電子機器の精密化に伴い、多層基板がよく使われるようになりました。多層基板は表面と裏面だけでなく、その間にも内層とよばれる配線層を持つ基板です。基板設計CADのAltium Designerでは最大48層の多層基板が設計できますが、ここではまず4層基板を取り上げて、その設計方法の要点をまとめました。
多層基板は、配線密度を上げたい場合や電源配線を強化したい場合などに利用されます。電源とグランドの配線を内層で行うと、配線密度の向上と電源配線のインピーダンスの低減を同時に実現できます。
内層で電源やグランドの配線を行う場合、ポジ設計とネガ設計のいずれかを選択できます。ポジ設計では配線パターンなどのオブジェクトを実際の銅箔イメ―ジのとおりに配置しますが、ネガ設計では逆に、銅箔の無い(不要な)ところにオブジェクトを配置します。
このネガ設計は、実際の配線とは逆のイメージで編集作業を行わなくてはなりませんので、大変わかりにくく、配線には手間がかかります。しかし、ネガ設計を用いる事によってデザインデータの肥大化を避け、CADツールのレスポンスを良好に保つ事ができます。
プリント基板では、層数を増やせば増やすほど配線密度が上がりますが、コストも上がりますので、層数はできるだけ抑えなくてはなりません。もし、両面(2層)基板で配線スペースが不足するような場合には、層を追加して電源とグランドを内層で配線します。通常、このような場合には、[Plane]レイヤを用いてネガで設計します。この[Plane]レイヤは、パワープレーンとも呼ばれます。
Altium Desugnerでは、[レイヤ構成マネージャ]で層構成を管理します。デフォルトは、両面(2層)になっています。この[レイヤ構成マネージャ]では 配線に使う [Plane] レイヤや [Signal] レイヤだけなく、基板を構成する全ての層の追加と削除、および属性の編集が可能です。
パワープレーンは、ネガイメージで表示されます。オブジェクトが配置されていなければ全面が銅箔で満たされた状態であり、配置されている部品の端子部分は内層パッドによって銅箔が抜き取られています。
パワープレーンの配線は、この銅箔エリアにネット名を割付ける事によって行います。この銅箔とネット名が一致する端子にはサーマルランドが発生し、銅箔と接続されます。
なお、このパワープレーンのネット名の割付けは、プレーン面のダブルクリックで表示される [スプリットプレーン] ダイアログボックスによって行います。
複数の電源やグランドが存在する場合には、パワープレーンを分割する事により、それらの全てを配線する事もできます。
パワープレーンは、[Line] オブジェクトで基板外形を分断する事によって、2つに分割する事ができ、分割されたエリアをさらに分割する事もできます。また、[Line] や [Arc] で作成した「閉じたエリア」でさらに分割する事もできます。
分割された各エリアをダブルクリックする事によって、ネット名を割付けるる事ができます。ネット名が割付けられると、そのエリア内にある同一ネットのパッドにサーマルランドが発生して内層と繋がります。さらに、デザインルールでそのサーマルランドの形状を規定する事ができます。
パワープレーンの分割はけっこう手間取る作業ですが、自動作成したガードリングを使って簡単に作成する事もできます。これは、裏技的な手法ですが、大変便利ですのでその手順を紹介します。
まず、パワープレーンで配線したい部分をシクナルレイヤで配線します。そして、[セレクト オブジェクトをガードリング] コマンドを使って、その部分のガードリングを作成し、それをパワープレーンに移動します。
パワープレーンに現れたガードリングは、すでにその形状どおりにパワープレーンを分割しています。しかし、クリアランスルールに沿って線幅を変更しなくてはなりません。そして、それが終われば、分割されたエリアをダブルクリックしてネット名を割付けます。
ガードリングを使うと、このように簡単にプレーンを分割する事ができます。
内層での配線の数が多い場合には、内層をポジで設計したほうが能率的です。この場合、追加する層のレイヤタイプは表面層と同じ[Signal]であり、慣れ親しんだ方法で編集できます。ただし、導体間のクリアランスは、表面層よりも広く取らなくてはなりません。
また、ポジ設計ではデザインデータが肥大化しがちです。しかし、規模の小さな基板では大きな問題にはなりませんので、このポジ設計を優先的に選択しても良いでしょう。
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