正確な出力ジョブファイルを使って設計の意図を伝える

David Cousineau
|  投稿日 2017/02/21, 火曜日  |  更新日 2020/09/25, 金曜日

以前のブログ記事では、実装図面や製造図といった専門的なPCB設計文書がいまだに手動で作成されていること、そしてAltiumDraftsmanなどのツールを使って、そのプロセスをどう自動化できるのかについてご紹介しました。残念ながら図面の作成は、完成した設計文書を製造部門にリリースする際に、設計者が直面する難題のひとつに過ぎません。部品表、ガーバーやドリル、ODB++などの実装ファイルのほか、回路図ページのプリントといった膨大な量のドキュメントや製造ファイルの出力作業も待っています。実際のところ、2017年に発生する手動作業の分量は予想よりも増えています。これを自動化してくれるソフトウェアを使って、仕事を効率化する手がないでしょうか。

 

正確な出力ジョブファイルの重要性

設計の意図を正しくはっきりと製造部門に伝えるには、正確な出力ジョブファイルを提供することが極めて重要ですが、出力ファイルを手作業で作成するのは面倒で厄介な作業です。予算内で期日通りに製品をリリースしなければならないときに、何時間もぶっ通しで製造の出力ファイルを作成することは、かなりのストレスを引き起こします。このプロセスを自動化し、他の設計作業にもっと時間をかけられるとすればどうでしょう?

チェーンの使用

大半のユーザーが経験するのは、設計の各段階(回路図の設計やPCBのレイアウトなど)が単一の実行可能プログラムによって処理される「ポイントツール」や「ツールチェーン」という問題のあるアプローチの利用です。ファイルやネットリストのパスを除き、こうしたアプローチは他のプログラムとほとんど、あるいはまったく関与しません。設計の内容を包括的に理解してくれるシステムがないため、回路図のプリントや部品表を生成するためには回路図のプログラムを開くことになり、ベアボードや残りの実装ファイルにはPCBツールが使われることになります。こうした環境でバッチ出力を実行できる場合もあるでしょう回路図の生成にはこことここをクリックし、部品表の生成にはこことここをクリックするといった具合になります。

 

ツールチェーンを突破する

PCBツールで最初に面倒な設定を行い、一部の出力をバッチ処理することができれば、作業効率が少しは上がるかもしれません。ここで言う「面倒な設定」とは、ガーバー出力に向けて個々のレイヤーを追加することです。そのため単純な4つのレイヤーの基板でも、マスクやシルクなどに追加する際に作成するドキュメントが12種類を下回ることはありません。ODB++などのさらに高度なフォーマットも利用できるかもしれませんが、1つのバッチプロセスに組み込むことはできません。では、ガーバーX2IPC-2581といった新しいフォーマットならどうでしょう?いいえ、やはり他をあたる必要があります。

 

設計で実装のバリアント(実装、非実装、または多様なコンポーネント)を使用する必要がある場合は、実装に基づいた出力リストが膨大になります。

 

設計を修正する際には、再利用できるものがほとんどないために、すべてのプロセスを一からやり直すことになります。その大半は手動での作業になり、多くの組織は設計リリースのチェックリストを使用して、不備の発生を回避しようとしています。ガーバーをチェックして、ドリルをチェックして、Pick and placeをチェックして、という具合ですが、これが完了するには膨大な時間かかります。そもそも、なぜこうしたチェックリストが必要なのでしょうか。答えは単純です。ツールチェーンが使用される環境では一度に設計全体を確認できないために、単一の統合された設計リリースのパッケージを作成することが不可能なのです。

 

コンテナと出力

Altium Designerは、出力ジョブファイルとProject Releaserという2つの独自のメカニズムを組み合わせてこの問題を解決します。これらのメカニズムはAltium Designerの標準ライセンスに含まれています。「Outjobファイル」と呼ばれるファイルを使うと、設計フロー全体で出力を利用できるようになります。ここでは、回路図やPCBに基づくドキュメントのどの組み合わせも選択でき、PDFファイルやフォルダ群などの複数の出力「コンテナ」に送信することが可能です。これは、Altium Designerによる統合された設計環境で実現するものであり、時間の節約という点でもかなりおすすめの機能です。

 

 

複数の出力ドキュメント向けの出力ジョブファイルを設定する

 

これらの設定は1つの環境で指定できるだけでなく、設計プロジェクトのその他の部分と一緒にファイルとして保存されるため、後からいつでも使用することができます。初期設定も簡単なうえ、その後の変更も容易に行えます。

 

また、異なるドキュメント群(製造と実装)に対して複数の出力ジョブファイルも作成できます。これは、製造工場の要件が異なる場合にも役立ちます。たとえば、出力ファイルを試作デザインに使用して、ODB++を優先する米国の工場に送信する一方で、ガーバーやドリルが必要な海外の製造に別のファイルを送信することも可能です。

 

プロジェクトのリリース

全体的なクリック数を最小限にするために開発されたProject Releaserでは、出力ジョブファイルのコンセプトがソースプロジェクト(回路図やPCBなど)のアーカイブ制御と融合され、デザインのドキュメント化とリリースプロセスが完全に自動化されます。複数の出力ジョブが一度に実行され、その出力が単一のリリースパッケージのソースデータとともに保存されます。これはローカルで保存することも、Altium Vaultに送信してセキュリティと制御を強化することも可能です。最初のリリースと同程度の労力とストレスがかかるECOとは異なり、プロジェクトのリリースに関する設定がすべて記憶されるため、ほんのわずかのクリックで作業が完了します。

 

 

 

Project Releaser

Altium出力ジョブファイルとProject Releaserを活用すれば、手動での製造ファイルの出力にかかる時間の浪費を大幅に解消できます。

 

 

筆者について

筆者について

Daveは、EDA業界で20年間アプリケーションエンジニアを務めてきました。1995年に、PADSソフトウェア、ViewLogic、およびその他のEDAツールのホストを代表する大西洋中部の再販会社でキャリアをスタートし、その後、PADSソフトウェアに入社し、InnovedaおよびMentor Graphicsに買収された後も同社に残りました。Daveと彼のビジネスパートナーは、2003年に独自のVAR(Atlantic EDA Solutions)を設立してMentorのPADSチャネルを代表し、その後CadenceのOrCADおよびAllegro製品を取り扱うようになりました。2008年以来、DaveはAltiumに入社し、ニュージャージーのホームオフィスを拠点としています。

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