プロのPCB設計サービスプロバイダー活用のメリット

Judy Warner
|  投稿日 一月 21, 2019  |  更新日 七月 28, 2020

service bureau for pcb design concept

企業や設計チームは、さまざまな理由から自社の製品開発をサポートするため、専門的なPCB設計サービスプロバイダーを探し求めています。この記事では、設計サービスプロバイダーと契約を行うとき、どのような変動、利点、懸念の可能性が存在するかについて、Freedom CADのCEOであるScott Miller氏に話をうかがいました。

 

Judy Warner: Scottさん、Freedom CADについて簡単にご説明ください。また、御社が提供するサービスやサポートしているアプリケーションの種類についても教えてください。

Scott Miller: Freedom CAD Servicesは、15年以上もの間、納期と予算を守りながら、お客様に最高のサービスと最高の品質を届けることを使命としてきました。私たちの提供するサービスには、PCB設計、電気的、機械的なエンジニアリングやシグナルインテグリティのエンジニアリング、PCBレイアウト、納期の短いプロトタイプのハードウェアプログラム管理などがあります。

Scott Miller from Freedom CAD


 ISO 9001:2015認証とITAR登録に支えられ、私たちのチームは、実質的にあらゆる用途において顧客の特定業界にサービスを提供する態勢が整っています。

Warner: 設計者や設計チームは、通常どのような問題により、設計サービスプロバイダーのサポートを探し求めることになりますか?

Miller: お客様は通常、次の3つの理由のいずれかにより、サポートを求めます。


1) 自社内に設計能力がなく、外注して変動型のコストモデルを維持している場合。需要にかかわらず人材やハードウェアおよびソフトウェアの固定間接費がかかる自社設計に対し、外注はサポートが必要な場合のみ費用が発生します。


2) 需要のピークやスケジュールの前倒しに対応するため、Freedom CADを使用して社内リソースを拡充しようとする場合。


3) 自社の専門外の技術を使って作業しており、経験のある技術者と連携することに価値を認めている場合。私たちは、これを「リスク緩和」と呼んでいます。例えば、私たちは、1年に30~40件の高速、高性能バックプレーンの設計をこなします。多くの企業は、2~3年に1回程度しかバックプレーンの設計をすることがないでしょう。そのため、自分たちが何がわからないのかをわからないのです。

Warner: サービスプロバイダーを利用する主な利点を教えてください。

Miller: まずは拡張性です。サービスプロバイダーを活用することで、顧客は、スケジュールを守るために必要に応じて設計能力を得られます。例えば、私たちは、レイアウトの作業範囲を2~3シフトに分けるなどして、設計サイクル時間を短縮できます。
次のメリットは、変動型ではなく固定型のコストモデルを使用できることです。顧客は、外注により、まず人材(給与および諸経費)やハードウェアおよびソフトウェアのための固定費用を削減できます。また、人員の規模変更に必要な費用(人材を探すため仲介業者に払う費用や規模縮小の場合にもかかってくる費用)も削減できます。

Warner: 通常どのようなタイプの設計者が、設計サポートのためにFreedom CADを採用するのでしょうか?

Miller: 需要が変動する企業は外注という方法を採用します。企業によっては、請負業者を雇って社内や現場に配置する「内製化」が好まれます。内製化は、リソースを直接的に管理できる一方で、拡張性が限られます。企業が内製化を行う場合、適切な人材を探し、ハードウェアやソフトウェア、社内のシステムやプロセスになじませるために時間を費やす必要があります。そのために、週40~60時間ほど勤務可能な人材をもう1人確保することもあります(それも、適切な人材を見つけられた場合)。それに対して、外注は、はるかに拡張性の高いソリューションを提供できます。もうひとつのメリットは、多くの場合、より長い期間継続してサービスを受けられることです。オンサイトの請負業者は、契約が終わると次の契約に移りがちで、必要なときに作業してもらえない可能性があります。当社の外注設計者は、10~15年あるいは20年以上も、場合によっては複数世代の製品開発を通して、同じお客様のところで継続的に設計を行い、現場の知識を活用しています。

このような方法に価値を認めてくださるお客様は、毎年のように私たちのサービスを利用しています。

Warner: 一部の企業や設計者、特に軍の元請業者や請負業者は、IP保護について懸念しています。この問題についてはどのように対応していますか?

Miller: 第一に、当社はIP保護を非常に重視しています。私たちは全ての顧客と秘密保持契約を交わしています。定期的に、従業員とトレーニングセッションを開き、従業員の責任について再認識を促しています。さらに、顧客に対し、電子メールではなく、セキュアなShareFileシステムを使ってデータを暗号化して転送することをお勧めしています。当社は、データを格納するために最先端のサイバーセキュリティシステムを導入している管理情報サービスプロバイダーを利用しています。当社は、防衛および国土安全保障関連の市場向けに日常的にサービスを提供しており、ITARの認証を取得しています。また、現在NIST 800-171認証取得の手続き中です。全社的には、ISO 9001:2015認証を使用して、IP管理に関する一貫性のある取り組みを推進しています。

Warner: どのような種類のサービスやEDAツールに対応していますか? 

Miller: 私たちは、多くのツールを使ってさまざまなサービスを提供しています。

回路設計
Altium Designer、Cadence Concept、DxDesigner、OrCAD
レイアウト
Altium Designer、Cadence Allegro、Mentor Xpedition & PADS             
DFM & レイアウトの自動化
Valor NPI、CircuitSpace & dalTools
機械工学
SolidWorks、Pro/ENGINEER、AutoCAD
シグナルインテグリティ
Ansys HFSS(3Dモデリング)、Mentor Hyperlynx
パワーインテグリティー
ANSYS SIwave


Warner: PCB設計について幅広い視野をお持ちですが、どのような傾向にお気づきですか?

Miller: 幅広い市場向けにサービスを提供しているので、さまざまな傾向を見ています。より高性能あるいは高速の設計では、電力要件や異なる電圧の数についての要求が増えています。つまり、電力分配の戦略をレイアウトプロセスの非常に早い時期に計画する必要があるといえます。より細かいピッチのコンポーネントと基板密度のために、HDIの使用が増えています。スタブを取り除くバックドリル加工は、標準的な設計要件になっています。デザインルールに違反していないことを確認するため、配線前後のシグナルインテグリティおよびパワーインテグリティの解析が必要です。プロセスの非常に早い段階からPCB製造業者と密に連携して、積層材料やスタックアップを選択する必要があります。これらは全てPCBレイアウトプロセスに影響するもので、設計プロセスの当初に行われなかった場合、設計に多大な影響を及ぼす可能性があります。

また、特に医療、自動車、コンシューマー、IoT市場では、フレキシブルやリジッドフレキシブル設計の採用が増えています。これらはリジッド基板の設計とは異なる配慮が必要です。
 

Warner: 今後5~10年の間に、PCB設計はどのようになるとお考えですか?

Miller: おそらく、PCBレイアウト業界が直面している最大の問題は、設計者の平均年齢が50歳前後であること、そして今後この年齢が上がっていくという事実です。また、引き続き速度と密度が高くなり、設計者のスキルとCADツールの機能がそれに遅れないようにする必要もあると思います。将来の要求に応えるため、設計者にトレーニングを行うのは取り組みがいのある仕事です。これからの設計者は電子工学の予備知識を持っている必要があると、私たちは感じています。

 

Warner: Scottさん、貴重な見識や専門知識をお聞かせいただき、ありがとうございました。


Miller: こちらこそ、ありがとうございました。

 

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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