低消費電力広域ネットワークによりIoTシステムで何が可能になるか

投稿日 2017/05/16, 火曜日
更新日 2020/11/27, 金曜日

wifi over city

 

土木エンジニアが好きで、電気エンジニアが嫌いなものは何でしょうか? 答はコンクリートです。私たちの物理的な世界の基盤であるコンクリートは、多くの場合に私たちのデジタル世界の基盤である電気信号の混乱の原因となります。立体駐車場、ショッピングモール、地下構造物はすべて、信号適用範囲の低下という問題を抱えています。いずれかの種類の窓やリピーターを使用しなければ、これらの部分で良好な適用範囲が得られることは稀です。モノのインターネット(IoT)がこのような場所への展開を目指すときも、これらの点が問題になります。このような場合に役に立つのが低消費電力広域ネットワーク(LPWAN)です。LPWANを使用すると、IoTデバイスの適用範囲と電力の問題を解決できます。さらに、低消費電力の分散サービスのオプションが可能となり、IoTに革新的な変化をもたらす可能性もあります。

 

LPWANとは何か

 

LPWANの概要は、その名前が示すとおりです。LPWANは低消費電力のデバイスを対象として、広い範囲を適用するためのネットワークです。明確にしておくと、LPWANは基準ではなく、単なる記述です。現在、または過去において、LPWANを提供するさまざまな企業が各種の異なるテクノロジーを使用してきました。これらのシステムに共通の必要条件は、「広い範囲」(通常は2km以上)をカバーし、低消費電力のデバイスに対応することです。市場への普及を目指すには、低価格であるという条件も加わります。

 

大きな複合施設やビルディングの施設監視など分散した配置を可能にするため、広い範囲をカバーする必要があります。LPWANシステムは本質的に集中化していないため、多くのセンサーやデバイスを購入する必要があります。これらのコストが加算されることから、LPWANが成功するには、製品が安価な必要があります。LPWANのほとんどのセンサーやデバイスは、バッテリーで何年も動作する必要があります(標準は10年のようです)。つまり、センサーが低消費電力で、LPWANも低消費電力のネットワークソリューションを使用する必要があります。低消費電力ネットワークの唯一の欠点は、データ転送速度が低下することです。その結果、ほとんどのLPWANは処理能力の低いアプリケーションに適してます。

 

LPWAN市場は驚異的な速度で成長しつつあり、2025年には40億台のデバイスが接続されると予測されています。この成長機運から激しい競争が引き起こされ、電気通信業界まで波及しています。

 

LPWANではないもの

 

セルネットワークは現在のところ、LPWANとはみなされていません。しかし、セル事業者がこの市場へ参入を試みることにより、情勢は変化する可能性があります。テレコムには既に巨大なインフラストラクチャが存在し、それによってネットワークを簡単に稼動できます。セルのもう1つの利点は、企業のビジネスモデルの関係で、LPWANシステムを安価に販売できることです。これらの企業はハードウェアではなく契約で利益を上げます。このモデルは、これらの企業が可能な限り多くのシステムを低価格で販売するための動機付けとなります。既に述べたように、LPWANは低価格であることが重要です。これらの事業者が抱える唯一の問題は低消費電力の要件です。現在の携帯電話アンテナは消費電力が多すぎるため、多くのLPWANアプリケーションにおいて有用ではありません。しかし、テレコムが低消費電力のソリューションの開発に投資を行っているため、この状況も変化しつつあります。

この状況は、ライセンス不要の周波数帯を運用しているLPWAN企業にとって、どのような影響を及ぼすでしょうか?まず、これらの企業は間もなく、ライセンスされている帯域で莫大な資金を持つ通信事業者と競合することになるでしょう。

 

5G network concept
5Gはセルプロバイダーの次のLPWANソリューションになると予測されます。

 

 

現在のLPWAN IoTアプリケーション

 

それでは、LPWANはIoTとどのような関わりがあるのでしょうか?個別のIoTデバイスは既に数が増えつつあり、IoTの規模も増大していくでしょう。IoTの次の段階は「スマートな」システムです。これらのシステムは人手で制御される分離したデバイスから、ネットワーク化され自動的に管理されるアイテムへと移行していくと考えられます。

 

いくつかのシステムは、現在のLPWANの能力から利益を受けられます。これには、施設監視システム、自動駐車システム、物体追跡などがあります。これらのほとんどは屋内で行われ、大量のコンクリートによって信号が減衰するため、広い適用範囲になります。また、データの小さなパケットを互いに、または集中化されたコントローラーへ送信できる、低消費電力のセンサーが大量に必要となります。LPWANがなければ、気温センサーを接続する目的だけのために、ショッピングモールのあらゆる隙間や割れ目にWiFiルーターを設置する羽目になるでしょう。電力も大きな問題です。駐車スポットのセンサーすべてを商用電源に接続するのは、およそ実用的ではありません。

 

既存のLPWANテクノロジーはこれらのアプリケーションを扱うことが可能で、既に実現しています。LPWANの応用例の1つは街路照明です。分散したセンサーと集中化された制御により、場所に応じて適切なレベルに照明を暗く、または明るく調整できます。これによって都市の予算を節約できます。ただ正直なところ、これによる削減は大した金額ではありません。より大きな利点は、追跡と保守です。LPWANを使用することで、保守チームはいつ、どの照明が切れたのかを正確に知ることができます。この点は、分散システムを簡単に監視して制御できるLPWANが非常に役に立つ部分です。

 

car sharing
自動運転車はLPWAN市場の推進力となります。

 

将来のLPWAN IoTアプリケーション

 

LPWANの普及を妨げる主な要因は帯域幅です。消費電力が低いことが要求されるため、伝送速度も低くなります。このため、水量計のデータなどはネットワーク上で送信できますが、画像やビデオは送信できません。次世代のLPWANは依然として広範囲で低消費電力という要求を満たしながら、より多くの帯域幅を提供する必要があるでしょう。

 

高帯域幅LPWANの最大の用途の1つは、自動運転車です。先進運転支援システム(ADAS)を使用する車両はますます増え、いくつかの企業はさらに完全な自動運転の車両を目指しています。これらの車両はIoTハブを駆動し、動作のためネットワークへの接続が必須となるでしょう。現在のところ、これらの自動車で使用されているネットワークは4Gのみですが、これは理想的なものではありません。自動運転車のプロセッサーはますます多くの電力を使用するようになるため、より低消費電力のネットワークソリューションが必要です。ここで5Gが有効になります。5Gでは車両がより帯域幅の高い接続を使用でき、消費電力は4Gよりも低くなります。5G LPWANにより、車両は膨大な量のデータをダウンロードおよびアップロードでき、ドライバーに対してさらに安全で快適な環境を提供できるようになるでしょう。

 

遠距離に到達できるモノのインターネットの到来には時間がかかりましたが、それも間近に迫っています。間もなくLPWANは、大規模でコンクリートに囲まれた施設に広く採用され、「スマートな」施設を実現するでしょう。セル企業がLPWANのシェアを確保するため、ライセンス不要の帯域幅で立ち上げの競争を行うのに注目する必要があります。現在のソリューションは、「スマートな」駐車、計量、照明システムを、帯域幅への低い要求で実現できます。今後はLPWANでより高いデータ伝送速度が実現され、自動運転車の接続に活用されるようになるでしょう。これらのシステムすべてに対応するPCBを設計することは、設計者の役割です。

 

手でコンクリートを混ぜた経験はあるでしょうか? 時間を要し、退屈で、疲れる作業です。コンクリートミキサーのような適切な道具があれば、作業ははるかに簡単になります。LPWANシステム用のPCBの設計も同じことです。ほとんどのLPWANアプリケーションで動作するために、PCBは小型で、堅牢で、消費電力が低いことが必要です。CircuitStudioは設計を簡単に行えるようにするためのツールです。CircuitStudioは広範な先進機能を搭載しており、従来では想像できなかったほど設計が便利になります。

 

IoT用のLPWANについてのご質問は、Altiumの専門家にお問い合わせください。

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