私は料理が大好きです。レシピを調整して味とバランスをびったりにする満足感。キッチンのにおい。「パパのミートボールは最高だね」なんて言いながらパクパク食べている息子を見るときの誇らしい気持ち! でもレシピをゼロから考えるのは大変な時間が掛かるし、普通はそんな時間はありません。乱切りしたり、さいの目に切ったり、量を計ったり、冷蔵庫と戸棚の間を行ったり来たり。
料理番組ではどうしてあんなに簡単に見えるのでしょう? 理由はいたって簡単で、料理番組では事前にすべて準備してあるからその時間がいらないというだけなのです。プロのシェフは事前にすべての食材を用意しておくことを「mise en place(下ごしらえ)」と言いますが、これはフランス語で「その場に置いておく、用意しておく」というような意味です。普通の家庭よりプロのシェフの料理の方が速いのは、そのためです。
EDAのブログでなぜ料理の話をしているかですって? 実は、料理には設計プロセスに活かせると思えるヒントがいくつかあるからです。つまり、電子機器の設計と料理をうまくやることには、いくつかの類似点があるのです。計画し、設計し、テストし、その方法を捨ててやり直し、微調整する。こういった過程を経て最終的な料理や製品ができるわけです。必要なのは正しいスキルだけではありません。創造力も必要です。創造のための時間を確保するには、必要なときにその都度タマネギを切るのではなく、いつでも使用できるようにあらかじめ準備しておく必要があります。では「EDAでこのタマネギに相当するもの」は何でしょうか?
新たに設計を開始する際にすることを考えてみてください。基本的なファイルフォルダーの構成や回路図の最初の2ページとプリント基板ファイルなど、プロジェクトの基本的な骨組みを固める必要があります。回路図には、枠線や使用するタイトル欄が必要です。プリント基板については、基板外形を考えレイヤースタックを定義する必要があります。設計規則も確立しておく必要があります。もちろん、使用承認されたコンポーネントのライブラリにアクセスできるようにしておくことも必要です(場合によってはこれらを開発することが必要かも知れません)。後で出力プロセスに時間が掛からないように事前にしっかり決めておけば理想的です(詳しくは、こちら、またはこちらをご覧ください)。
これらの情報がすべて1つの場所で集中管理されており、組織内の全員が事前に定義され承認された設計要素にアクセスできプロセスをスピードアップできるようになっていたらどうでしょうか? 準備作業が済んでいる状態で新たなプロジェクトを開始できるとしたらどうでしょう?
Altium VaultはEDAの中核をなすデータ管理ソリューションであり、設計のためのキッチンを五つ星のレストランのように機能させることができます。Altium Vaultの主な機能はコンポーネントのデータを保存することにあります。ライフサイクルが管理されている承認済みの部品を組織内の全員が利用できるようにしておけば、作業の重複による時間の浪費を防止できます。新しい部品の開発が実際に必要になったときには、記号とフットプリントモデルの割り当てと、部品に必要な要件の定義が、コンポーネントテンプレートによりすでに済んでいます。
Altium Vault 3.0では、レイヤー構成ファイルなど再利用可能ないくつかのタイプのコンテンツが追加されているため、あらかじめ定義された承認済みの基板スタックアップに合わせてプリント基板をすばやく設定でき、回路図テンプレート(シートの枠線など)のような従来の設計再利用の概念がさらに拡張されています。
Altium Vaultの機能拡張のうち最も重要なのは、プロジェクトテンプレートが追加されたことです。これにより、定型的なあらゆる設計タイプに応じてプロジェクトの基本的な骨組みを構築することができるようになりました。マウスを数回クリックするだけで、プロジェクトのフォルダー構造を規定したり、タイトル回路図シートや必要なその他すべての補足文書を含めたり、プリント基板を定義したり、基板の外形を決めたり、使用技術に応じた標準のコネクターを含めたり、バージョンに応じ必要なものをすべて追加したりできます。出力は、Altium Vaultで管理された出力ジョブファイル、BOMテンプレート、Draftsmanテンプレートにより制御されます。
電子機器設計環境で下ごしらえがされており、EDAにおけるタマネギがカットされ、使用できる状態になっていれば、これまでよりずっと速く正しく設計レシピを作ることができます!
Altium Vault 3.0で実現されている集中管理型データ管理ソリューションの学習に興味を持っていただけましたでしょうか? 詳しくは、弊社WebサイトのAltium Vault製品ページをご覧ください。