Altium Designerで設計分担

投稿日 八月 16, 2021
更新日 七月 1, 2024
Altium Designerで設計分担

回路設計技術者向けに提供されている統合ツールには、回路図作成とPCB設計の両方の機能が含まれています。しかし、多くの設計現場では回路設計とPCB設計は分担されており、それぞれ別の担当者が担当します。このため、回路設計者はPCB編集機能を使う機会が無く、統合ツールは要らないと考えてしまいがちです。

しかし、その考えは誤っています。回路図エディタとPCBツールを備え、設計者間で設計データを共有できる統合ツールは、設計を分担する場合にこそ欠かせないものであると言えます。

Altium Designerによる設計の分担と連携

基板設計CADツールのAltium Designerでは、回路図の作成から基板のレイアウトまでに必要なツールがシームレスに統合されています。これは、始めから 終りまですべての設計を全て一人でこなす場合だけでなく、回路設計者とPCB設計者が設計を分担する場合にも大変役立ちます。そこで、このAltium Designerによる設計分担と、その統合環境の優位点をあげてみます。

・設計プロセスのあらゆる段階でのデータの共有

回路設計者とPCB設計者は、設計プロセスの全段階を通じて1つの設計データを共有する事ができます。この事は、両者の意思疎通に役立つだけでなく、設計プロセスのどの段階でも設計を分担できる事を意味します。例えば、回路設計者は、PCBの部品配置まで行った後、その後の工程をPCB設計者に引き継ぐ事ができます。

・回路図とPCB間のデータの受け渡し

回路設計者からPCB設計者へのデータの受け渡しは、回路図ファイルで行う事ができ、伝達されるネットリストのように接続情報だけに留まりません。例えば、デイレクティブや精密なPCBデザインルールを設定して、設計の意図をPCB設計者に伝える事ができます。また、フットプリントが割り付けられた統合ライブラリの利用により、PCB設計者がフットプリントの割り付けに手間取る事はありません。

また、回路変更が生じた場合でも、ただ単に変更後の回路図を再提出するだけで済み、PCB設計者は変更箇所を自動的に抽出する事ができます。

PCBで行った変更を回路図に反映

PCBの設計中に回路の修正が必要な変更を行う場合があります。例えば、ピンスワップやパートスワップを行うと回路が変りますので、回路図を更新しなくてはりません。この作業は、PCB画面から[Update Schematics…] コマンドを実行するにより自動的に行う事ができ、煩雑なECOファイルによるやり取りは必要ありません。

・設計結果の検証と修正、製造仕様書の作成

回路設計者は、PCBの設計結果を受け取り、そのデータを使ってルールチェックやシミュレーションを行う事ができます。そして、問題が見つかった場合には、回路設計者が自分でPCBの修正を行う事ができます。さらに、回路設計者は、設計済のPCBデータを実装図などの製造仕様書の作成に利用する事ができます。

図1. Altium Designerによる設計の分担と連携
図1. Altium Designerによる設計の分担と連携
回路図エディタとPCBツールがシームレスに統合されたAltium Designerでは、設計の全工程に渡って設計データの整合性が保たれます。そして、回路設計者とPCB設計者はそのデータを共有でき、どの設計段階からでもデータの受け渡しを行う事ができます。

このように、Altium Designerを使う事により、柔軟な設計分担と緊密な連携が可能になります。仮に、単独の回路図エディタとPCBツールで設計を分担したとすると、このような連携は何一つとして実現できません。

最適な統合ツールを選ぶ

統合ツールが、設計を分担する場合にも欠かせないものである事がわかったところで、Altium Designerが全ての技術者にとって最良の選択なのかどうかについて、考えてみたいと思います。

そこで、少し大雑把ですが設計技術者を 3つのタイプに分類してみました。

(1) PCB 設計を自分自身で行う、一括設計型の回路設計者

(2) PCB 設計を他人に依頼する、回路設計者

(3) PCB 設計を他人から依頼される、PCB設計

これらのうち、PCB設計まで自分で行う一括設計型の回路設計者にとって、必要な機能を全て備えたAltium Designerが、最適なツールである事に疑いの余地はありません。一方で、PCB設計を行わない回路設計者にとっては、Altium DesignerのPCB編集を行う機会が無く、PCB機能が無駄になってしまいます。

幸い、Altium Designerには回路設計者向けに、PCBの編集機能を省いたAltium Designer SEが用意されています。これならツールの機能を無駄無く使い切る事ができます。また、このAltium Designer SEは手頃な価格で入手できますので、予算が限られている場合には最適です。なお、Altium DesignerとAltium Designer SEの違いについては、Altium Designer SE - 回路設計者のもう一つの選択肢をご覧ください。

そして、回路図を作成しないPCB設計者にとっても、回路図エディタが統合されたAltium Drsignerは過不足のない選択であるといえます。回路図編集機能を使用する機会は限られていますが、回路データの受け渡しや回路図の参照のため、回路図エディタは欠かす事ができません。

このように、統合ツールAltium Designerは、設計を分担する場合にこそ有用なツールである言えます。もし、まだ単体の回路図エディタやPCBツールをお使いでしたら、ぜひともAltium Designerの導入をご検討ください。

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