Bolt社の社内技術チームによる迅速な市場進出

Judy Warner
|  投稿日 2019/04/15, 月曜日  |  更新日 2020/12/16, 水曜日

最近、Bolt社のVP of Engineering(エンジニアチームのマネジメント責任者)であるTyler Mincey氏と知り合いになる機会に恵まれました。Bolt社はハードウェアとソフトウェアのアクセラレーター企業(スタートアップ企業を支援する組織)で、サンフランシスコとボストンにオフィスがあります。このインタビューでは、Mincey氏とともにエンジニアリングに対する情熱や、Bolt社で達成した素晴らしい業績についてお話します。社内エンジニアリングチームと協同してベンチャーキャピタルを提供するというユニークなモデルにより、ポートフォリオの成長に拍車がかかっています。Bolt社はアルティウムのスタートアッププログラムLaunch Padに参加し、アクセラレーター企業や世界中の駆け出しのハードウェアスタートアップ企業にAltium Designerライセンスを提供する支援をしています。

Judy Warner: ご自分のキャリアと、Bolt社について簡単に教えてください。

Tyler Mincey: 私は、大小さまざまな企業で接続製品を開発する、担当領域を横断する技術チームのリーダーを務めてきました。iPodの新製品開発を行うApple社の技術チームのリーダーを務めたり、第一世代のiPhoneの中核チームに席を置いたこともあります。その後、web/モバイルアプリの設計と開発を専門に行うデジタル製品工房Fictive Kinのパートナーとして働きました。Bolt社に勤める前は、オートアフターマーケット向けにドライバー支援テクノロジーを設計するスタートアップ企業であるPearl Automation社の創設チームに加わり、VP of Productを務めました。

Bolt社はソフトウェアと物的製品が交わる企業に投資するベンチャーキャピタル企業です。資金提供のほか、上級の技術者や設計者によって投資先を支援し、製品の開発や製造をサポートします。

私は、工業デザイン、機械工学、電気工学、ファームウェア開発を担当するBolt社のチームを監督しています。

Warner: Bolt社は、社内技術チームを持つことがなぜ重要と考えたのですか? 珍しいモデルのように思いますが。

Mincey: 初期段階にあるスタートアップ企業は、製品開発に必要な全ての仕事を行う、担当領域を横断する技術チームをフルタイムで雇うことはできません。また戦略的なサプライチェーン関係を築く時間も限られています。私たちは、経験豊富な技術設計チーム、最先端のプロトタイプ製造業者、ベストプラクティスを集めた内部ナレッジベース、および厳しく評価されたベンダーへのアクセスを提供し、投資先全体に共通の弱点に対処するお手伝いをします。

Warner: Bolt社は、どのようなタイプのテクノロジー企業と契約しているのですか? また適合する企業をどのようにして選択するのですか?

Mincey: 私たちは、大きな市場での問題を解決するために、テクノロジー主導のソリューションを使用している構想段階の企業に投資します。私たちが期待する主な要素は、市場機会の規模、共同創設者の素質、新たな問題の解決手法です。

Warner: スタートアップ企業が犯す典型的なミスは何ですか? また、それに対して、ご自身の経験に基づいてどのような助言をしますか?

Mincey: 教科書どおりの答えになりますが、言えることはそれほど多くありません。大きな問題は、多大な時間、費用、労力をかけても、顧客の要望を満足する製品開発ができないことです。私たちは、企業に対し、お金を払ってくれる顧客とともに、できるだけ早くテストすることを勧めます。たとえ、その製品がプロトタイプでその価値を判断できるほどスケーラブルではなくてもです。

Warner: 機械、電気、ソフトウェアエンジニアリングの各分野でプロとしての経験があり、さらに大小の企業で働いた経験もお持ちなのは珍しいことですね。Bolt社のような企業で仕事をするようになったきっかけは何ですか? また仕事に対する継続的なエネルギーはどこから湧いてくるのですか?

Mincey: この話は人から始まります。Bolt社には、すばらしい起業家とともに仕事し、多くの業界を横断して重要な問題を解決できる非常に才能豊かなチームがあります。

Warner: プリント基板設計に関して、スタートアップ企業にはどのような障害が発生しますか? Bolt社は、投資先企業がその障害を乗り越えるられるようどのようにサポートしますか?

Mincey: 多くの場合は、その企業が、どれほどのリスクを負って、システムアーキテクチャーを完全に最適化するか、あるいは既製モジュールやより簡単なプリント基板設計ソフトを使用するか、判断するのをお手伝いします。第一世代の製品の場合、優先事項はできるだけ短期間でシームレスな機能を提供することです。費用、フォームファクター、電源などの最適化は必ずしも重要ではありません。

Warner: 昨今のコンポーネント不足や部品割り当てのため、サプライチェーンの状況は、スタートアップ企業にとっては不利だと思われます。これにはどのように対処しますか?

Mincey: 私たちは、65社を超える投資先企業の多くの方々の英知から恩恵を受けています。しかしながら、それでもこれは根本的な難しい問題です。ソフトウェア主導の企業のスケジュールを調整する場合は、前もって計画する時間がより多くあります。

Warner: ハードウェアのスタートアップの場合、「電流スパイク」があるように思います。どのような用途や市場の動力学がこれに拍車をかけると思いますか(IoTなど)?

Mincey: 私たちは、過去10年間で、モバイル端末市場の中核的なテクノロジー開発につぎ込まれた数千億ドルから利益を得ています。中心となるハードウェアコンポーネントは、これまでより安く、小さく、強力になり、消費電力は少なくなっています。ソフトウェアツールには成熟したコミュニティーがあり、そのおかげで企業は、かつては知られていなかったような小さなチームによって製品の提供が可能になっています。

そうは言ってもやはり、スタートアップ企業としてハードウェア製品を市場に出すことは非常に困難です。私たちは、得意とする分野の困難な問題を好んで解決します。

Warner: Bolt社が今後5~10年間にわたって興味を持って追跡しようと考えているテクノロジー成長市場は何でしょうか?

Mincey: デジタル業界ネイティブのバーティカルなブランドの継続的な成功と、あらゆる業界およびB2B製品に適用可能な、製品定義と顧客との関係づくりのためのツールに非常に興味があります。

また、利益率の高い経常収益を支える物理的商品を使った革新的なビジネスモデルを持つ企業にも非常に興味があります。これにより企業は、市場のより狭い分野を対象により深く参入し、環境面を意識した倫理的な製造に投資して、正当な中核テクノロジーを開発することができます。

私たちは、Bolt社の投資先企業であるOrbit Fabのように、先見性を持った次世代の宇宙企業向けにインフラストラクチャーやアプリケーションを開発する航空宇宙企業の新しいエコシステムに心を躍らせています。

Warner: Tylerさん、スタートアップ企業に関する貴重な見識や、Bolt社のエキサイティングなお仕事についてお聞かせいただき、ありがとうございました。

Mincey: どういたしまして。こちらこそBolt社の話や展望を紹介する機会をいただき、ありがとうございました。

Tyler Mincey氏のOnTrackポッドキャストBolt社のブログを各リンクからご覧いただけます。

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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