今年初め、私はSan Diego Altiumユーザーグループで、非常に魅力的な設計者に会う機会がありました。Dave Starkey氏は、自身がパートナーとともに設計し製作した、PianoArcという円形のピアノについて語ってくれました。このインタビューでは、Starkey氏の経歴に加えて、中東のとある宮殿に飾られており、またLady Gagaのキーボード奏者であり、このPianoArcを考案したBrockett Parsons氏によって世界各地で演奏されている、この独創的な楽器を、どのようにして彼が共同制作するに至ったのかを紹介しましょう。
Dave Starkey氏とBrokett Parsons氏のAbu Dhabi訪問
Judy Warner: Dave、あなたの技術者としてのキャリアと、どのような経緯でPianoArcの設計と開発を行うことになったかを話してください。
Dave Starkey: 私は高校で、プロの音楽家になるか、それが無理なら楽器を作る仕事に就こうと決めました。音楽家になることが無理なのは、あまりにも明らかでした。そこで、私はPurdueでBSEEを取得するため学業に勤しむかたわらで、電子楽器を可能にしたテクノロジーに注目しました。その後、多くの年月をさまざまな音楽関係の製品の設計に費やし、16の特許を取得して、自分のエンジニアリング会社をナショナル・セミコンダクターに売却しました。ナショナルを離れた後で、私はアコースティックピアノでMIDIを生成するシステムを開発しました。私は、大学の音楽教育研究室の開発および設置の仕事を行っていたChuck Johnsonと親しくなりました。ChuckとBrockett Parsonsは大学で一緒にジャズバンドを組んでいました。Chuckはキーボード、Brockettはトランペットのパートでした。Brockettはその後スタジオのキーボードプレイヤーとなり、リアリティTVで賞を獲得し、その後Lady Gagaのバンドに加わりました。Brockettは、ピアノを視覚的な表現にするという構想を抱いていました。これは、Gagaの派手なステージにおいて彼がほとんど目立たなかったためです。
Dave StarkeyによるPianoArcのテスト
このとき、BrockettはChuckを呼び出しました。Chuckは私に連絡して、私のシステムを円形のキーボードに組み入れることが可能かとたずねました。私はこのような課題に取り組むのが大好きなので、一緒にこの問題に挑戦することにしました。私はAltium Designerを使用して、既存のPCBのいくつかを再設計し、既存のキースキャンシステムを再構成しました。最初の製品は約3か月後に完成しましたが、重さが900ポンド(約408kg)もありました。この最初の製品はまったく量産できるものではなく、再現すら不可能でした。
Brockett Parsons氏とLady Gaga
Warner: Pianoarcのどのような機能が、音楽家たちの注目を集めたとお考えですか?
Starkey: まず、ステージで非常に目を引いたことでしょう。しかしそれだけではなく、色分けされた288ものキーにより完全な音のパレットを連続したプレーンにマップすることが可能です。例えば、Brockettはよく正面のピアノを演奏し、右側には大音量のシンセサウンドが、左側にはストリングが、後ろにはドラムキット一式が並びます。キーの連続的な位置検出により、このキーボードは市場のどんなキーボードよりも速くリピート演奏が可能です。ここが注目を集める部分でしょう。確かにこの製品は斬新なものですが、それだけでなく市場で最高のキーボードコントローラーです。
カスタマイズされたPianoArc用のピアノキー
Warner: PianoArcを開発する上でのエンジニアリングの課題は何でしたか?
Starkey: たくさんありますが、挙げてみましょう。
高価な工作機械を使用せずに製造できるように設計する。
キーを製造するために適した材料を見つける。スペースにうまく収まり、仕上がるようにするために、8回は作り直しました。
輸送可能なよう軽量化する。最初の製品は900ポンドありましたが、新しい製品は出荷用ケースに収納しても300ポンドです。
モジュールごとに製作し、組み立てや撤収を数分で行えるようにする。
一般的な運送車で輸送可能にする。できれば航空機にも持ち込めるようにする。
試作の資金を調達して製作する。
回路基板がキーの機械的な同期システムの一部になるところまで設計を進める。
コストを下げる方法を見つける。
ネオンライトで照らされたPianoArc
今日の世界では、キーボードは高価な工作機械を使用して大量生産されます。私たちのエンジニアリング予算は乏しく、工具用プラスチック部品はあまりに高価です。300のキーを3Dプリントするのは極めて高価で、音楽家が希望する価格にはとても収まりません。そこで、私たちは開発のあらゆる段階で熱心に私たちを支援してくれる、非常に協力的な機械工場を見つけました。多くの種類の材料とプロセスを試した結果、ようやく現在のキーに辿り着きました。要するに、この製品の設計は非常に大変でした。
設計フェーズで使用された基板とキー
Warner: それでは、内部でどのようなPCBが使用されているのですか?
Starkey: 現在の設計は5つのPCB設計にまとめられており、合計34のPCBアセンブリで、全周囲360度にわたる、288音階のシステムを構成しています。これらのPCBのうち13は4層で、他のPCBは2層です。ラックマウントのコントロールボックスにも4層PCBが使用されています。これらの基板には、合計18のKinetisマイクロプロセッサが搭載されており、それぞれにUSBポートが付属しています。円内のすべてのプロセッサはコントロールボックスと通信を行い、コントロールボックスがすべての情報を集約して変換します。そのデータは、USBや、従来型のMIDIを使用して、コンピューターやシンセサイザーに送られます。
展示会に参加したPianoArcチーム
Warner: 市場の観点から、PianoArcはどのような層にアピールしましたか?
Starkey: 製品を市場に合わせるのは難しい課題です。多くの人たちにとって、私たちの提示した価格は法外なものでした。それでも、ピアノやキーボードの熱心なファンで、注目を集めることを望んでおり、自分の演奏機材を刷新するために多額を投じられる人たち、たとえばトップスターや、スタジアムを満員にするような大物スターなど、一般に傑出した人々が存在します。
円形に収まるよう機械加工およびカスタマイズされたピアノキー
Warner: Dave、PianoArcの開発についての話を聞かせていただきありがとうございました。また、San DiegoのAltiumLiveでPianoArcを展示し、Brockettによる演奏まで手配してくださったことには、大いに感謝しております。私たちは、PianoArcを目にし、Brockettによる演奏を聴くことに大きな期待を寄せています。
Starkey: ありがとうございます、Judy。私たちも、AltiumLiveのコミュニティにPianoArcを紹介できることに期待しております。