真空管アンプのシミュレーションを試す

Altium Designer
|  Created: November 25, 2019  |  Updated: November 30, 2020

電子機器に使用されるスイッチング・増幅素子は、真空管に始まりトランジスタに進化しました。そしてその後、多くのトランジスタと周辺回路を1つのパッケージに集積したIC (Integrated circuit)が現れ、集積度は急速に向上し続けています。

デジタル機器の心臓部にICが使われるようになってからもう半世紀以上経ちますが、その間の進化は凄まじく、最近のCPUには1パッケージに400億個ものトランジスタを集積したものもあり、その端子数は4,000を越えています。ちなみに、ハリネズミの毛の本数は5,000~7,000本だそうです。

このような進化の中、古いデバイスも姿を消しておらず、さまざまな世代のデバイスが使い続けられています。今では過去の遺物のように見える真空管でさえ、音を扱うアナログ機器の分野ではまだ現役を保っています。

そしてAltium Designerでは先端技術だけでなく、古い世代の技術に対してもサポートされており、シンボルライブラリやサンプル回路図などにその一端を見る事ができます。

真空管アンプのシミュレーションを試す

Altium Designerは A/D混在回路シミュレータを備えており、この機能を試すためのサンプルデータとして、ディスクリート部品で構成された多数の回路が用意されています。そしてその中に真空管アンプが含まれており、Altium Designer がサポートする古典的なアイテムの一例としてこれを取り上げ、シミュレーションを試してみました。

サンプル回路を開く

真空管アンプのサンプル回路は[Vacuum-Tube Power Amplifier.PRJPCB]に含まれています。このプロジェクトを読み込み、[Vacuum-Tube Power Amplifier.schdoc]を開くと画面には真空管パワーアンプの回路図が現れます。

Altium Designer | [Vacuum-Tube Power Amplifier.schdoc]を開く

[Vacuum-Tube Power Amplifier.schdoc]を開く
シミュレーションモデルが割り付けられた、ウィリアムソン型真空管アンプの回路図が現れる。

これは、ウィリアムソン型と呼ばれるプッシュプルアンプです。比較的後期(新しい世代)のもので、初段 → 位相反転(PK分割)→ドライブ段→出力段という構成になっています。

ゲインを伴うドライブ段が余分に入っているため裸ゲインが高く、その特徴を利用した深いNFBによって特性の改善が図られています。NFBは、出力トランスの2次側からかけられており、安定に動作させる為には広帯域な出力トランスが必要になります。

なお、この回路図には、シミュレーションの実行に必要なモデルが全て割り付けられており、回路図を開いて初期設定のままシミュレータを起動すれば、過渡解析を実行できます。また簡単な設定によりAC 解析を実行して周波数特性を調べる事ができます。

周波数特性を見る

周波数特性を見るには、まず、[Simulation] -[Edit ‘Mixed Sim’ Setup]を選んでセットアップ画面[Analyses Setup(Mixed Sim)]を開きます。そして、[Analyses/Options]エリアの[AC Small Signal Analisis]だけにチェックを入れ他の項目のチェックを外します。そして、その右側の[Parameter]エリアで、スウィープの条件を設定します。

Altium Designer | セットアップ画面の表示と設定 - 1

 

Altium Designer | セットアップ画面の表示と設定 - 2

セットアップ画面の表示と設定
設定画面を開き、[AC Small Signal Analysis]を選び、それを実行する為のパラメータを設定。
[Start Frequency]を10Hz、[Stop Frequency]を100kHz、[Sweep Type]を[Decade]に設定する。

この設定によって、入力信号は10Hzから100kHzの間を常用対数の時間軸でスウィープします。

このあと[OK]ボタンで画面を閉じ[Simulation] -[Run ‘Mixed Sim’ Simulation]を選ぶとシミュレーションが実行され結果が画面に表示されます。

Altium Designer | AC解析の実行結果

AC解析の実行結果
画面には入力信号レベル(V)と出力信号レベル(V)のプロット図が現れる。
画面の左側には[Sim Data]パネル、画面下には[Mesages]パネルが表示されている。

ここまでの操作で、入力レベル(10Hzから100kHzまでのスィープ)と、それに対する出力レベルの変化を示す周波数特性図が表示されます。

パラメータースウィープで特性の変化を確認

さらにアンプの特性を詳しく知る為に位相の回転、およびNFBの帰還量に対する特性の変化を調べてみます。これにはパラメータースウィープを使います。この機能により抵抗値を自動的に更新しながら繰り返し解析を実行できます。

まず、以下のようにパラメータを設定します。

Altium Designer | フィードバック抵抗[R24]の値を[Variable]に設定し、パラメータースウィープを行う

フィードバック抵抗[R24]の値を[Variable]に設定し、パラメータースウィープを行う
帰還量の違いによる、ゲインと位相回転の変化を確認するために、パラメータースウィープによって
フィードバック抵抗の値を自動的に変化させながら、解析を繰り返し実行する。

Altium Designer | パラメータースウィープのパラメータを設定

パラメータースウィープのパラメータを設定
[Analysis Option]の[Parameter Sweep]にチェックを追加する。そして[Primary Sweep Variable]を[R24]、
[Primary Start Value]を[390]、[Primary Stop Value]を[3,9k]、[Primary Step Value]を[390]、
[Primary Sweep Type]を[Relative Values]に設定。この設定により、[R24]の抵抗値を390Ωから
3.9KΩでは390Ωステップで自動的に更新しながら、解析が繰り返される。

設定が終わった後、メニューから[Simulation] -[Run ‘Mixed Sim’ Simulation]を選ぶとパラメータースウィープが実行されます。以下は、その解析の結果です。

Altium Designer |  パラメータースウィープによるAC解析の結果

 パラメータースウィープによるAC解析の結果
フィードバック抵抗[R24]の抵抗値を390Ωから3.9KΩはで390Ωステップで変更しながら解析を実行。
画面にはそれぞれの抵抗値でのゲイン(dB)と位相回転(Deg)が表示されている。
なおパラメータースウィープでは、プロット図への波形の追加を手作業で行う事が必要。

そして、最後に、フィードバック抵抗[R24]を外して、アンプの裸特性を見てみました。

その結果は、以下のとおりです。

Altium Designer | フィードバック抵抗[R24]を外して解析した結果

フィードバック抵抗[R24]を外して解析した結果
アンプの裸特性を知るためにフィードバック抵抗[R24]外してAC解析を実行した結果。
平坦部のゲインは[40dB]を示している。NFBをかけた時のトータルゲインが約[23.5Db]なので、
[16.5 dB]程度のフィードバックがかけられている事がわかる。

なお、このサンプル回路は、[Download Examples and Reference Designs]ページから入手できます。ここから、[All Examples, in single file]をダウンロードするとその中には、以下のシミュレーション用サンプルが含まれています。

Altium Designer | A/D混在シミュレーション用のサンプルデータ

A/D混在シミュレーション用のサンプルデータ

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