PCB設計者は多くの場合、完璧な設計とコスト削減との間で適切なバランスを選択するという困難な課題に直面しています。MicroSDのようなデータ保存メディアを扱う設計では、「動作中挿入」や「突入電流」のような単純な概念を見落としたために、試作が不完全で高価になる可能性があります。
私は、ハードウェア設計を単純に保つことを美学にしてます。設計する上で本質的な必要性がないコンポーネントはすぐに取り除くことにしています。残念ながら、多くの失敗の結果、このように設計を単純化することにより、かえって問題が複雑化することもあるという教訓を得ました。10年前に、SDインターフェイスを使用するプロジェクトに取り組んだことがあります。当時はSDカードというのはよく知られていないコンポーネントで、技術資料もほとんど存在しませんでした。
突入電流を見落とさない
MicroSDやSDカードのピン配列は、一見複雑ではないように見えます。十分な経験のないエンジニアでも、各ピンの機能を簡単に判別できるでしょう。一般的なMicroSDは3.3Vにおいて最大100mAを消費するため、3.3V電源に接続すれば問題はないと、私も考えていました。しかし、自分が設計した実用試作にSDカードを再挿入したときに問題が発生しました。これまでの多くのエンジニアと同じように私も、SDインターフェイス用の回路を設計するとき、重要な概念を見落としていました。すなわち、突入電流を考慮に入れていなかったのです。そのため、私たちのマイクロコントローラはSDカードを挿入するごとにリセットされる結果となりました。
この結果から、現在にまで通用する教訓が導き出されます。SDカードは、フォームファクターの小型化されたMicroSDカードと電気的特性はほぼ同じです。すなわち、私が10年前に犯した過ちは、今日のPCB設計でも同じように発生するということです。
コンデンサーを使用して問題を回避できます。
それでは、MicroSDカード用に設計したボードでこの過ちを犯してしまった場合にはどうすべきでしょうか?ほとんどのMicroSDコネクターにはカード検出ピンが搭載されており、マイクロコントローラーはこのピンを使用してMicroSDカードの存在を検出できます。システムは、MicroSDが正しく挿入されているときにのみ電源をオンにし、MicroSDが取り外されたときに電源をオフにします。問題を素早く解決するには、MicroSDカードの電源ピンの近くにデカップリングコンデンサーを追加します。これによって、回路に必要な安定性を得ることができます。この解決策は、MicroSD挿入時の突入電流の問題を解決するのに有効なことが判明しました。
完成したPCB上にコンデンサーを人手でハンダ付けするというのは、洗練された解決策ではないのは事実ですが、急いで問題を解決しなければならないときに可能な唯一の方法です。ここで考慮すべき最も重要な要素は、突入電流を低減し、供給電圧の不安定化を防ぐために十分な電荷を保持できるコンデンサーの選択です。
デカップリングコンデンサーの最適な値は、合計負荷容量と、MicroSDカードのVddとVssとの間の容量を超えている必要があります。ほとんどの場合、45uFを超える値が適切です。ここで重要なのは、コンデンサーを可能な限りMicroSDの近くに配置することです。場合によっては、PCB試作でこれを行うのが不可能なため、基板の修正が必要なこともあります。
問題は、単一のコンデンサーを使用する単純なソリューションを使い続けるか、より洗練された手法に変更すべきかです。メモリメディアに関する私の過去の経験から、MicroSDカードの電気的特性はブランドによって異なるため、今後行う設計については、特定の特性を想定しないことをお勧めします。
洗練された手法は、設計開始時点からMOSFETを使用することです
MicroSDカードによる内部的な供給電圧の乱動を防止する、デカップリングコンデンサー以外の最良の方法は、電気的スイッチを使用して突入電流を制限することです。より具体的に言うと、FDN340P MOSFETを使用して、MicroSDの電源をコントロールします。この方法では、電子回路とファームウェアロジックとの連携により、MicroSDの電源が効率的に管理されます。
MOSFETを使用すると、電圧の増大率を制限し、突入電流の問題を回避するため役立ちます。アプリケーションに応じて、許容される電圧スルーレートを持つMOSFETを選択します。このスルーレートにより、電圧の急激な変動を抑えることができます。また、下流方向の最大突入電流も制限できます。この両方により、MicroSDの正しい動作を維持できます。
デカップリングコンデンサーを使用して手早く修正を行うか、MOSFETによるMicroSDの突入電流管理を採用するかは設計者の選択です。ただし、私が過去の設計で行ったのと同じ過ちをしてしまった場合、CircuitStudioを使用して簡単に修正可能です。
デカップリングコンデンサーについてのご質問は、Altiumの専門家にお問い合わせください。