先日、幼い男の子を肩車しながらあやしている若い父親を見かけました。父親にしっかりと支えられた男の子は、父親の顔を別の角度から見ようとして体を横に動かそうとしています。愛くるしい男の子はようやく父親の顔を左側から覗きこむことができました。そして、父親の髪をもてあそんだかと思うと、また右側に体を戻したのです。
そんな微笑ましい瞬間を楽しく観察していましたが、それと同時に重要なことを思い出しました。男の子は父親の顔をなんとかして違う角度から見ようと、何度も視点を変えました。PCB設計者の私たちも同じように、設計をできるだけ多くの視点から確認したいと考えます。これまでは2DのCAD環境で作業するしかありませんでしたが、現在は3Dの設計環境が利用できるようになってきました。こうしたツールを使って設計を進めない手はないでしょう。
PCB設計を3D環境で進めることには多くの利点がある
3Dの利点と従来の2Dでの設計
私は、ディスプレイ装置を作っている会社でPCB設計者としてのキャリアをスタートさせました。当時はUNIXベースのCADシステムを使っていましたが、作業は2D環境に制限されていました。私が初めて手掛けた設計は、機構CADグループが3Dでレンダリングしてくれました。それは、ブロックの形状だけが表示されている単純なものでしたが、3Dで見る設計には目を見張りました。そんな風に設計を見たのは初めてのことでしたが、今でもその瞬間をはっきりと覚えています。3D環境での作業には、PCB設計者にとってたくさんの利点があります。その一部をご紹介しましょう。
3Dコンポーネントフットプリント: 3Dで表示された設計を初めて見たとき、装置のケースから大きな電解コンデンサーが飛び出していることに気付きました。これはDRCで検出されるはずのものでしたが、どういうわけかチェックをパスしていたのです。そのため、装置の後端が犬の尻尾のように垂れているのを見たときは本当に驚きました。現在のCADシステムでは、こうした問題を検出するためのDRCが標準的な機能になっています。3Dでの作業が可能な今であれば、コンポーネントの寸法についてのフィードバックもリアルタイムで入手できます。
レイヤー構造の可視化: 回路基板のレイヤー構造を3Dで正確に表示できるのは非常に有益です。画像を傾けたり、回転させたり、パンやズームを行ったりして、ビアスタックの状態や周辺の他のオブジェクトとの接続などを正確に確認できます。
3Dでの編集機能: デザインの3D表示は容易で、3Dモードではレイアウトの編集も可能です。回路基板のスタックアップの昇順や降順をインタラクティブに切り替えて、部品の移動、配線の押しのけ、別のレイヤでの配線を行うことができます。
MCADとECADの連携: 3D CADシステムでは、装置のケースなどの設計にメカニカルオブジェクトを追加することもできます。この機能を活用すれば、ケースに関連する3Dのコンポーネントや他のメカニカルオブジェクトを表示して、これらの要素を対象とする3Dクリアランスチェックを実行できます。
フレキシブル回路: 3D環境での作業のもう1つの利点は、フレキシブル回路の設計で利用できます。3D環境では、アセンブリが折り畳まれた状態で、完成したフレキシブル回路を表示することができます。つまり、使用時のフレキシブル設計の状態が3D CADシステムで表示されるため、当て推量をする必要がなくなります。これにより、最終的に折り畳まれた構造の設計で発生し得るアセンブリやクリアランスの問題を、製造前に特定できるようになります。3D CADシステムで問題を見つければ、基板を再設計して機構的な問題を解消する必要性を低減できるため、最終的にはコストの節約も実現します。
3D環境での作業は、設計ツールを最大限に活用することに役立つ
3D設計: 現在の設計要件に対応するための新しい基準
これまで、PCB設計者は2D環境で作業せざるを得ませんでした。これは長年にわたって通用してきましたが、現在のPCB設計は急速に進化しています。ウェアラブルデバイスやIoTなどの新しい技術が進展する中、設計業界は3D環境で作業する必要性に迫られています。設計をどこよりも先に市場に出すという競争の中では、複数の基板スピンを使って製造の問題を解消するなどというぜいたくは許されません。3D環境で基板を設計すれば、メカニカルクリアランスやフレキシブルアセンブリの詳細、コンポーネントのスペースの問題はすべて、製造前に解決できます。
父親の顔をもっとよく見ようとして視点を変えていた男の子と同じように、私たちも3Dを活用すれば設計をあらゆる視点から確認できます。回路基板設計の新しい方法はすぐ目の前に潜んでいます。後はこれを活用するだけなのです。Altium Designerなどの3D PCB設計ソフトウェアは、これを実践に移すための絶好の方法でしょう。
3Dが設計にどう役立つのかについて詳しい情報をお知りになりたい場合は、Altiumの3D設計環境の専門家にお問い合わせください。