プリント基板を設計する時には、始めにその外形を作成します。これを終えると基板はグリッドを伴う黒いエリアで表現され、画面の中央に現れます。設計者は、この画面で基板の領域を認識しレイアウトを行います。
Altium Desugnerでは、この基板外形を次の方法で作成する事ができます。
・外形の数値入力
・ウィザード
・テンプレート
・他のオブジェクトを基板外形に変換
・3D外形を読み込んで基板外形に変換
そして、これらの方法で作成された基板外形は次のような用途に利用されます。
・内層プレーンの基板端面からの逃げ(プルバック)の生成と内層の分割
・外形加工データの生成
・クリアランスチェック
これらの「用途」は、基板外形を作成する事の「目的」でもあり、CAMプロセス側から見ればその目的は、加工データの自動作成とデータの受け渡しの自動化であるといえます。
Altium Designerでは、外形加工の為のデータを2種類の方法で自動的に作成する事ができます。その一つは、[製造用データ出力] - [NC Drill Files]コマンドで穴加工用のドリルデータと同時に出力する方法です。この方法でデータを出力する場合には、[NCドリル設定]のダイアログボックスの[その他]の項目にある、[基板外形からルータパス作成]オプションにチェックを入れます。
外形加工データを出力する為のドリルデータ出力条件の設定
[基板外形からルータパス作成]オプションにチェックを入れ、ルータ径を設定する。
そして、もう一つは、ルータデータをガーバーフォーマットで受け渡しする場合に用いる方法です。ガーバーは作画用のフォーマットであり、直接、NCマシンを制御する事はできませんが、NCフォーマットへの変換は容易です。
これを行う場合、まず、PCB上のドキュメントレーヤーにルータパスを作成し、それを[製造用データ出力] - [Gerber Files]でアートワークと同じように出力します。
このルータパスの作成は、[基板外形] - [基板外形からプリミティブ作成]コマンドを起動し、表示された[基板外形からのライン/アーク プリミティブ]ダイアログボックスにある、[ルータツール外形]オプションにチェックを入れる事により行う事ができます。
基板外形からルータパスを出力する為の設定
出力先のレイヤを選び、[ルータツール外形]オプションにチェックを入れる。
作成された外形加工データはガーバーフォーマットで受け渡しを行う。
そして、基板を製作する際には、基板の形状を示した基板加工図が必要です。外形加工の為のデータをファイルで渡す場合にも、基板の形状を規定する仕様書として図面が必要です。
以下はその一例です。この図には外形だけで無く取付け穴の位置が示されており、基板外形とドリル穴との位置関係が分かります。
外形加工の情報の受け渡しは、このような図面とデータの両方で行うのが基本ですが、単純な外形の基板では、図面の目視でNCマシンへの外形入力が行われ、データが使用されない場合もよくあります。
基板加工図
基板の外形に加えて取り付け穴の位置が示されており、基板外形とドリル穴との位置関係が分かる。
基板外形を作成する為の機能はいくつも用意されていますが、その中で最も基本的なものとして、数値入力で外形を作成する方法を紹介します。
この機能は、もともと、マウスでカーソルを移動して左ボタンをクリックするという操作を繰り返して形状を描く為のものです。しかし、数値入力で外形を作成する場合にはマウスには一切、手を触れません。もちろん、マウスも使えますが、マウスでは精密な座標値を得るのにどうしても手間取ってしまいます。
幸いなことにAltium Designerにはマウスのカーソルを数値で指定した座標に移動させるという機能があります。マウスを手で動かす代わりにこの機能を使ってカーソルを移動させます。そして、マウスの左ボタンの代わりに [Enter]で座標を確定します。そうすると、マウスに一切手を触れることなく、数値入力で基板外形を作成することができます。
数値入力で基板外形を作成する
ショートカット[ J ] - [ L ]で座標値を入力して外形を作成。右上の角までの作成が終わり
右下の座標値を入力しようとしているところ。この作業中はマウスに手を触れてはならない。
例えば、先ほどの基板加工図にある145mm x 83mmの四角い基板の外形を作成する場合には、以下の手順を用います。
なお、基板外形の作成は[基板プランニングモード]で行いますので、 [新規] - [PCB]でPCB画面を開いた後、[表示] - [基板プランニング]コマンドでモードの切り替えを行う事が必要です。
数値入力による外形の作成は、次の手順で行います。
[デザイン] - [基板外形の設定]コマンドを起動
このコマンドの実行により、外形の作成が始まります。ここまでは通常のマウス操作を行いましたが、この後は一切マウスを使いません。
座標値入力画面[Jump to Location]を表示
ショートカット、 [ J ] - [ L ]を実行。これにより[Jump to Location]画面が表示される。
始点(基板の左下)座標へのカーソルの移動
[Jump to Location]画面の[ X ] 座標と[ Y ]座標の両方の項目に[ 0 ](ゼロ)を入力する。
この入力の際に必要な項目の移動(XからYへ)には、[tab]を使う。そして、[Enter]を押すとダイアログボックスが閉じて、マウスのカーソルは (1)で設定した原点の位置に移動する。
始点の確定
(4)が完了した状態で、もう一度[Enter]を押すことによって始点(X=0 Y=0)を確定する。
[Jump to Location]画面を表示して、左上の角の座標値を入力し確定する
このあと、再度、ショートカット[ J ] - [ L ]を実行。同様に、[Jump to Location]画面が表示されるので、基板外形の左上の角の座標値(X=0 Y=83)を入力して[Enter]を2回押す(1回の[Enter]でカーソルが移動し、2回目の[Enter]で座標が確定する)。
[Jump to Location]画面で残りの角の座標値の入力と確定を行う
上記(6)の作業を、残りの2つの角に対して行なう。そして、最後に始点(X=0 Y=0)に対しても同様にカーソル移動と座標の確定を行なう。これにより、外形が閉じコマンドが終了する。
要するに、[ J ]と[ L ]を押したあと座標値を入力し、[Enter]キーを2回押すという操作の繰り返しです。最初は、戸惑う事もありますが、すぐに慣れるはずです。
また、基板の角の形状は配線と同じように[Shift] + [Space]で変更でき、円弧にすることもできます。さらに、[Shift] + [ . ](ピリオド)で円弧の半径を大きくしたり[Shift] + [ , ](カンマ)で小さくしたりすることができます。
以上が数値入力による基板外形の作成手順です。少し裏技的な面もありますが、複雑な形状も精密に描く事ができます。また、他の方法で外形を作成した場合にも修正が必要になる事があります。そのような場合にも、このショートカットと数値入力を多用した編集テクニックが役立つはずです。
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