多くの電子部品メーカーが、リファレンスデザインをCADデータで無償提供しています。しかし、これらが基板設計ツールのAltium Designerで作成されているとは限りません。通常、他機種データを利用する場合にはデータの変換にてこずりがちですが、Altium Designerでは内蔵されているインポータの助けにより、労せずこれらを利用する事ができます。
そこで、実際に部品メーカーのホームページにアクセスし、リファレンスデザインがどのような形式で提供されているかを確認し、それらがAltium Designerでどの程度利用できるのかを試してみました。
各社のホームページを覗いてみると、どの部品メーカーもリファレンスデザインの提供には力を入れています。どの部品メーカーを取り上げるべきか悩むところですが、今回は手始めに、Texas Instruments社(以下「TI社」)の製品情報ページを調査しました。
では実際にメーカーの情報ページにアクセスします。
無作為に選んだ部品「TIDA-00733」をTI社のホームページから検索し、現れたページを調べました。これは、車載デジタルアンプ用のICです。
このページでは、BXL形式の部品ライブラリ、リファレンスPCBの回路図とPCBのCADデータ、及びGerberデータが提供されています。
まず、部品そのものについては、パッケージの種類ごとにBXL形式の部品ライブラリと3Dモデルが用意されており、Altium Designerですぐに利用する事ができます。
型番 |
パッケージ | ピン数 |
CAD ファイル(.bxl) |
STEP モデル(.stp) |
LM53635-Q1 |
VQFN-HR (RNL) | 22 |
||
LM74610-Q1 |
VSSOP (DGK) | 8 |
||
LP5907-Q1 |
X2SON (DQN) | 4 |
|
|
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SOT-23 (DBV) | 5 |
||
LP5912-Q1 |
WSON (DRV) | 6 |
||
MSP430G2332-EP |
TSSOP (PW) | 20 |
||
PCM1865-Q1 |
TSSOP (DBT) | 30 |
||
SN74LVC125A-Q1 |
SOIC (D) | 14 |
- |
|
|
TSSOP (PW) | 14 |
||
TAS6424-Q1 |
HSSOP (DKQ) | 56 |
|
|
TLV2462A-Q1 |
SOIC (D) | 8 |
- |
|
|
TSSOP (PW) | 8 |
表1. BXL形式で提供されているTIDA-00733の部品ライブラリ
また、リファレンスPCBのデザインデータについては次のようなものが提供されています。
タイトル |
種類 |
サイズ (KB) |
日付 |
ZIP |
5557 |
2017年 12月 14日 |
|
ZIP |
2228 |
2017年 12月 14日 |
|
|
3089 |
2017年 12月 14日 |
|
|
486 |
2017年 12月 14日 |
|
|
42 |
2017年 12月 14日 |
|
|
850 |
2017年 12月 14日 |
表2. 提供されているTIDA-00733リファレンスボードのデザインデータ
そこで、このリファレンスデザインのCADデータをダウンロードしたところ、回路図とPCBの両方共Altium Designerで作成されたデータでした。
また、試しにガーバーデータをダウンロードしてみたところ、やはりこれもAltium Designerから出力されたものでした。
このように、TIDA-00733のデザインデータについては全て、Altium Designerで作成され、すぐに利用する事ができます。
これは、車載デジタルコックピット用のSOC、DRA71x の評価ボードです。これも無作為に選んだものです。リファレンスデザインのページからCADデータが提供されていたのでダウンロードしたところ、回路図はOrCAD Capture、PCBはAllegroで作成されていました。Altium Designerは、この回路図とPCBを読み込む為のインポータを備えています。
そこで、まず回路図を読み込んでみます。
ダウンロードした回路図ファイル、「518392B2_DRA71X_CPU_BOARD.dsn」をAltium Designerにドラッグ・アンド・ドロップするとOrCADインポートウィザードが起動します。
あとは、[Next] ボタンを押し、順に表示されるダイアログボックスの入力項目を埋めていきます。これが終わると読み込みが実行されます。
次に、PCBを試してみます。
ダウンロードしたPCBファイル、「518391B_DRA71X_CPU_BOARD_21JULY2017.brd」をAltium Designerにドラッグ・アンド・ドロップするとAllegroインポートウィザードが起動します。
Altium DesignerのAllegroインポータは、処理中にAllegroツールを起動してASCIIデータを抽出します。このため、Allegroツールがインストールされていないと機能しません。
いま使っているPCにはAllegroがインストールされていませんが、とりあえずこの状態でAllegroインポータを実行してみました。
やはり、Allegroが見つからないというメッセージが現れます。
今回はここで断念せざるを得ませんが、Allegroがインストールされているか、又は外部に利用できる環境があれば、このAllegro PCBデータを読み込み込む事ができます。
これは、線通信用IC「CC2530」を動作させるためのリファレンスボードです。リファレンスデザインのページからCADデータをダウンロードしたところCADSTARのデータでした。Altium Designerは、このインポータを備えていますので、読み込んでみました。
まず、ダウンロードした回路図ファイル、「CC2530EM_discrete_1_3_1.csa」をAltium Designerにドラッグ・アンド・ドロップするとCADSTARインポートウィザードが起動します。
あとは、[Next] ボタンを押し、順に表示されるダイアログボックスの入力項目を埋めていきます。最初のダイアログボックスで、インポート対象としてPCBファイル「CC2530EM_discrete_1_3_1.cpa」を追加します。この一連の手続きが終わると読み込みが実行されます。
このように回路図とPCBが同時に読み込まれます。
これは、Wi-Fi/Bluetoothチップ「WL1837MOD」を動作させるためのリファレンスボードです。このデータは、PADSで作成されており、バイナリ(.PCB)とASCII(.ASC)の両方の形式で提供されています。
ASCII形式のPADSデータであれば読み込めるはずなので、試してみました。
読み込みは他と同様に、「WL1837MODCOM8I.asc」をAltium Designerにドラッグ・アンド・ドロップする事によって行います。すると、この場合にはウィザードが起動せず、いきなりデータが読み込まれます。もし、ウィザードを利用して読み込みたい場合には、[ファイル] - [インポートウィザード] を選び、ウィザードを起動します。
このように、Aitium Designerでは他社フォーマットのCADファイルを難なく読み込み、Aitium DesignerのCADデータとして利用する事ができます。
新しいものを中心に、手当たり次第にリファレンスデザインを検索してみました。その結果、大半がAltium DesignerのCADファイルで提供されていました。また、Altium Designer、Allegro、PADS、CADSTAR以外のCADファイルは見当たりませんでした。さらに、PADSとCADSTARでは、バイナリとASCIIの両方の形式で提供されています。Altium Designerでは、このサイトで提供されている、ほぼ全てのリファレンスデザインを利用できそうです。
部品メーカー各社はリファレンスデザインの提供に力を入れていますが、Altium Designer以外のCADファイルで提供されているものもあります。これらを利用するためにはインポータが欠かせません。
Altium Designerは多くの種類のインポータを備えており、これらはリファレンスデザインだけでなく、あらゆる既存データの再利用に役立ちます。
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