クラウドへの接続はIoTの重要な機能です。
PCB設計者として私は、自分の仕事の分野が過去20年間に根本的に姿を変えたと感じています。1990年代半ばに社会人になった私の初期のプロジェクトは、コンピュータとコンピュータ周辺機器の2つの主要分野のどちらかに集中していました。もちろん奇妙なステレオや時計付きラジオもありましたが、90%の時間はデスクトップPCのマザーボードとそれに類するものの開発に取り組んでいました。つまり、日常の設計作業では、広大な基板面積を扱っていました。しかも、全て2層基板でした。今とはまったく異なっていました。幸いにも、それは長くは続きませんでした。
現代まで話を進めると、私はまだコンピューター分野のPCBを設計しています。ビッグベージュボックスはもはやゲームの名前ではなく、全てIoTに関するものです。これらの組み込みコンピューターを通じて、特にいわゆる「スマートホーム」で使われるガジェットやデバイスのまったく新しいカテゴリーが開拓されました。コーヒーメーカー、湯沸かし、冷蔵庫、照明、腕時計、さらには車まで、この21世紀の技術を取り入れています。クラウド制御、リモートアクセス、機械学習(仕事から戻ってきたときにエアコンがONになる)などの機能を統合することで、本当に未来のように感じることが実現しつつあります。もちろん、私たちPCB設計者や電気エンジニアにとって、それは、簡単なファジー論理制御トースターよりもはるかに驚くべきことです。
明らかに、IoTデバイスのPCBを開発することは真の難題です。例えば、空間が非常に重視されます。ほとんどのIoT製品は、きれいでコンパクトなものが好まれる消費者市場向けの小型家電、制御機器、ウェアラブル製品です。さらに、これらのデバイスの多くは、ハードウェアを考慮して設計されていません。むしろ、美しさが全てです。これは、ハードウェアのためには不規則な形の小さな空間しか使えないことを意味します。次に、性能の問題があります。プログラムを「ロードする」必要がある冷蔵庫や、YouTubeを表示させるのに多大な労力を必要とするスマートウォッチに大感激する人はいないでしょう。おそらくPCBには複数のICと少なくとも1つ(でなければ2つ)のSoCが搭載され、複雑な機能を全て処理します。最後に、信頼性を考慮する必要があります。これらのガジェットを購入する消費者は、「単に機能する」ことを期待します。これは、どんな設計を選択しても確固たる基盤が必要であることを意味します。以前のように「エラー」などの余地はありません。これを聞くと、設計者は不安になりますが、優秀な設計者の対処法に学ぶこともできます。
高性能を小さなパッケージに詰め込む必要があります。
個人的な経験談で恐縮ですが、私が思い出した単純な2層基板は、現在では通用しません。小さなフォームファクターでは、十分な性能を発揮できないからです。「高密度多層基板にすればよいのでは」とお考えかもしれません。確かにそれは技術的には正しいのですが、私の経験では、そのような基板は価値よりも問題の方が大きいものです。多くのIoT製品(特にウェアラブル)は持ち運びを前提としているため、これらの基板は簡単に破損します。それだけでなく、そのような基板は収めるのに平坦な空間を必要とします。もっとよい答えがここにあります。IoTデバイスの全ての設計者もそう思っているようです。フレキシブルPCBがIoTの空間に欠かせないものになり、以前とは違って非常に重視されるようになりました。ポリイミド層で作られたフレキシブルPCBは、リジッド回路基板と同じ仕様に対応できます。長期信頼性を犠牲にしなくとも幅広い用途に応用できるため、IoTアプリケーションで成功を収めています。さらに重要なことは、本質的に柔軟性が高いため、多くのIoT製品の小さくて特殊な形状にも簡単に収められることです。少なくないプロジェクトで、湾曲したフェースプレートとベースの背後の空間を利用できたことがあります。かさばるコネクタとリボンケーブルも、それほど使う必要はありませんでした。1つの共通設計を、さまざまなフォームファクターの複数のIoT製品に収めることもできます(私の上司はそのような設計が好みでした)。フレキシブルPCBとIoTはきわめて相性のよい組み合わせです。
最近まで、フレキシブルPCBの役割は大きくありませんでした。
写真は一般的なアプリケーションであるハードディスクドライブのモーターからメインボードへの接続です。
大小の非常に多くの企業がIoT市場の獲得を目指しているため、近い将来、多くの設計者がIoTプロジェクトに取り組んでいることでしょう。もちろん、私のように懐疑的な設計者なら、フレキシブルPCBを設計するのは不安かもしれません。IoTプロジェクトに関連する既存の課題を考慮すると、物事をより複雑にする必要はないとお思いのことでしょう。しかし、まさに「鶏と卵の問題」のように、IoT市場の拡大がフレキシブルPCBの性能を向上させ、同時にフレキシブルPCBがIoT市場を拡大しました。約8年前、あるベンダーに会った際、フレキシブルPCBのプロトタイプを見たことを覚えています。明らかに非常にシンプルでした。今日では、SMT、マイクロビア、多層基板、BGA ICなどの最新技術が容易に適用できます。スケールメリットの向上により、部品メーカーはこれらの機能を安価に提供できます。同じ予算でも、フレキシブルPCB設計の選択肢の範囲は劇的に拡大しました。実際、費用対効果分析では、リジッドPCBの方が優れているとは一概には言えないようになりました。フレキシブルPCBも強くなり、結果として信頼性が向上しています。しかし、変わっていないものが1つあります。それは設計プロセス自体です。PCB CAD環境のワークフローは非常に似通ったものになります。トレースのレイアウト、コンポーネントの選択と配置、レイヤーの追加などです。それに加えて、最近の多くの設計パッケージはフレキシブル設計を扱うように作られており、寸法と形状を選択するための情報を設計者に提供します。フレキシブルPCBに、正直なところ完全には納得していないとしても、PCB設計の状況はIoTを生み出すように変化し続けます。現在のフレキシブルPCBは十分ではないとしても、将来はすばらしいものになることでしょう。
同じ設計者仲間として、私がフレキシブルPCBに取り組んでいるのと同じくらい全ての設計者が熱心であること願っています。技術と設計ツールはどちらも大幅に改善されています。IoTの世界に飛び込む前に、設計者が自由に使いこなせるツールやリソースを用意することをお勧めします。フレキシブルPCBは確かに変わりましたが、PCB設計パッケージはどうでしょうか? それは最新かつ最高のものに対応できるでしょうか? アルティウムは、ワークフローを最適化しながらニーズに合わせて拡張できる複数のソリューションを提供しています。アルティウムのプロ用PCB設計パッケージは、IoT製品を成功させる繊細な課題に対処できるように構築されています。フレキシブルPCB設計、包括的なテストツール、直感的なインターフェースをサポートするAltiumのソフトウェアは、次期IoTプロジェクトのための信頼できる基盤です。