私は、自分が最初に設計した回路が認定に失敗したことを今でも覚えています。それは証明済みの設計で、既に以前の認定に合格していたものなので、テストが失敗したことをマネージャーから聞かされたときには非常に驚きました。「火がついた」と噂が広まりました。電子回路が実際に発火することは稀です。ほとんどの場合は、多少煙が出るだけです。どちらにしても、PCB上の焼け焦げが事実を物語っていました。トランジスタが過熱し、暴走して発煙したのです。しかし、なぜそのような結果になったのでしょうか? それは証明済みの設計でした。何が変わったのでしょうか?
簡単な調査の結果、回路は同じであることが証明されました。同じコンポーネントで、同じ入出力で、ロットや製造業者さえも同じでした。1つだけ変化したのはレイアウトでした。私がこの基板をレイアウトしたとき、機械的アセンブリの部品の周囲に収まるよう、フォームファクターを調整する必要がありました。パワートランジスタの周囲の銅箔は、元々は約1平方インチでした。この設計では、その1/3に切り詰められました。面積の制約のため、電力を生成する他のコンポーネントは、PCB上で理想よりも近くに配置されました。この両方の要因から、狭い面積の銅箔では放散できない大量の熱が発生し、トランジスタが早期に破壊されることになりました。
知識の移行はほとんどの場合、現場において最大のボトルネックで、多くの時間を必要とします。理想的には、全ての設計者が元の設計を構築するときにきちんとノートを作成し、思考プロセスを保存するべきです。しかし、a) 面倒である、b) ノートが消失することから、実際にはほとんどの場合これは行われません。問題なのは、机上では実証済みの設計を再利用するのが効率的ですが、ノートが十分に作成されなかった、または知識の移行が不完全であったために、重要な設計パラメーターの多くが忘れ去られている場合、設計パラメーターを推量してチェックするために時間を浪費するということです。いくつかのデザインルールを組み込むと、小さな変更により設計が不良になることを回避し、チームの設計時間を節約できます。これを最初からうまく行うには、次のような方法を使用します。
私は、意味のあるルールを好みます。このため、管理を行うデザインルールを割り当てる前に、消費電力についての制約を定義することが重要です。このための最良の方法は、データシートを作成することです。適切に作成されたデータシートには一般に、電力定格についてベストからワーストまで、最低でも3つの区分の条件が含まれます。
計算に使用する消費電力の値は、一般的な値とベストケースとの間での主観的な判定となります。
どれだけの電力を消費する必要があるかが判明したら、ルールを作成します。これによって、その設計を誰かが使用するとき、元のデータシートをチェックする必要もなくなります。ただしこれは、注意を払う必要がなく、データシートの文書化がいい加減でもいいという意味ではなく、バックアップや、設計をさらに明確化するために使用するということです。今日の設計ソフトウェアにはコンポーネントライブラリが付属し、コンポーネント評価の時間を節約できると同時に、ユーザーが特定のコンポーネントにルールを添付できます。レイアウトに十分なヒートシンクが使用されていない場合、まだ仮想の設計であるうちに「デバッグ」する方が、実際に火を吹いてからやり直すよりもはるかに楽です。
デザインルールの組み込みは、コンポーネントの消費電力についての知識を移行するための明確なソリューションですが、それ以外にも留意しておくべきいくつかのトリックがあります。
スティッチングビアの使用 – スティッチングビアは、PCBの反対側へ熱を伝達します。多くの場合、基板の片側にコンポーネントが密集しすぎているなら、スティッチングビアを使用して基板の反対側へ非常に効果的に熱を伝導し、そちら側に十分な面積があればヒートシンクを使用できます。
外部の熱源 – 外部の熱源からPCBに熱が伝導される可能性を考慮します。回路が、それ自体では正常に動作しても、その同じ回路が金属の表面にボルトで固定され、別の熱源から熱を受ける場合には、発火する恐れもあります。車のダッシュボードでの直射日光による加熱でさえも、余裕のない設計には損害を与える可能性があります。予想もしない行為が損害を及ぼすのは一般的なことです。
PCBをレイアウトするときにこれらの状況を考慮することで、設計の細かい調整を今の時点で行い、将来予期しない修正が必要になることを予防できます。ノートを作成するのは常に必要ですが、それらのノートがチーム内で共有される方法によっては、ノートが消失することもあります。デザインにルールを組み込むことで、関連情報が必要な場所、すなわち設計の中に常に含めることができます。Altium Designerのデザインルール機能を使用することで、全ての設計者が「周囲の状況を見回し」て、再設計が必要になるような落とし穴を回避できるようになります。