オーストラリアの学生が設計したソーラーカー

Judy Warner
|  投稿日 2018/03/19, 月曜日  |  更新日 2020/12/11, 金曜日

student designed solar car

 

Judy Warner:

チームがどのようにして活動を開始したのか、これまでに何台の車を製作したのか、教えてください。またVioletについて簡単に説明してください。

 

Kristian Bojidarov:

Sunswiftは、ニューサウスウェールズ大学の学部生で構成されたチームです。世界で最も進んだソーラーカーを設計、製作して、レースに参加しています。私たちのチームは、1995年のSunswift結成以降に習得してきた知識により、先日チームの6台目のソーラーカーであるVioletの製作を完了しました。

 

初めは、Sunswiftが開発する車は最高レベルの効率と性能を目指して設計されていました。この目標は、90年代後半から2013年まで続きました。この頃の車両は、最大2人乗りの極めて広い座席配列で、World Solar Challengeのチャレンジャークラスに参戦しました。これ以降、Sunswiftは5台目および6台目の車として、eVeとVioletを開発しました。

 

Violetの設計は、チームのそれ以前の車両と比較してより実用性に重点を置いたことに加え、快適さと美観のレベル向上も目指しました。これは、空気力学的に合理化された設計、フロントとリアのブートスペース、リバースカメラ、駐車センサー、GPSとのインタラクティブな表示画面、エアコン、そしてチームにとっては初めての4人乗りなどの点をより重視することで達成されました。これによって、Violetは、現在の公道仕様の車両と同じ規模で製作され、その結果チームは、一般に向けてソーラーカーのビジネスチャンスを示すことができました。

 

Warner:

現在重点を置いていること、および今年のWorld Solar Challenge競技会の目標を教えてください。

 

Bojidarov:

残念ながら、今年はWorld Solar Challengeは開催されません。次回は2019年です。とは言うものの、Sunswiftは、次回の開催までにできる限り準備を進めています。そのときにはVioletは2歳になっており、チームはVioletの技術的な性能と限界を非常によく理解していることでしょう。今後2年間で、Sunswiftチームは継続的なテストに加え、必要に応じてVioletを改良していきます。私たちは、より持続可能な未来を切り開く一方、他の全てのチームと同様に、大会のできるだけ多くの車両検査部門で1位になることを目指しています。

 

Warner:

現在、Sunswiftのチームメンバーは何人いますか? そのうち何人が電気担当チームに所属していますか?

 

Students with solar car

UNSW Sunswiftソーラーカーチームと「Violet」

 

Bojidarov:

Sunswiftは現在、40人の学生がメンバーとして参加しています。電気担当チームには10人の学生が所属し、ソーラーカーの電気系統の設計、製作、テストを行っています。私たちの電気担当チームは、電気技術者だけで構成されているのではありません。科学の学位を目指している学生に加え、メカトロニクス、ソフトウェア、太陽光発電と再生可能エネルギーの技術者が混成したチームです。電気担当チームの学生たちに幅広いバックグラウンドがあることで、チームはさまざまな視点から課題にアプローチできます。

 

Warner:

電気チームが直面した最大の課題は何ですか? またその課題をどのように克服したのですか?

 

Bojidarov:

私たちの最大の課題の1つは、ソーラーカー内のデータ通信システム、CAN(Controller Area Network)バスの設計です。私たちはCANバスを使って、車両に搭載されたタブレットから車両の周辺機器(インジケーター、ヘッドラインなど)にいたるまで、あらゆる駆動装置を制御します。私たちのCANバスは、CANコントローラーとしてLPCマイクロコントローラーを、CANバスとコントローラーの間の送受信のためのシリアルインターフェースおよびCANトランシーバーとしてUSB UART ICを使用しています。

 

5台目のソーラーカーのeVeは、中央基板から車両の電気系統全体を制御する、集中CANバスを使用しています。これは、車両の信頼性がこの中央基板に依存している点で問題です。この課題を克服するため、最も新しい6台目のソーラーカーVioletでは、全てのCANベースを分散化し、駆動装置別のネットワークに分離させました。これによってフェイルセーフの機能が提供され、不具合がある場合でもネットワーク運用のほとんどの部分を維持できます。

 

Warner:

技術者がSunswiftチームに参加すると就職の準備になるというのはどうしてだと思いますか?

 

Bojidarov:

多数の短期的目標や長期的目標を達成するために異なるチームが協力する必要のあるSunswiftの協働環境は、私たちチームメンバー全員にとってとても有効です。Sunswiftで作業していると、作業上のグローバルな慣例が数多く適用されるので、大学から職場の環境への移行がはるかにスムーズになります。更に、チームメンバーは、他のサブチームの作業について学んでいるので、他のサブチームからよく手伝いを要請されます。これにより、Sunswiftのメンバーにはより幅広い知識ベースが備わり、学生たちは、さまざまな視点からアイディア、設計、コンセプトを眺めることができるようになります。私たちのチームの技術者は、業務や運営の慣習の適用に非常に長けています。逆に、業務チームのメンバーはエンジニアリング/設計について多くを学んでおり、プロジェクトを評価する際、数字や統計情報の裏の部分を読み取ることができます。これに加えて、学生達がSunswiftで過ごす間に身についた情熱や知識が仕事場に反映され、多くの卒業生のめざましい働きにつながっています。学生達は、他の人と異なる考え方をし、画期的な解決方法を提案することができます。これは、多くの企業やビジネス、特に競争力やスピードが求められる今日の社会では、非常に重要なことです。

 

solar car

ブリヂストンワールドソーラーチャレンジのViolet

 

Warner:

次の大会はいつですか? 読者はチームと大会について、ネットでどのようにフォローできますか?

 

Bojidarov:

Sunswiftは、2019年に再び参戦する予定です。これはまだ確定ではありませんので、Sunswiftは具体的なことを発表できません。ただし、Sunswiftが参加する全ての大会の最新情報は、Facebook(@UNSW Solar Racing Team)、Twitter(@sunswift)、およびInstagram(@unswsunswift)でフォローできます。また、各大会は通常Webサイトを公開しますので、大会が始まると、私たちのソーシャルメディアでそのリンクが共有されます。今後のエキサイティングな2年間を楽しみにしています。

 

Warner:

Kristianさん、Sunswiftの優れた実績についてお話をうかがうことができて、本当に楽しかったです。Sunswiftチームの皆様によろしくお伝えください。Sunswiftチームを後援することは、Altiumの誇りです。更なる進歩を楽しみにしています。

 

Bojidarov:

光栄です。Altiumからの継続的なサポートには非常に感謝しています。

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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