamco社がRS-274Xを拡張したものであり、基板を構成する全層のアートワークイメージとレイヤ構成情報、ドリル情報などを含んでいます。プリント基板の加工にフォーカスした仕様になっており、RS-274Xとの互換性が保たれています。まさに、RS-274Xの後継としての位置付けにふさわしいフォーマットであるといえます。

図4. GERBER X2の設定画面
図4. GERBER X2の設定画面

一方のIPC-2581は、業界団体IPCに参加するメンバーによって策定された規格であり、基板を構成する全層のアートワークイメージとレイヤ構成情報、ドリル情報などを一つのファイルに含める事により、RS-274Xの課題を解決しています。

さらに、IPC-2581には部品実装に必要な情報が含まれており、単なるRS-274Xの代替としてではなくより広範囲な製造データの受け渡し手段としての利用する事ができます。

図5. IPC-2581の設定画面
図5. IPC-2581の設定画面

さて、どのフォーマットを使うか?

このように、Altium DesignerはガーバーRS-274Xの後継として策定された複数フォーマットをサポートしています。ここで取り上げたODB++、GERBER X2、IPC-2581の仕様はそれぞれ異なりますが、どれを使ってもRS-274Xでの煩雑さ解消するには十分です。もし、これらの新しいフォーマットでデータを受け取ってもらえる機会があれば、フォーマットに拘らず積極的に利用してみてはいかがでしょうか?

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