パート1:PCBのデザインレビュー・プロセスが時代遅れになった理由とその対処法

Iryna Zhuravel
|  投稿日 September 20, 2021  |  更新日 June 25, 2023
パート1:PCB のデザインレビュー・プロセスが時代遅れになった理由とその対処法

プリント基板(PCB)のデザインレビューとは、製品開発のさまざまな段階で、基板のデザインにエラーや問題がないかを精査することですレビューには、正式なサインオフによる規則に従ったチェックリストから、回路図のスケッチや基板のレイアウトのより自由な形での検査まで、様々なものがあります。完全に社内で行う会社もあれば、デザイン会社や請負業者に補助を依頼する会社もあります。多くの場合、基板の製造可能性を確保するためにプロセスの早い段階で委託製造業者(CM)が関係しています。弊社ユーザーの一致する意見では、デザインレビューを行うことで、ミスを早期に発見し、基板のスピン数や製造の反復回数を減らし、製品の開発コストと製品化までの時間を短縮することができるとのことです。

利益が期待できるのは明らかですが、基板を出荷しなければならないという時間的なプレッシャーのため、デザインレビューのプロセスが急かされたり、エラーが見落とされたりする可能性があり、結果的に試作品の欠陥、基板のリスピン、製品の遅延などが発生します。

PDFプリントアウトに書かれたまたは長いメールチェーン経由で得られたフィードバックでデザインレビューの実施に使われる一般的な方法は、実際に問題を修正するよりも、フィードバックの監視に貴重な時間を費やされる可能性があることを意味しています。リモートワークやハイブリッドワークへの移行は、問題をさらに複雑にしています。デザインレビューを行うために全員を1つの部屋に閉じ込めるという多くの会社で好まれている方法は、めったに実行できません。

今回の記事では、デザインレビューのプロセスで何をチェックすべきかを詳細に調べるのではなく、レビュープロセス自体がどのように展開するのか、また、時間を最も有効に利用するためにどのようにプロセスを最適化するのかを紹介します。

多くの会社では PCBデザインレビューを現在どのように行っているのでしょうか?

アルティウムでは、何百人ものユーザーと話をしますが、多くの人にとってデザインレビューは似たようなシナリオに従って行われます。ユーザーが数時間から1日中続く形式的なミーティングやビデオ通話を行い、すべてのステークホルダーにデザインを精査してもらいます。このプロセスは、製品開発のさまざまな段階で繰り返される可能性があります。ユーザーは、フィードバックを保存、文書化し、監視するために複数のタイプのツールを使用しています:

オプション1:紙と赤ペン

弊社ユーザーのお一人からのコメントを紹介します:

「私は関係者へ回路図のPDFを送ります。ファームウェア担当者は、回路図のプリントアウトやPDFを入手して、紙に赤線を引くこともあります。その後、設計者が参加し、その変更を行います。たぶん、その紙は紛失されるかも知れません。たぶん、紙はリサイクル用ゴミ箱行きになったり、どこかでスキャンされるかもしれません。また次いで、デザインレビューでも同じことが起こります。図面をプリントアウトして、シートを持ってテーブルに着きます。全員が赤ペンを持っていて、何かを消しています。それを受け取り、オフィスに存在するようになります。たぶんスキャンすることも、しないこともありますが、フィードバックがデザインに組み込まれます。しかし、組み込みが行われたという記録はなにも残りません。すべてがハードコピーであるため、非常に揮発性が高く、紛失する可能性があります。」

オプション 2:スクリーンショットとメールチェーン

このフィードバックは、解説を添付してスクリーンショットに保存されます。フィードバックは通常、メールや時にはSlackまたはSkypeなどのチャットツールで共有され、中にはPowerPointのスライドに入力するユーザーもいます。そこには通常、疑問を解消するための質問や、やり取りする必要のあるステータスの更新があり、結果的に通常この方法では長くて扱いにくいメールスレッドが発生します。

「委託製造業者の場合、弊社がガーバーファイルを送り、次いで彼らが Microsof Paintでその上に「これ、これ、このように」と書いたスクリーンショットが送られきます。」また、それはメールの中では存在しても、二度と見つからないように紛失されることなります。」

オプション 3:Jiraやその他のプロジェクト管理システムやチケット発行システム

他ののお客様の説明を紹介します:

「私はJiraを集中的に使用してきました。修正ごとにタスクを作成しました。最近のプロジェクトでは、全部で95のタスクを作成しました。説明を入れたり、スクリーンショットを撮ったり、タスクごとにマークを付けたりする必要がありました。私は2画面構成を使用しています。1画面目にはJira、2画面目にはAltium Designerを配置しています。」

なぜこのような方法が問題になるのでしょうか?

フィードバックが紙の上に、またはスクリーンショット付きの長いメールチェーンによって保存されると、誰がフィードバックを提供し、何がデザインに組み込まれたかを監視するために、フィードバックを整理するのに手間がかかります。全てをコントロールしておくには、エンジニアは多くの管理業務に無駄な時間を割かなければなりません。しかしながら、何時間もかけて作業しても、プロセス自体の信頼性を向上させられない場合、最適な成果が得られる保証はありません。どんなに徹底して実施されたデザインレビューでも、フィードバックを見逃したり、間違ったバージョンを委託製造業者へ送ったりすることで、欠陥のある試作品が作られるのを防ぐことはできません。プロセスの揮発性があまりに大きいと、最大限の努力をしてもミスが看過される可能性があります。

さらに、医療機器や自動車などの特定の業界は、様々な管轄区域の政府機関から追加の精査や規制を受けなければならない可能性があります。機器のデザインに関するすべてのコミュニケーション、承認、および変更は文書化され、監査に利用できなければなりません。このような場合、フィードバック、変更、承認を監視することは、オプションではなくなり、非常に時間のかかるプロセスに変わってしまう可能性があります。

代替案はどのようなものですか?

製造業からソフトウェア開発まで、多くの領域で、プロセスの信頼性とアジリティを実現するための効果的なツールや方法論が開発されてきました。電子機器が世界を転換する最前線に位置してきた一方で、ハードウェア開発のプロセス自体は、デジタルトランスフォーメーションの関係者に遅れをとってきました。弊社は、電子機器のデザインプラットフォームである、Altium 365でこの状況を変えることを決定しました。なぜなら、重要なのは未来のテクノロジーをデザインすることに時間を費やすことであり、20種類のメールチェーンを追跡調査することではないからです。

Altium 365により、デザインやライブラリの一元化されたクラウドストレージとバージョンコントロールが実現します。一言で言えば、それはハードウェア用のGitHubであり、社内の機械チームやメーカー、その他のプロジェクトのステークホルダーと協働するのを支援します。下の略図は、弊社ユーザーの1社が作成したもので、Altium 365とはどのようなものかが説明されています。

パート2では、Altium 365によってプロジェクトを実行した場合、PCBデザインレビューはどのように見えるかを理解していただけます。

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筆者について

筆者について

Irynaは2014年にAltiumに入社し、在職中はマーケティングおよび製品チームでさまざまな職務を担当しました。現在、Irynaは、Altiumのお客様がAltium 365のメリットを得るための支援に注力しています。

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