単一ICのDCモータードライバーを実装しようとしていますか? 出発点としては上々です。Mark Harrisが、製造実績のあるこのオープンソースのプロジェクトで、回路図からPCBレイアウトまでの作業を進める方法を解説します。
https://github.com/issus/Small-HBridgeGitHubでプロジェクトをダウンロードし、内容を理解したり、ご自身の設計にこのプロジェクトを組み込んだりして、ご自由にお使いください。
この記事では、回路図作成からPCBレイアウトまでの、ドライバーICの実際の実装について説明しています。このプロジェクトは、ご自身の設計にコピーアンドペーストするのみの用途でしたら、GitHubにオープンソース ライセンスの下でリリースされていますので、そちらで入手してください。
ここに、駆動したい小型の高速モーターが2つあります。どちらも、負荷がかかると1Aの電流が流れ、工業用機械の30Vの電源で電流を流す必要があります。元の電子機器は加熱のため壊れ、今は使われていません。そこで新しい制御基板の開発が必要です。まずは、このプロジェクトのモーターについて説明しましょう。
各種の要件と最終的な回路基板で作業しなければならない限られた基板面積を考慮し、定格が2A/40VのAllegro A4954と、TSSOP-16にサーマルパッド が付いたパッケージを使用することにしました。価格も非常に手頃で、Allegro A4953などの単一モータードライバーとほぼ同額です。また、単一モーターのみ駆動する場合は、他の低価格の単一モータードライバーを使用できます。
今回の用途で単一ICドライバーを使用する主なメリットは、回路図の完成に必要な追加コンポーネントの数を減らせることです。必要な追加コンポーネントは、少数の抵抗、コンデンサー、3.3Vレギュレーターのみです。ただし、各モーター端子にもダイオードとコンデンサーを追加して、Hブリッジの損傷や電磁両立性認証の問題を引き起こすような過渡スパイクを減らしたいと考えています。
本来はデータベース ライブラリを使って作業しますが、この記事の目的に関して言えば、読者の皆様が作業できる移植性の高いソリューションを作成できません。このため、関連するpcblibファイルとschlibファイルをプロジェクトに追加し、フットプリントを回路図シンボルに含めて作業を開始しました。これは、ライブラリの代わりに汎用パッシブを配置していることを意味しますが、私はこの方法が好きではありません。汎用部品の配置は間違いにつながるので、Concord Proを使用してライブラリを管理するのが最適な状況ですが、読者の皆様全員を私のConcord Proチームに追加しなければ、私が作成したライブラリを誰も使用できません。したがって、調達可能な部品を配置するため、Manufacturer Part Searchパネルで必要な各コンポーネントを検索し、各回路図シンボルに [Add Supplier Link and Parameters To Part] オプションを適用します。これは、部品表を生成する場合やサプライヤーにコンポーネントを発注する場合も役に立ちます。
Altium Designerでは、サプライヤー リンクを追加できるので、後の作業が容易になります。
追加されたコンポーネントの管理は、各部品が有効で発注可能なコンポーネントであることを確認するために不可欠です。設計段階の終わりに、コンポーネントを調達できないことや、代替コンポーネントを使用するために再作業が必要であることが明らかになるより、配置時に各部品が有効であることを確認する方がはるかに簡単です。
すべての有効な調達可能なコンポーネント、および汎用パッシブを回路図に追加することから始めます。
コネクタ、電流検出抵抗、TVSダイオード、および指定されたメインICを使用して設計を開始しています。
また、汎用コンデンサー、抵抗、電位差計のシンボルも追加しています。これらのシンボルは、設計プロセスで必要に応じてコピーアンドペーストし、回路図の正しい場所に配置し、確定します。単純な設計で汎用部品を含む回路図をすばやくレイアウトする場合、同じコンポーネントの別のコピーを集めるために毎回ライブラリパネルに戻るよりも、シンボルを使った方がすばやく作業できます。<Shift>キーを押しながらシンボルをドラッグするとコピーを作成できます。これは、同じフットプリントの別の汎用コンポーネントを配置する最も簡単な方法です。
レイアウトしたすべての部品を接続して完全な回路図を作成します。
完成した回路図は極めて単純です。ドライバーICが完全に統合されているはずです。ドライバーICへの入力からマイクロコントローラーを保護するために、33Ωの抵抗をいくつか使用しています。これにより、ドライバーに問題が起きた場合、マイクロコントローラーに流れる電流が許容レベルに制限されます。100nFのコンデンサーとTVSダイオードをモーター出力に追加しました。これは、前述のように、モーターからのESDおよび過渡フライバック電圧を軽減するのに役立ちます。また、モーターの電流を必要に応じて設定できるよう、上側の支脈に可変抵抗付きの抵抗分圧器も追加しました。分圧器は、単純なリニア電圧レギュレーターによって駆動します。通常、27Vの降下での使用は望ましくありませんが、この場合、電流は十分に低くレギュレーターは過熱しません。
アノテーション前の、Allegro A4954 ICとそれに接続されたすべてのパッシブ。
最後に、回路図のレイアウトが完了したら、回路図にアノテーションを設定し、デジグネータを完成させました。個人的な好みで、回路設計の最後にこれを行います。常に、新しいコンポーネントを追加した直後にアノテーションを設定するよりも、よりまとまったデジグネータを指定できるからです。これにより、デジグネータに基づいてコンポーネントの回路図上の位置を把握できます。
ドライバーの周囲にまとまって配置されているすべての部品に
番号が近いデジグネータが設定されていることに注目してください。
回路図の各コンポーネントに実際のパーツを割り当てたので、回路図のコストの見積もりと大量生産ですべてのコンポーネントを調達できるかの検証に使用できるActiveBOMが、プロジェクトに用意できました。ActiveBOMがあると、異なる生産量での基板あたりのコストの迅速な見積もりが非常に簡単になります。この記事の執筆時点では、基板を1枚製造する場合の基板あたりのコンポーネントコストは7.99米ドル、1,000枚の基板では基板あたりわずか3.42米ドルまで下がります。予算の観点から見ると、これにより、予想される生産量で価格を抑えるために、回路図の代替オプションを検討する必要があるかどうかを判断できます。PCBの配線に時間を費やす前にこの判断が可能なので、生産性を大幅に向上できます。
他のPCBプロジェクトと同様に、このプロジェクトでも、最初のタスクは設計変更指示(ECO)を使用してPCBにコンポーネントを取り込むことです。
すべてのコンポーネントが追加された後のPCBレイアウト。
回路図データをPCBに移した後にやるべき作業がいくつかあります。まず、デジグネータによってPCBの基板面積が減らないよう、すべてのデジグネータを、Designatorsというメカニカルレイヤーに配置します。これは、PCB Filterパネルで、次のフィルターを使用して行うことができます:
IsDesignator AND OnLayer('Top Overlay')
これにより、すべてのデジグネータを選択し、プロパティウィンドウですばやく編集してレイヤーを変更できます。また、必要に応じて後でTrue Typeにしたりコンポーネントの中央に自動配置したりしてPCB図面の外観を調整できます。
次に、[Tools] メニューで [Cross Select Mode] をオンにする (または、<Shift>+<Ctrl>+<X>を押す) と、回路図内のコンポーネントの論理グループを選択できます。このような小規模で単純な回路図でも、回路基板上のコンポーネントをグループ化すると時間を節約できます。
回路図でドライバーICとそれをサポートするコンポーネントを選択し、PCBレイアウトに切り替えることで、新しく追加された部品群からそれらのコンポーネントを選び出しました。
回路図からコンポーネントを選択するとPCBレイアウトでコンポーネントを見つけて
1つずつ選択しようとするよりも時間を節約できます。
[Tools] ≫ [Component Placement] ≫ [Arrange Within Rectangle] (旧バージョンの [Utilities] ツールバーの [Alignment Tools] アイコンでも可) を選択して四角形を描くと、回路図で選択した部品をグループ化して配置できます。
これにより、可能な限り最適な方法で、個別にレイアウトする小さいコンポーネントブロックができます。より規模が大きく複雑なプロジェクトでは、各論理ブロックを別々にレイアウトすることで回路基板にすべてのコンポーネントを一度に配置して、そのブロックの最適な回転と位置を見つけられる上、基板面積を最も有効に使用するため、コンポーネントの配置にどのような犠牲を払うかを見極めることもできます。個人的には、このおかげで多くの時間を節約し、たいていの場合、一度に1つのコンポーネントからコンポーネント レイアウトを構築するよりも適切なレイアウトを得られます。
コンポーネント配置機能を使用すると回路図の論理ブロックを表すグループ内にコンポーネントを配置できます。
わずか数分で、比較的小さくまとまった、配線可能な基板ができあがるはずです。
配線できるよう論理的にまとめられてコンパクトに配置された最終的なコンポーネント。
3Dビューで基板を簡易チェックすると、基板は手でも簡単に組み立てられるように見えます。これは、少量部品の場合に行うべき重要なチェックです。
トラックが追加される前の基板の3D表示。
単純な回路図であることを考えると、この基板の配線は非常に簡単です。唯一注意すべき点は、モータードライバーのデータシートでは、電流検出抵抗からIC GNDに直接戻るGND経路にポリゴンカットアウトを作成して、このスターGNDを使用することが推奨されていることです。今回は、Top LayerとBottom Layerの基板全体にGNDポリゴンを追加し、ポリゴンカットアウト ツール ([Place] メニューの下) を使用して推奨のカットアウトを追加しました。
配線が済み、GNDポリゴンが追加されてポリゴンカットアウトが作成された後の基板。
電気的にはこの基板は完成しているように見えますが、3Dで表示したときの外観があまりよくありません。
トラックが追加された後の基板の3D表示。何かが足りないように見えます。
私は、個人的な用途の場合でも、きちんとした基板を作りたいと考えています。技術者として、私はすべての回路基板を芸術作品として見ています。技術者は、博物館の傑作と同じくらい多くの思想と配慮を基板に注ぎ込んでいるので、そのようにみなすべきです。
Top Overlay Layerのいくつかの領域と反転テキストを使用して、基板を少し使いやすくするためのスタイルとラベルを追加しました。
Top Overlayに追加された要素により基板の使い勝手と見栄えがよくなります。
基板のBottom Layerにも、同様の処理が施されます。ESDロゴ、基板のモデル/バージョン/レビジョンを識別するためのバーコード、品質検査担当者がイニシャルを追加できる領域、および製造と設置の日付を書き込む欄などが追加されます。
基板のBottom Layer
これにより、基板はすぐに、単純で地味な外観から、よりきちんとして完成された、機能的な外観に変わります。
単一ICのDCモータードライバーを実装しようとしている場合は、このプロジェクトが適切な出発点となるでしょう。GitHubでこのプロジェクトをダウンロードし、自由にお使いください。この回路図は、製造実績のある回路図とレイアウトに基づいています。ただし、設計が自分の要件を満たしていること、および回路図/ピンが正しいことを必ず確認してください。
次回は、PDN Analyzerでこの基板を検査し、HブリッジICと2つのモーターの電流要求に対してトレースサイズが適切かどうかを判定します。これまでにPDN Analyzerを使用したことがない読者の方にとっては、これは、回路基板の解析について、順を追って理解し、ツールの設定方法を学べる入門的なプロジェクトです。
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