Altium Designer 統合環境とは

投稿日 七月 1, 2019
更新日 十一月 30, 2020

回路図を描く時には回路図エディタを起動し、プリント基板をレイアウトする時にはPCBエディタを起動する。これはプリント基板CADを利用する場合のごく普通の手順です。しかしAltium Designerでは違います。

Altium Designerではプラットフォームを起動するだけでよく、回路図を書く場合でもPCBをレイアウトする場合でも個々にプログラムを起動する必要はありません。何故なら、Altium Designerが真の統合ツールだからです。

Altium Designerのユーザーの皆さんは、このような独自性を意識することなく利用されていると思いますが、実はこの統合環境は他には見られない極めてユニークなものなのです。

Altium Designer統合環境のしくみ

Altium Designerのプログラムは他とは異なり、クライアントとサーバーの 2つのパートに明確に分離されています。

例えば回路図エディタを例にとると、ユーザーが画面を見ながらマウスやキーボードでツールとのやり取りを行う為のユーザーインターフェイスと、回路図の編集機能を提供するアプリケーションロジックの部分が分割され、それぞれ独立したプログラムとして実装されています。このユーザーインターフェイス部はクライアントモジュールとして実行ファイル(.exe)形式で用意され、アプリケーションロジック部はサーバーモジュールとしてダイナミックリンクライブラリ(.dll)で用意されています。このサーバーモジュールにはAPIが用意されており、クライアントはこのAPIを介してサーバーが持つ回路図編集機能にアクセスし、回路図エディタとしての機能を包括的に提供します。

このクライアント部とサーバー部との分離は、PCBエディタ等の他のアプリケーションでも同様に行われています。そしてさらに重要なのは、一つのクライアントが全てのサーバーの共通のユーザーインターフェイスとして使用されるという事です。

この構造をクライアント側から見ると、一つのクライアントに複数のサーバーが接続される形となり、接続された全てのサーバーをクライアントが単一のユーザーインターフェイスで束ねています。これはまさにツールの統合を意味します。そしてこのクライアントモジュールは統合プラットフォームとしてAltium Designer統合環境の根幹を成しています。

Altium Designer 統合環境

Altium Designerでは一つのクライアントに複数のサーバーがプラグインされる事によって統合環境が実現されます。クライアントモジュールは実行ファイル(exe)で提供され、サーバーモジュールはDLLで提供されます。DLLで提供される全てのアプリケーションはクライアントを起動するだけで利用できます。また異なるタスクに移行(例えば回路図編集からPCBレイアウト)する場合でも、オープンしたドキュメントの種類に合った画面が自動的に呼び出される為、恣意的なアプリケーションの切り替えは不要です。また、各サーバーのAPIは公開されており、ユーザーが独自に作成したアプリケーションからサーバーにアクセスする事ができます。この先進的な統合環境は、1995年にEDA/Clientという名で登場し、その後の改良に伴いDesign explorer、DXPプラットフォームと名を変え現在のX2プラットフォームに至ります。

サーバーの分類

Altium Designerの機能モジュールとして提供されるサーバーは次の3種類に分類できます。Altium Designerではこのようなサーバーが機能ごとに用意され、これらがX2プラットフォームにプラグインされる事によって一体化します。  

・Document Editor/Viewers

回路図エディタやビューワなどのドキュメントウィンドウを伴うもの。これらは、表示された画面のペインやメニューを使って機能を利用します。

・Wizards

ウィザードではポップアップウィンドウが表示され、この項目に入力されたデータをサーバーが受け取る事によって機能します。IPCフットプリントウィザードなどがあります。

・Utility Servers

混在回路シミュレータのようにウィンドウを持たないユーティリテーでは、エディタのコマンドメニューから API を介してサーバーの機能にアクセスします。

なお、ユーザーが必要に応じて機能を追加する為に別途に提供されているサーバーモジュールを、エクステンションと呼んでいます。

統合プラットフォームの画面要素

Altium DesignerのX2統合プラットフォームは、多彩でフレキシブルな画面によって多種多様なサーバーの共通のユーザーインターフェイスとしての役割を果たします。

プリント基板CAD - Altium Designer 統合プラットフォームの画面
統合プラットフォームの画面:中央のドキュメントウィンドウには回路図が表示され、画面の上部にはメニューとツールバー、下部には複数のタブとボタン、左にはワークースペースパネル、そして右にもパネルがあり部品ライブラリの内容が表示されています。

画面を構成しているメニューやツールバー、パネルは、マウスでドラッグする事によって画面上のどこにでも移動する事ができます。これについては実際に試してみるとその柔軟さが実感できます。

情報の表示や設定の為のパネルは数多く用意されており、重なって後ろに隠れているパネルはタイトルバーをクリックして全面に移動できます。また、画面右下の[ PANEL]ボタンを押すと用意されている全てのパネルがリストされ、この中から必要なパネルを選択して表示させる事ができます。

またタイトルバーの右端付近に検索窓があります。これはデザインデータを検索する為のものではなく、コマンドとプリファレンスの設定項目を検索する為のものです。この検索窓を使ってコマンドを検索し、その検索結果からコマンドを直接実行する事ができます。

コマンドの検索と実行

コマンドの検索と実行:検索窓に[save]と打ち込むと、保存の為の複数のコマンドが
リストされ、そのコマンドをクリックする事により処理を実行きます。


また、目的の設定項目が見つからない時にもこの検索窓で探し、ワンクリックで目的の設定ページに移動する事ができます。例えば、検索窓に[grid]と打ち込むとグリッドの設定項目を含むページがリストされます。この中から目的のページを選ぶと瞬時にそのページに移動する事ができます。

この統合プラットフォームはAltium Designerの顔として現れ、ユーザーはこの顔と向き合い対話しながらツールを利用します。はじめはその多彩さに戸惑う事も多いと思いますが、使い込むにつれ何一つとして無駄のない洗練されたものである事が分かってきます。直観的な操作ができますので、慣れるまでにそれほど時間はかからないはずです。

Altium Designer 統合プラットフォームの機能」のブログでは、ライセンス管理、エクステンションの管理、アップデートの管理など、これからAltium Designerをご利用される方向けにさらに詳細を解説していますので、ぜひご覧ください。

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