Altium Designerでガーバー編集

投稿日 五月 12, 2020
更新日 七月 27, 2021
Altium Designerでガーバー編集

既存のPCBレイアウトを再利用したい場合がよくあります。しかしそのプリント基板がAltium Designerで設計されているとは限らず、思い通りにはいかない場合があります。例えば、Altium DesignerのPCBエディタは他社のフォーマットで保存されたPCBデータを直接読み込める機能を備えていますが、社外に設計を委託した場合などでは、Altium Designer ではサポートされていない形式で保存されている事も稀ではありません。

そこで役立つのがガーバーデータです。基板設計ツールのAltium Designerでは基板の製造に使用されるガーバーデータを読み込んで、使い慣れたPCBエディタのコマンドを使って編集する事ができます。

ガーバーデータはネイティブなCADデータとは違い、標準化により良好な互換性が保たれています。そこで今回は、他社のCADから出力されたガーバーデータとNCデータをAltium Designerに読み込んで、再利用するための手順を紹介したいと思います。

サンプルとして使用したガーバーデータとNCデータ

サンプルとして以下のファイルを用意しました。

1. アートワークフィルムを作成するためのガーバーデータ

・基板外形 FPGASP1-GAI.pho

・部品面パターン FPGASP1 -L1.pho

・はんだ面パターン FPGASP1 -L2.pho

・部品面シルク FPGASP1 -SK1.pho

・部品面レジスト FPGASP1 -SR1.pho

・はんだ面レジスト FPGASP1 -SR2.pho

・アパーチャテーブル FPGASP1.apt

2. Excellon NCデータ

・穴加工データ FPGASP1 -NC.drl

3. 明細書

データの構成と仕様の明細 FPGASP1.txt

ファイル名と拡張子はCADの種類によって異なります。この用意したガーバーガーバーファイルには、”.pho”という拡張子が使われており、これらがAltium Designerで作成されたものでは無い事が分かります。

データをCAMエディタに読み込む

ガーバーデータとNCデータは、直接PCBエディタに読み込むのではなく、一旦CAMエディタに読込んだ後、PCBエディタに転送します。

CAMエディタへの読み込みは以下の手順で行います。

1. CAMデータの構成と仕様の確認

データの明細書でCAMファイルの構成と形式を確認します。

2. CAMエディタを起動

[ファイル]メニューから[新規] - [CAM Document]を選ぶ。これによりCAMエディタが起動し、編集画面が表示されます。

3. [Quick Load]によるCAMデータの読み込み

[ファイル]メニューから[インポート] - [クイックロード]を選びます。これにより [File Import – Quick Load]ダイアログボックスが現れます。

図1. [インポート] - [クイックロード]を実行
図1. [インポート] - [クイックロード]を実行
[クイックロード]で、プリント基板を構成する一連のCAMファイルを一度に読み込みます。

4. フォーマットの設定

[File Import - Quick Load]ダイアログボックスの下部にある[デフォルト単位]を選択しCAMデータの仕様書のとおりに設定します。そして同様に、この左にある[ガーバーオプション]ボタン押し、[全円をデフォルトで使用]の項目にチェックを入れます。

[File Import – Quick Load] ダイアログボックスに戻り[インポートするフォルダの指定]ウィンドウを使って、CAMファイルが保存されているフォルダを指定します。この操作によって[フォルダ内のファイル]ウィンドウに、指定したフォルダ内にあるCAMファイルのリストが表示されます。これを確認した後[OK]ボタンを押します。これによって読み込みが開始されます。そしてその後すぐに、[ドリルデータのインポート]ダイアログボックスが現れます。

図2. インポートするファイルの選択とフォーマットの設定
図2. インポートするファイルの選択とフォーマットの設定
CAMファイルが保存されているフォルダを指定します。ガーバーファイルの単位系や桁数等を、仕様の通りに設定します。

5. ドリルデータを読み込む

[ドリルデータのインポート]ダイアログボックスの[単位]ボタンを押してフォーマットを設定します。さらに[ツールテーブル]を押して、NCドリルのサイズと加工条件(ドリルの回転数と送り速度)を設定します。設定値はデータの明細書に従います。そして[OK]ボタンを押すと読み込みが行われます。

図3. ドリルデータのフォーマットの設定
図3. ドリルデータのフォーマットの設定
ドリルデータの単位系や桁数等を設定します。
図4. ドリルテーブルの設定
図4. ドリルテーブルの設定
ドリル径、回転数、送り速度を設定します。

6. アパーチャを設定

ドリルデータの読み込みが終わると[未設定アパーチャの検索]の表示が現れ、[OK]ボタンを押すと[アパーチャ編集]ダイアログボックスが表示されます。ここでアパーチャを設定します。このCAMエディタはアパーチャファイルの読み込み機能を備えており、これを使えば手入力の手間を省けますが、今回入手したアパーチャファイルは読み込む事ができませんでした。

図5. アパーチャテーブルの設定
図5. アパーチャテーブルの設定
アパーチャのサイズと形状を設定します。RS-274X(拡張Gerber)の場合には設定は不要です。今回のものはRS-274(標準Gerber)のため設定が必要です。
図6. 画面に表示されたアートワークイメージ
図6. 画面に表示されたアートワークイメージ
この画面では、部品面の配線パターンだけを表示させています。

これでCAMエディタへのデータの読み込みが完了しました。この状態でもアートワークを編集できますが、今回はこれをPCBエディタに転送します。

PCBエディタに転送する前に接続情報を持つPCBデータに変換

CAMエディタへのデータの読込が完了した後、読み込んだそれぞれの層のデータを連結し、接続情報を持つ一つの基板データに変換します。各層の関連の検出には穴あけの為のNCデータが使われます。ランドが重なった部分にドリル穴がある場合、その上下のランドはスルーホールで接続された一つのパッドに変換されます。これは次の手順で実行します。

1. 各層のデータに基板の層属性を設定

まず[テーブル]メニューから[レイヤ]を選びます。表示された[レイヤテーブル]画面で各層のガーバーデータに基板の層属性を設定します。例えば、FPGASP1-L1.phoは部品面パターンなので「Top」となります。FPGASP1-L2.phoははんだ面パターンなので「Bottom」です。さらにNCデータFPGASP1-NC.drlを「Drill Top」に設定します。配線の接続に関与する層はこの3つです。よってこの3つの層の設定だけでも、基板データへの変換が可能になりますが、基板の構造を、より的確に再現するために他の層も属性を設定します。

図7. それぞれの層に属性を設定
図7. それぞれの層に属性を設定
両面基板では「Top」「Bottom」「Drill Top」の属性を持つ3つ層が、接続情報の抽出に使用されます。

2. ガーバーとNCデータをマージしてPCBデータを構築

層設定が終わった後、PCBデータの構築を行います。これにはネットリストを抽出するためのコマンドである、[ツール] - [ネットリスト] - [抽出]を用います。このコマンドを起動するとドリル穴はスルーホールと見なされ、基板の上下に配置されている個々のランドはフリーパッドに変換されます。そして上下の配線パターンはこのスルーホールで接続され、形成された回路からネットリストが抽出されます。

図8. ネットリストを抽出
図8. ネットリストを抽出
ネットリストが抽出され、基板データが構築されます。

これで接続情報を伴うPCBデータが構築され、PCBエディタへの転送の準備が整いました。

PCBエディタへのデータの転送

CAMエディタの編集画面から、[ファイル] - [エクスポート] - [PCBへエクスポート]を起動します。これによりPCBエディタが自動的に起動しデータが転送されます。画面にはPCBイメージが表示され、使い慣れたPCBエディタのコマンドを使ってレイアウトを編集する事ができます。

図9. [PCBへエクスポート]コマンドを実行してデータを転送
図9. [PCBへエクスポート]コマンドを実行してデータを転送
コマンドを実行して処理が完了すると、PCBエディタが自動的に起動し、転送されたPCBデータが表示されます。

 

図10. PCBエディタの画面:CAMエディタから転送されたPCBデータ
図10. PCBエディタの画面:CAMエディタから転送されたPCBデータ
CAMエディタから「ワンクリック」でデータが転送され、PCBエディタに読み込まれます。この画面に現れたPCBの見た目は、PCBエディタで設計したものと変わらないように見えます。しかし実際には、部品(フットプリント)の概念が無い単純な構造のものになります。

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