私はずっとクリント・イーストウッドの大ファンです。20世紀の都会にいた私としては、ダーティーハリーが銃を少々使いすぎだという印象がありましたが、名無しの男のほうは手に負えない無骨さが時代にぴったりとマッチしていました。言うまでもなく、私は彼がごろつきを打倒したり、やくざ者よりも先に銃を抜いたり、女性を射止めたりするのをいつだって応援していましたが、最も興味をそそられたのは、彼が何でもあっという間に決断を下すことでした。もちろん、結果はそのときどきで違います。良いときもあれば悪いときもあります。それどころか、かなり悲惨なときもあります。
PCBの設計でも、多層PCBを選択するかどうかによって結果が変わります。多層PCBを無用に使用する設計者は大勢いますが、それによって設計が複雑になったり、製造コストが上がったり、現場での修正や修復が実質的に不可能になったりします。
名無しの男が登場する大半の映画の筋書は、善人に対する悪人のむごい仕打ちや卑劣な行為から始まり、ヒーローが悪を正してエンディングを迎えます。この筋書きに沿って、PCBの設計と開発を失敗させ得る要因と、多層PCBを使用するかどうかの決断に組み入れるべき要素について見ていきましょう。
PCB設計の観点から見ると、多層PCBはつい使いたくなってしまうものです。結局ところ、「小さければ小さいほうがよい」という考え方は現在の電子設計全体に広がっているようです。ただし、小さいことが設計の主な検討事項でない限り、その罠を避けるべき大きな理由があります。その例をご紹介しましょう。
見落とされてしまうことがあるもう1つの問題は、レイヤーの増加による熱の上昇です。これは、製品を現場でしばらく稼働させないと表面化しません。製品が機能停止にいたるほど問題が深刻な場合は、Recall(リコール)、Redesign(再設計)、Remanufacture(再製造)の「3R」になってしまいます。これは悲惨な事態です。
おわかりのように正しい選択をしない限り、多層PCBは重大な問題を引き起こす原因になります。ただし、長所もあります。選択と設計のプロセスについて慎重に検討すれば、クリント・イーストウッドのようにさっそうと夕陽の中へ去って行けるでしょう。
望ましいエンディングに到達するためにPCBの設計について考慮する
設計と製造に余計な時間をかけ、高くなったコストを支払い、厳格なガイドラインに従うつもりがあるのなら、多層PCBを選択してもかまいません。特にサイズが主な検討事項の場合はそうすべきでしょう。では、サイズが検討の対象でない場合、多層PCBの選択を正当化する理由にはどのようなものがあるでしょうか。
多層PCBでは、コストが上って製造期間が長くなります。また、設計と製造に関する高度な専門知識も要求されます。そのため、多層PCBが正しい選択かどうかについて、前もって慎重に検討しなければなりません。決断にあたっては、「小さいこと」という多数派意見に流されてはいけません。その結末は、まずい事態または悲惨な事態のどちらかになるでしょう。望ましい結果を出すためには、利点と欠点をじっくりと比較し、正しい判断に基づいて選択を行う必要があります。
欠点: PCBの設計には、シングルレイヤーのレイアウトのほうが適しているものがあります。その良い例はコンピューターのマザーボードでしょう。通常、こうした基板には多くのポートやさまざまなサイズがあり、言うまでもなく取り外し可能な部品も使用できます。これは多層設計の選択を不可能にするものではありませんが、サイズの縮小というメリットが複雑性やコストの上昇といった欠点をしのぐわけではないために非現実的と言えます。
利点: 多層PCB設計を選択する最も一般的な理由は、基板のフットプリントを削減できることです。入力や出力の数、シングルIC(MPUやFPGAなど)に対するファンアウトの要件、または類似するトレース長の制限によって設計の柔軟性が阻害される場合は、多層PCBを選択したほうがよいでしょう。これは、製品で柔軟な回路を使用できる場合に特にあてはまります。これによって、製造プロセスでの正確性の確保が大幅に容易になり、設計者はもっと自由に作業を進められるようになります。
すべての設計に同じPCBを使うことに満足するのではなく、最もうまく機能するものを選択する
Altium Designerの使いやすく効率的なソフトウェアを活用すると、単層、2層、多層を問わず、PCBを最も効果的かつ正確に設計できるようになります。
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