Altium 365: クラウド対応電子機器実現の最先端

Judy Warner
|  投稿日 2019/11/27, 水曜日  |  更新日 2020/03/16, 月曜日

 

このインタビューでは、Altiumのチーフソフトウェア設計者であるLeigh Gawneに、 Altium 365と、クラウド対応電子機器の実現が設計技術者と業界全体に与える影響について考えを聞きました(2019年のPCB設計サミット「AltiumLive 2019 San Diego」で、Leigh Gawneがチームと共同で、Altium 365を使って基板をライブで設計する様子はこちらのビデオでご覧いただけます)。

 

Judy Warner: Leighさん、これまでの経歴とアルティウムでの現在の役割についてお聞かせください。

Leigh Gawne: 私の肩書は年を追うごとに少しずつ変わり、自動車業界の組み込みソフトウェアとシステムの開発に携わったり、さまざまな分野のハードウェア開発技術者や、独立した設計コンサルタントとして働いてきました。 

2010年に組み込み用コンピューターモジュールを提供するToradexに最高技術責任者として入社した後、BOM管理に特化した企業であるCiivaを共同で設立しました。Ciivaは2013年にToradexから独立し、2015年にアルティウムに買収されました。

ここ4年ほどは、Ciivaの多くのテクノロジーとサービスをAltium Designerに統合し、Altium 365プラットフォームを支える基盤の構築や提供を担当してきました。現在は、アルティウムのチーフソフトウェアアーキテクトをしています。 

 

Warner: Altium 365とは厳密にはどのようなもので、そして設計技術者にとってのAltium 365の価値とはどのようなものでしょうか? 

Gawne: Altium 365は、当社のクラウドプラットフォームです。目的は、電子機器設計のバリューチェーン内の他の関係者との共同作業や共有時の設計技術者の作業を容易にすることです。Altium 365が登場する前は、設計技術者は、PDF回路図、STEPモデルのエクスポート、Excel BOMの作成、または生産前の製造出力データの生成を行い、ソフトウェア技術者、調達担当者、または委託製造業者とそれぞれ共有する必要がありました。今では、設計フローを中断したり、面倒なエクスポートデータを作成したりすることなく、シンプルなブラウザベースのインターフェースを介してシンプルかつ簡単な方法で上記のすべてにアクセスして視覚化できます。

Altium 365クラウドプラットフォームが前述の機能を提供する一方で、Altium 365クラウドプラットフォーム上でアプリケーションが実行されるという考え方もあります。そのように初めて使用されるアプリケーションは、Concord Proです。Concord Proは、部品ライブラリ管理とECAD/MCAD変換に特に重点を置いた設計データ管理アプリケーションであり、強力なコンポーネントライフサイクル管理機能と、Dassault SolidWorks、Autodesk Inventor、PTC Creoとシームレスに統合する機能を備えています。

Altium 365の長期的なビジョンは、電子機器の設計と構築方法を変容させる方法で設計、製造、およびサプライチェーンを関連付けることです。

 

Warner: クラウド上で設計を共有することについて慎重な人々にはどのようなに説明していますか? 

Gawne: クラウド経由での共有は、何らかの方法や形式で、すでに多くの人が経験していると思います。作成したCDを委託製造業者に車で持ち込んだり、USBメモリを設計担当者に郵送したりする人がいまだ大勢いるとはとても思えません。みなさんはデータをメール添付で送信したり、データ交換に他のファイル共有サービスを使用したりすることに慣れていると思いますが、これはすでにクラウドを使用しているということです。

日常生活のその他多くの分野で、私たちはクラウドに大きく依存しています。クラウドは、オンラインバンキングであれ、ソーシャルメディアのプレゼンスであれ、私たちが世界を体験する方法を変え、これまでになく忙しい生活にこれまで以上の利便性をもたらしています。電子機器の設計や構築作業だからという理由で他とやり方を変える必要が果たしてあるのでしょうか? もっともな障壁があるものもありますが、ほとんどの場合、行く手を大きく阻むのは、精神的な跳躍ができるかということだけです。実際には、跳躍というよりは一歩(しかも小さな一歩)を踏み出すことです。それは困難であったり、不快であったりすると思われるかもしれませんが、一度使用すれば本当に優れていることが分り、使用する前の状態には二度と戻りたくなくなるでしょう。

 

Warner: Altium Concord Proは、Altium 365プラットフォームで使用できるようになった初めてのアプリケーションですが、今後、どのような種類のアプリケーションが、このプラットフォーム上でホスティングされるようになるのか教えていただけますか? 

Gawne: インタビューの短い時間であまり多く説明することは出来ませんませんが、プラットフォームに新しい次元の機能をもたらすアプリケーションをお見せできると思います。製造は私たちが熱心に取り組んでいる分野の1つであり、特定の製造業者やテクノロジーの機能を考慮した設計や、電子機器業界では今まで見られなかった方法によるハードウェアの高速プロトタイピングを容易に実行できるようにします。製造関連のアプリケーションが近いうちに登場することにご期待ください。 

物事を容易にして、アクセス可能にするという考え方に基づいて、Altium 365の構築を引き続き行っていきます。初期段階ですが、サードパーティ統合をプラットフォームに容易に組み込むことを可能にする機能をお見せできると思います。これらは必然的にアプリケーションになるでしょう。

 

Warner: Altium 365に使用されるWebクラウドホスティングサービスとはどのようなものでしょうか? またそのサービスではどのようなセキュリティ対策が提供されるのでしょうか? 

Gawne: Altium 365は、Amazon社が提供する世界最大のクラウドインフラストラクチャの1つであるAWS上で構築されています。4つの独立したリージョンに分散したマルチアベイラビリティゾーンのストレージサービスを備えた冗長コンピューティングリソースを使用しています。つまり、優れた可用性や信頼性、スケーラビリティ、パフォーマンス、そしてもちろんセキュリティも提供できます。一般に使用されている多くのAWSビルディングブロックとテクノロジーを活用することで、他の領域に既にあるものを再作成せずに、最高レベルのセキュリティを確保するために不可欠なアプリケーションサービスに集中できます。これを検証するために、外部の認定されたサードパーティ企業と協力してインフラストラクチャーとサービスの侵入テストを定期的に行っています。

 

Warner: では最後の質問です。2 ~ 5年後には、Altium 365はどのようになると思いますか? またどのような利点を設計技術者と業界全体にもたらしますか? 

Gawne: Altium 365は、最も速いペースで世界にいくつかの変化をもたらす一方で、未来を受け入れて進化する速度が多少遅い業界自体にも変化を促すものと本気で信じています。これには多くの理由がありますが、電子機器の設計にかかわるすべての人々、ひいては世界全体において、まったく新しい経験をもたらす変化を求める声が高まっていると感じています。

電子機器産業はすでに非常に大規模であると考える方もいるかもしれませんし、それは間違いではないでしょうが、すべては相対的なものであり、どこまで拡大していくと言えるでしょうか? 私の個人的な意見では、まだ何もわかっていないと思います。IoTの観点からすると、私たちはいまだにパソコン時代よりもIBMメインフレーム時代の方により近いと思われます。そして、そのような未来をもたらすには、私たちの作業や思考の方法に重要な変化をいくつかもたらす必要があります。Altium 365はただの始まりにすぎません。

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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