回路図エディタでは部品の端子間を接続する方法がいくつも用意されており、Wire(ワイヤー)やBus(バス)、Net Label(ネットラベル)などが良く使われます。これらの伝統的なものに加えAltium Designerには「Signal Harness」(シグナルハーネス)というユニークなオブジェクトが用意されており、これを利用して端子間の接続を行う事ができます。
これはちょうどワイヤーハーネスのように複数の配線を束ねるもので、1本のハーネスを配置するだけで一度に多数の接続を行う事ができます。
シグナルハーネスで配線する場合には、ハーネスコネクタで配線を束ね、シグナルハーネスでその束ねられた配線を引き回します。以下はシグナルハーネスを使った回路図の例です。ただ単に 2 本のコネクタの間を接続するだけの単純な回路です。
シグナルハーネスを使用した回路図
3枚の図面で構成された階層回路図。コネクタだけが置かれた2枚の子回路図を、シートシンボルとワイヤーハーネスが配置された上位の回路図で接続している。2枚の子回路図の回路は同じだが、信号名が異なっている。
この回路図を見るとシグナルハーネスがどのようなものなのかすぐにわかると思います。中央付近に淡い青色の見慣れないシンボルが配置されていますが、これがハーネスコネクタです。ここに示されているように、シグナルハーネスでは、ワイヤーとバスの両方を一つに束ねる事ができます。このようにシグナルハーネスを使ってバスと制御信号を一本に束ねると配線を簡素化する事ができ、読み取りやすい回路図を作成する事ができます。
また、シグナルハーネスでは、ネット名が一致しないバスやワイヤーを同電位に接続する事ができます。例えば、このサンプル回路図では、信号名が一致しない2枚の子回路図をシグナルハーネスで接続しています。また、シグナルハーネスにはネットラベルを付ける事ができますが、この回路図では使われていません。そして、回路図からは以下のようなネットが出力され、回路が意図どおりに接続されていることがわかります。
サンプル回路図から出力したネットリスト
2枚の子回路図に使われている信号名が食い違っているが、P0~P7とD0~D7が接続され信号名はD0~D7が
優先されている。また、/CE、/WE、CS はそれぞれ、P8、P9、P10 と接続され、信号名はP8、P9、P10 が
優先されている。ネットリストのフォーマットはTelesis。
シブナルハーネスで接続するために使用するオブジェクトは、「シグナルハーネス」「ハーネスコネクタ」「ハーネスエントリ」の3種類です。
周辺の回路を描き終えた後、まず、ハーネスコネクタを配置します。使用するコマンドは[配置]メニューに含まれており、マウス右ボタンのクリックによるポップアップメニューからアクセスできます。
ハーネスオブジェクトの配置
ポップアップメニューからコマンドを選んで配置する。
ハーネスコネクタを配置した後、その形状はハンドルをドラッグする事により自由に変更できます。また、シグナルハーネスを引き出す位置は[Properties]の[Primary Position](プライマリポジション)の項目に数値を入力する事により指定できます。
ハーネスコネクタのプロパティ画面
ハーネスコネクタの形状や色、プライマリーポイントの位置などを設定できるほか
ハーネスエントリの追加・編集ができる。
次に、ハーネスエントリを配置します。そして、このハーネスエントリと周辺の回路をワイヤーとバスで接続します。そして、最後にハーネスコネクタのプライマリーポイントからハーネスを引き出し、その先端にポートを取り付けます。
シグナルハーネスにはネットラベルを付けることができます。ネットラベルを付け、プロジェクトオプションの[上位階層名を優先](Higher Level Names Take Priority)を有効にすることによって、バスやワイヤーに与えられた信号名をシグナルハーネスに付けられた名前に置き換えることができます。
プロジェクトオプションの設定
シグナルハーネスに付加した信号名に置き換える場合には、[上位階層名を優先]
(Higher Level Names Take Priority)にチェックを入れる。
以下は、回路図にネットラベルを付け、ネットリストを出力した結果です。
シグナルハーネスにネットラベルを付け、ネットリストを出力
シグナルハーネスに付けられたネットラベルによって、ネットリストの信号名が[NewNet]に置き換えられている。
動作実績のある既存の回路を組み合わせて再利用するような場合、信号名が統一されていないことが多く、どこかでつじつまを合わせなくてはなりません。シグナルハーネスを使うと信号名が異なる場合でも支障なく接続でき、信号の出入り口で名前を統一できるため、回路図を使い回す場合に便利です。
Altium Designerについて詳しく習得したい方は、今すぐアルティウムのエキスパートにお問い合わせください。