基板設計CADのAltium Designerではファイルベースとクラウドベースのライブラリが提供されており、膨大な数の回路図シンボルやフットプリントを利用できます。しかし、市場に出回っている全ての部品が網羅されている訳では無く、足りない部品は設計者自身が用意しなくてはなりません。
ライブラリエディタを使えばどのような特殊なものでも作れますが、できれば既存のライブラリを利用して作成の手間を省きたいものです。そこで役立つのが、部品メーカーによるライブラリのサポートです。
多くの部品メーカーでは設計者に対するサポートの一環として、CAD用の部品ライブラリを提供しており、各社のホームページからダウンロードする事ができます。そこで、主要なメーカーのサイトをいくつかあたってみるとそれらは、「BXL」という拡張子を持つファイルで提供されています。
しかし、Altium DesignerではこのBXL形式のファイルを直接、読み込むことはできず、何らかの方法で変換しなくてはなりません。
調べてみると、このBXL形式のファイルはEMA Design Automation社の「Ultra Librarian Viewer」というライブラリビューワで使われているものであることがわかりました。Ultra Librarian Viewerでは、このBXLファイルを読み込み、その内容を表示させるだけでなくAltium Designerを含む各社のライブラリフォーマットで保存できます。要するに、部品メーカーからBXL形式で提供されている部品ライブラリを読み込み、Altium Designerの部品ライブラリに変換する事ができるわけです。
ちなみに、Ultra Librarianのホームページによると、ルネサス、MICROCHIP、ANALOG DEVICES、マキシム、Power Integration、TI、SILICON LABS、NXP、TE Connectivity、TOSHIBA、Linear TechnologyなどがこのUltra LibrarianのパートナーとしてBXL形式のライブラリを提供しているようです。
Ultra Librarian ViewerはローカルPCにインストールして利用するタイプのものと、Webベースのものが用意されています。
ローカルPC用のプログラムは、Ultra Librarianのホームページからリクエストする事により、無償で入手する事ができます。インストールプログラムは実行ファイル形式で提供されており、これを起動するだけで簡単にインストールが完了します。また、WebベースのツールはブラウザからURLにアクセスするだけで利用でき、プログラムのインストールは必要ありません。
多くの部品メーカーがBXL形式でライブラリを提供しています。その中から今回は、ANALOG DEVICESのBXLライブラリを試してみる事にします。
ライブラリは、ANALOG DEVICESのホームページの、[設計支援] - [シンボル、フットプリント、3Dモデル] のページから入手できます。このページの検索窓に部品名を入力する事により、該当する部品がリストアップされますのでその中から目的のものを選びます。
そこで、A/Dコンバーター「AD4111」で検索したところ、「AD411BCPZ」と「AD4111」の2つがリストされました。
製品型番 |
Ultra Librarian Reader |
|
AD4111BCPZ |
||
AD4111 |
|
この2つはライブラリの内容に違いは無く、「AD411BCPZ」はWebベースのツールで利用するためのもので、「AD411」はローカルツールで利用する為のものです。
BXLファイルをAltium Designer 用のファイルに変換
PCにインストールされたUltra Librarian Viewerを利用する場合には、下段の「AD4111」を選びますが、今回はWebベースのツールを使って変換を試してみます。この場合、上段の「AD411BCPZ」の [Download] をクリックします。手順は次のとおりです。
これで、Altium Designer用のライブラリを入手できました。
ライブラリデータはZIP形式に圧縮されており、解凍すると次のファイルが現れます。
しかし、IntLibや.SchLib、PcbLib等の拡張子を持つファイルはどこにも見当たらず、ライブラリデータがそのままAltium Designerで使える形式にはなっていない事がわかります。利用可能なライブラリは、スクリプトを実行して生成する仕組みになっています。このため、ダウンロードしたスクリプトプロジェクト、「UL_Import.PrjScr」を読み込んでこの処理を行います。
UL_Import.PrjScrの読み込みは、[ファイル] - [プロジェクトを開く]、またはワークスペースへのドラッグ・アンド・ドロップによって行います。
UL_Import.PrjScrを読み込んだ後、次の手順でスクリプトを実行します。
この一連の操作により、SchLib形式の回路図シンボルライブラリとPcbLib形式のフットプリントライブラリが生成されます。以下は回路図シンボルライブラリを開いた画面です。フットプリントも生成されており、回路図シンボルに割付けられています。
他の多くの部品メーカーでも同様に、BXL形式のライブラリを提供しています。これらのBXLライブラリは部品メーカーがリファレンスデータとしてオフィシャルに提供しているようです。
今すぐAltium Designerの無償評価版をリクエストして、世界最高のPCB設計ソリューションをお試しください!ご不明な点などございましたら、お問合せフォームにご入力ください。