馬の家畜化、車輪の発明、燃焼機関の開発は、人間がより効率的にあちらこちらに移動したり新しい場所を探検したりできるようなるという点で称賛できる、非常に画期的なできごとです。慣れた環境から見知らぬ場所に出ていくための自信を多くの人に与えるという点で、少なくとも同じくらいの称賛に値するもう1つの発明があります。それは地図です。自分より前に誰かが道を通ったということがわかっていると、目的地にたどり着く自信が持てます。
PCB設計は、試行錯誤で埋め尽くされる可能性のある創造的なプロセスです。このプロセスからエラーを取り除くことは実質的に不可能ですが、プロジェクトテンプレートを使用することで最小限に抑えることはできます。最も基本的なところでは、プロジェクトテンプレートは実際上、以前に設計された回路の「地図」です。自信を持って、これを新しい設計のベースとして使用することができます。Altium Designer 18ではこの基本概念が拡張されていますが、PCB設計でプロジェクトテンプレートを使用する多くのメリットに注目する前に、プロジェクトテンプレートをさらに詳しく定義し、作成方法を確認しましょう。
プロジェクトテンプレートは単に、以前に作成された設計で、似たようなPCB、PCBモジュール、個々のコンポーネントの設計に必要とされる作業を減らすために使用されます。PCBレイアウトを通して、基板を作成することが必ずしも骨の折れる生成プロセスである必要はありません。既に回路基板が作成されている場合、作業はもっと楽になるかもしれません。テンプレートをそのまま使用することも、設計の特定要件に合致するようテンプレートを変更することもできます。マルチチャンネルデザインでの回路の再利用と同様です。
マルチチャンネルデザインの場合と同じく、プロジェクトテンプレートは、効果的に活用できるよう、技術者、PCB設計者、チームや組織の他のメンバーが簡単にアクセスできる必要があります。回路構成、フットプリント、テンプレートのいずれで構成するにしても、以前に使用した基板設計のデータベースを用意すれば、チーム全体のプロセスを迅速化できます。
ただし、Altium Designerが提供するソフトウェアは、通常プロジェクトテンプレートが置かれるAltium Vaultのような管理サーバーの任意の場所にテンプレートを格納できる柔軟性を備えています。サーバーを使用することで、一元化されたファイル格納場所だけでなく、適切に構成された管理アーキテクチャーも提供されます。これは、セキュリティおよびアクセスレベルの特定性の維持のために重要です。
優れたPCB設計ソフトウェアにより、頼れる基板およびプロジェクトテンプレートのディレクトリにアクセスできます。以下の図1は、Altium Vaultに格納されているプロジェクトテンプレートのディレクトリ構成の例です。
図1 プロジェクトテンプレートのディレクトリ構成
上図のように、プロジェクトテンプレートは、個々のコンポーネント、シート(モジュール、回路図、PCB)、または設計全体(全てのコンポーネント、回路図、およびPCB)として分類し、格納できます。プロジェクトテンプレートは通常、履歴、リビジョン、コード、その他のドキュメントなどの関連ファイルとともに格納されます。したがって、情報およびデータは全て、テンプレートにアクセスすることで1か所から表示/ダウンロードできます。
1回のみ使用するデザインとプロジェクトテンプレートの違いは、設計ファイルの格納場所と格納方法にあります。PCBを設計する場合、通常は、プロジェクトディレクトリの下に全ファイルを格納し、1か所から全てのプロジェクトファイルに簡単にアクセスできるようにします。コンポーネントやシートを検索するには、設計ファイルがどのプロジェクトに存在しているかを知っておく必要があります。回路基板のニーズの変化により、この方法による設計の再利用がすぐに続けられなくなることは明らかです。
したがって、再利用したい設計を検索する、より単純でアクセスが簡単な手段が必要です。Altium Designerでは、プロジェクトテンプレートはテンプレートディレクトリ構成に格納されます。実際のファイルは、具体的なプロジェクトディレクトリ名を思い出さなくても、ここから簡単に表示し、アクセスできます。プロジェクトテンプレートの作成と格納場所への追加は、3つのステップで完了できます。
ステップ1: テンプレートを格納するフォルダーを作成または選択する
単一コンポーネントのプロジェクトテンプレートを作る場合も、大規模設計の単一シートを作成する場合も、設計全体を作る場合も、最初の作業はフォルダの作成です。フォルダを作成したいディレクトリ内で右クリックします。フォルダータイプの定義は、分類先とアクセスを決定するので重要です。図2のように、必要に応じて命名規則を作成または定義し、フォルダープロパティを設定してください。
図2 プロジェクトテンプレートフォルダの作成
ステップ2: コンポーネント、シート、または設計テンプレートを作成する
プロジェクトテンプレートフォルダを設定できたら、次は設計自体を作成し、フォルダに必要なファイルを格納します。設計ファイルのコンテンツタイプがプロジェクトテンプレートであることを確認します。これで、プロジェクトテンプレートの一覧にアクセスしたときにファイルが追加されています。
ステップ3: リリースステータスの設定
他のメンバーが自分のプロジェクトテンプレートにアクセスできるようにするため、[Revision State] を [Released] に設定する必要があります。これは、図3の緑のブロックの横に表示されています。
図3 リリースステータス例
以前の設計を簡単に再利用して変更できることで、設計者と設計者の所属する組織のPCBの設計および開発の生産性を顕著に向上させることができます。全ての設計を最初から作成する必要がないと、結果として多くの工数と費用を節約できます。Altium Designerのプロジェクトテンプレートを使用することでワークフローが得られるメリットは、この機能を作業にどの程度取り込むことができるかによって決まりますが、以下に注目すべきメリットをいくつか挙げておきます。
地図同様、より効率的な旅ができます。あらためてベストな配線を発見する必要がないので、プロジェクトテンプレートを使ってより効率的で信頼性の高い設計が可能になり、部品調達、ネットの配置、コーディングなどをせずに済みます。Altium Designerにより、PCB設計でプロジェクトテンプレートを使用するメリットを完全に生かすことができます。基板設計やPCBレイアウトでのプロジェクトテンプレートの活用について、次のような可能性を考えてみましょう。
Altium Designerをお試しになりたい場合は、こちらから無料体験版を入手できます。Altium Designerでプロジェクトテンプレートを使用するメリットについてさらに詳しい情報をご希望の方は、アルティウムのエキスパートにお問い合わせください。