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    超低電力の不揮発性メモリの誕生を予測させるスピン波技術の飛躍的な前進

    August 2, 2017

    基底状態の分子とフリーラジカル

     

     

    私の大学では、量子力学が必修須科目ではありませんでした。何かを真に「理解する」ことは不可能で、わかるのはその確率だけだ、というのが前提だったのです。私には少しばかげた考えのように思えました。その後、私は上級電磁気学と信号処理を学びましたが、意味のわからない膨大な量の数字に対処しなければなりませんでした。一部の学生がこの講義を選択してくれたのは本当にうれしいことです。現在の量子技術を飛躍的に進展させてくれているのは、彼らにほかならないのですから。最近、ある研究チームがスピントロニクス(スピン波エレクトロニクス)での発見を詳述した論文を発表しました。この発見によって、メモリなどの実際のスピントロニクス デバイスのための道が切り開かれるかもしれません。こうした記憶装置には、不揮発性や超低電力駆動といったいくつかの強みが備わることになるでしょう。これらの利点は、モノのインターネット(IoT)などの組み込みアプリケーションにとっては最適な選択肢になる可能性がありますが、フラッシュメモリにとっては手ごわい競合になるでしょう。

    スピン波技術

    最近の大躍進の話に進む前に、まずはスピン波技術がどういうものなのかを確認しておきましょう。その後で、研究者チームが発見した内容についてご紹介します。

    従来の電子機器では、電子電荷を使って情報の保存と操作が行われます。トランジスタには、電流を流すオンの状態と電流を流さないオフの状態があります。スピントロニクスでも電子が利用されますが、情報は電荷特性ではなくスピンを使って保存されます。電子スピンにも2つの状態がありますが、これらは放射される小さな磁場を測定することで識別されます。この研究チームは、エレクトロニクスのベースをトランジスタからスピンに置き換える方法を見つけたのです。

    最近、シンガポール国立大学のチームは、スピン波の分野を飛躍的に進展させました。スピントロニクスの問題の1つは、異方性が原因で波信号の方向がバラバラになってしまうことのようですが、Adekunle Adeyeye教授が率いるこの研究チームは新しい構造を使って、同じ信号を複数の方向へ同時に伝搬させました。この構造では外部の磁場が必要ないため、実装がより簡単になります。チームは以前、外部の磁場がない状態でスピン波信号を送信、操作する方法を発見しました。これら2つの発見を組み合わせれば、スピントロニクス デバイスの誕生にさらに近づけるでしょう。

     

    原子の粒子

    電子は次のトランジスタになるかもしれない

     

     

    スピントロニクスの強み

    新しいからといって、それが必ず役に立つとは限りません。では、スピン波の技術は何を実現してくれるのでしょうか?スピントロニクスにはメモリの応用に活用できる強みがあります。それは超低電力と不揮発性であり、単純な材料を使って情報を保存できます。

     

    • 超低電力 - トランジスタには状態を変更するための電流が必要ですが、スピンの状態ははるかに少ないエネルギーで簡単に反転することが可能で、電流は必要ありません。

    • 不揮発性 - フラッシュメモリがここまで普及した理由の1つは、高速で不揮発性だからです。情報の保存に電力は必要ありません。スピントロニクスでは電流や電荷を使用せずに、スピンの状態が維持されます。アップスピンまたはダウンスピンの状態は変更するまで維持され、不揮発性となります。

    • 一般的な材料 - 材料についてはあまり考えられないかもしれないものの、電子機器に利用される半導体の多くはかなり特殊です。スピンは、鉄や銅、アルミニウムなどの材料でも計測される可能性があります。つまり、低コストの一般的な材料が利用されている記憶装置を調達して設計に組み込むことが可能になります。

    この記事では記憶装置に焦点が置かれているものの、スピン波技術がデジタル信号処理にも有用であることは触れておく価値があるでしょう。スピントロニクスの本質によって、信号の処理や稼働にフーリエ変換のような計算の強みがもたらされます。

     

     

    ワイヤレスシティ

    IoTでは、分散した低電力センサーのための低電力メモリが必要になる
     

     

    磁気メモリの応用

    磁気メモリとも呼ばれるスピン波メモリには、複数の応用が期待されています。これを最も必要とする市場はモノのインターネット(IoT)です。

     

    IoTは爆発的な成長を遂げようとしています。家電製品だけでなく、自動車や都市、住宅までがスマートになりつつあります。IoTでは巨大な領域にセンサーが分散され、データの収集や解釈のための専用ネットワークを経由して情報が送信されます。これらの拡散したセンサーでは毎年のようにバッテリー交換が行われないため、収集した情報を保存するための超低電力のメモリが必要になります。多くの企業が超低電力フラッシュの開発に取り組んでいるのはこれが理由です。こうした製品はこれらのネットワークに最適な記憶装置となるでしょう。

    磁気記憶装置は、フラッシュの手ごわい競合になると考えられます。超低電力のフラッシュを開発するために、企業は長い時間をかけて研究を行ってきました。スピン波メモリはフラッシュと同じレベルから始まって改善されていくと考えられます。また、スピントロニクスでは入手しやすい材料が利用されるため、特殊な半導体を使った従来の記憶装置よりもコストを下げることができます。

    市場では、スピン波技術を受け入れる準備が整っています。シンガポールの研究チームが達成したような大躍進によって、この技術は目標に一歩近づきました。スピントロニクスはすぐに、私が上級量子物理学の講義で学んだ内容とは同じではなくなるでしょう。人々の食習慣が「スマートなお箸」に保存されるようになるかもしれません。

    スピントロニクスを電気回路に組み込むことは、容易なことではないでしょう。作業をスムーズに進めるには、次世代の設計技術を統合できるAltium Designerなどのソフトウェアが必要です。たくさんのPCBツールを備えるソフトウェアは、将来の技術を設計で活用することに役立ちます。

    スピントロニクスに関してご不明な点がある場合は、Altiumの専門家にお問い合わせください。

     
     
     
     
     
     

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