PCB設計コースが工学カリキュラムに不可欠な理由

Zachariah Peterson
|  投稿日 三月 15, 2022  |  更新日 七月 1, 2024
PCB設計コース

半導体を人体の器官に例えると、プリント基板(PCB)は電子機器の構造を作る骨格や血管に似ています。私たちが今日理解しているような現代の電子工学はPCBなしでは実現できず、PCBは当分の間、電子部品のパッケージングとして使用され続けるでしょう。スマートフォンから家電製品に至るまで、電子機器のPCBが精密に設計され、慎重に製造されなければ製品は正しく動作しません。

今日、ほとんどすべての電子製品にPCBが使われているにもかかわらず、大学ではプリント基板の設計と製造に重点を置いた教育プログラムがほとんどないことに驚かれることでしょう。当然のことながら、半導体業界は、ムーアの法則に追いつくための取り組みに伴う膨大な技術的課題により、大きな注目を集めました。そのため、PCBはコンピューターチップを接続する方法としては大げさすぎると見なされることがあります。

現実には、プリント基板が正しく設計、製造されなければ、私たちが楽しんだり信頼したりしている電子機器はどれも適切に動作しません。プリント基板の設計と製造には、電子工学以外の工学分野も活用されます。PCB設計コースを受講すれば、学生は設計と製造の両方の側面に取り組んで、最終的には社会に出たときにいっそう価値ある人材になることができます。

工学コースにPCB設計を含める理由

PCB設計は電気工学と電子工学の基本概念の多くを組み合わせたもので、物理的な製品設計に重点を置いています。製造可能なPCBを作成することは、電気工学の基本概念に基づくルールに従って複雑なパズルを解くようなものです。すべてのプロジェクトに複数の技術的課題を伴う、楽しくてやりがいのある仕事です。

PCB設計は楽しいだけでなく、エレクトロニクス産業では重要な役割も果たしています。しかし、過去数十年にわたって過小評価されてきました。その結果、現在働く人材の退職に伴い、有能なPCB設計者の需要は今後数十年で増加すると予想されます。PCB設計コースは、学生がハードウェアエンジニアリングをキャリアとして追求する場合に有利なスタートを用意してくれます。正規の電気工学カリキュラムの一部としてPCB設計コースがあると、学生は重要なメリットを得られます。

業界の設計プロセスとソフトウェアを知る

PCB設計はどの工学分野よりも、製品概念から完全に製造可能な設計へと設計チームを導く具体的な工学ワークフローに忠実に従います。PCB設計コースでは、学生はエレクトロニクス業界全体で導入されている標準化されたワークフローを学びます。このワークフローはPCB設計ソフトウェアで実行され、学生は実際のプロジェクトがプロフェッショナルな環境でどのように完了するかを確認する機会が得られます。通常であればインターンシップに参加しないと得られない貴重な体験です。

複数の工学分野を組み合わせたPCB設計

PCB設計の中核となるのは、電気工学に関する強固な基盤であり、1つの設計に取り組む際には大抵、デジタル、アナログ、電力、マイクロ波エレクトロニクスの各概念を利用する必要があります。どのようなプロジェクトでも、設計者は複数のエンジニアリング分野の概念を活用して、回路図、物理的なレイアウト、そして最終的には完全に製造可能な設計を完成させる必要があります。これには以下が含まれます。

  • 基本的な回路設計
  • SPICEから全波3Dフィールドソルバーまでのシミュレーションと解析
  • 多くの場合、機械的な制約に縛られた物理的レイアウト
  • 電磁気学の概念、特に波動の伝播と放射に関する概念

単一のPCBプロジェクトに非常に多くの工学分野の概念を利用できることを考えると、PCB設計はこれらの分野を実用的な意味で集約できることを示す絶好の機会です。学位の取得後、最終的にPCB業界で働くことにはならなかったとしても、社会に出たときに遭遇する、共同の学際的なタイプの工学プロジェクトに関わる機会が得られます。

製造業を知る

結局のところ、ハードウェアエンジニアリングとは、大量生産できる設計を作成することです。PCB設計では、製造プロセスによる制約を考慮しながら物理的レイアウトを作成する、製造性考慮設計(DFM: Design for Manufacturing)に重点を置いていますPCB設計は、DFM戦略への良い入門となり、製造上の制約が課されるプロジェクトに取り組む際の思考プロセスの開発に役立ちます。DFMを理解している学生は就職後、大量生産できる製品によりスムーズに取り組むことができます。

PCB設計コース
PCB製造プロセスを理解し、管理できる電子工学エンジニアは引く手あまた

それに、PCB製造プロセスに触れることで、PCB製造分野の仕事に学生が興味を持つかもしれません。オンショアに新たに注目が集まり、高度な製造技術に新たな投資が行われている今、学生はこの分野で楽しく興味深い工学の挑戦を見出すことでしょう。PCB設計コースは、学生が製造業をキャリアとして追求する場合に有利な成功への道を整えてくれます。
本格的な製造に着手する前に、機能の試作品の製作や概念実証の構築を通じて、フロントエンドの設計と工学プロセスについて優れた入門知識を得ることができます。学生のスキルと知識を向上させるための次のステップは、第1ラウンドの機能の試作品と一致するカスタム回路基板の設計と製造です。ペンシルバニア大学工学・応用科学部ESEラボ・プログラム・ディレクターのSiddharth Deliwala氏はこう言います。
「試作品製作のスキルを理解することは、ECEの学生がRFや高速デジタル設計の優れた設計者になるために必要なステップです。Altium Educationは、学生が高度な工学の授業の前に受講するPCB設計の完璧な入門になります」

PCB設計者は引く手あまた

おそらく最も重要なことは、労働力不足により、PCB設計者の需要が今後数十年間で非常に高まると予測されることです。現在でも、北米のPCB設計者の大多数が退職年齢に近づいており、労働力の危機が迫っています。Printed Circuit Design& Fab(PCD&F)誌に掲載された最近の調査結果によると、北米のPCB設計者の労働力不足は悪化の一途をたどっています。その調査では、次のことがわかりました。

  • 設計者のの61%が50 歳以上であると回答しているが、35歳未満は23%のみ
  • 55%の設計者が今後10年以内に退職予定
  • そのうち、25%以上が今後5年以内に退職
  • 設計者の78%が、加齢のため今後15年以内に現場での仕事を辞めると回答

Altium Educationについて

エレクトロニクス産業と学術界には、次世代の設計エンジニアの育成を開始する機会と責任があります。前例がないほど労働力が不足し、オンラインで質の高い教育リソースを見つけるのが難しいため、Altiumは高校、コミュニティカレッジ、大学に向けて無料教育プログラムの作成に着手しました。

Altium Educationプログラムでは、業界をリードするPCB設計の教育コンテンツを講師と学生が独自のカリキュラムまたは自主学習に組み込むことができます。カリキュラムはモジュール形式で学習できるように設計されています。講師は、個々のモジュールを既存の工学コースに組み込んだり、コース全体をそのまま使ったりすることができます。PCB設計に興味のある学生は、これらのコースを個々に受講することもできます。何よりも、これらのコースは無料で受講できます。学生は、教育機関が提供する有効な電子メールアドレスを持っていれば、Altium Designerの教育用ライセンスをリクエストして、コースの設計例に取り組むことができます。

大学生向けのAltium Educationカリキュラムについて詳しく知りたい場合は、早速コースアクセスに登録してください。無料でサインアップして、教育リソースを見つけることができます。これらのリソースが、PCB設計のトピックを電気工学の授業に取り入れるきっかけになることを願っています。

筆者について

筆者について

Zachariah Petersonは、学界と産業界に広範な技術的経歴を持っています。PCB業界で働く前は、ポートランド州立大学で教鞭をとっていました。化学吸着ガスセンサーの研究で物理学修士号、ランダムレーザー理論と安定性に関する研究で応用物理学博士号を取得しました。科学研究の経歴は、ナノ粒子レーザー、電子および光電子半導体デバイス、環境システム、財務分析など多岐に渡っています。彼の研究成果は、いくつかの論文審査のある専門誌や会議議事録に掲載されています。また、さまざまな企業を対象に、PCB設計に関する技術系ブログ記事を何百も書いています。Zachariahは、PCB業界の他の企業と協力し、設計、および研究サービスを提供しています。IEEE Photonics Society、およびアメリカ物理学会の会員でもあります。

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