Altium Designerでブラインドビアとベリードビアを使用する

投稿日 2020/04/27, 月曜日
更新日 2020/10/6, 火曜日

Altium Designerのスクリーンショット: 3D表示されたブラインドビアとベリードビア

 

5ポンド用のバッグに10ポンドの荷物は入らない――この古いことわざは、PCB設計の配線トレースに特にあてはまります。残念ながら最近はこのような要求がノルマになっているように見えます。近頃はだれもが設計の密度を上げることやフォームファクタを削減すること、あるいはその両方を望んでいますが、これに対応するための方法の1つが、配線でブラインドビアとベリードビアを使用することです。これらのビアを使うと、スルーホールビアが接続されていないレイヤーでスルーホールビアが占めていたはずのスペースを利用できるため、配線方法の選択肢が広がります。

この設計技術が開発されてから、かなりの時間がたっているものの、まだ使用したことがないPCB設計者は大勢います。これらのビアを使い始めたとしても、他のビアに戻りたくなくなる恐れがあるため注意が必要です。また、製造コストも上がってしまうため、使用にあたっては事前の計画も必要です。ブラインドビアとベリードビアの使い方をよくご存じでない方のために、Altium Designerでのこれらのビアの使い方を簡単に説明します。

 

Altium Designerでビアを使用する

製造、実装を通して、レイアウトを正確かつ確実なものにする必要があります。選択した材料とメッキ、使用予定の半田、コンポーネントと試作品の入手した見積もり、基板のその他の要件も考慮します。Altium Designerのブラインドビアとベリードビアは、レイヤースタック全体ではなく特定のレイヤーを接続するように設定される以外は通常のビアと同じです。そのため、ブラインドビアとベリードビアの設定および使用方法を理解するには、まず通常のビアの使い方を理解する必要があります。 

Altium Designerのパッドスタックとビアは、属性を定義することで作成される設計オブジェクトです。パッドスタックとビアの作成を完了するには、それらのサイズ、穴のサイズ、許容差、その他の属性を指定します。これらは、テンプレートから作成することも、その場でご自身で定義することも可能です。下の画像は、PCB設定メニューのビアのデフォルト設定を示しています。

 

Altium Designerのスクリーンショット: ブラインドビアとベリードビアのデフォルトの設定

Altium Designerでのデフォルトのビア設定

 

上図に、デフォルトビアに使用したテンプレート、穴情報、ビアのサイズ情報を示します。また、Altium Designerでビアの詳細をコントロールするように以下の基準に従って設定できます。

  1. [Simple]: 1つのサイズですべてのレイヤーに対応

  2. [Top-Middle-Bottom]: トップ、ミドル、ボトムのサイズを個別に指定できます。

  3. [Full Stack]: 全レイヤーのサイズを個別に設定できます。

 

ネットに関連付けないでビアを配置した場合、Altium Designerはデフォルトのビアを設計に使用します(上図参照)。特定のネット、ネットクラス、その他の基準で特定のビアを使うように設定することもできます。その場合、以下の [Design] » [Rules] プルダウンメニューでビアの配線ルールを設定します(下図参照)。

 

Altium Designerのスクリーンショット: ブラインドビアとベリードビアのルールの優先度

Altium Designerでビアのルールの優先度を設定する

 

上の画像では、[Routing Via Style] ルールカテゴリーに2つの異なるルールが含まれています。これらのルールにはすでにビアの属性が割り当てられており、優先度も変更できます(上図参照)。作成できるルールの数に制限はなく、必要に応じて優先度を設定できます。

ルールでビアのサイズを設定する方法は2つあります。第1の方法は下の画像の上部に示すように、[Constraints] の項目で [Min/Max Preferred]を選択することです。このように、ルールを設定しながらビアのサイズをその場で定義できます。

 

Altium Designerのスクリーンショット: ブラインドビアとベリードビアのビアルールの制約

サイズの値、またはテンプレートを使って、ビアのサイズを指定する

 

第2の方法は、上の画像の下半分に示すように [Template preferred] にしたがってビアを選択することです。どちらの方法を選ぶかは、要求に合わせて決定します。

必要に応じて異なる基準にしたがってデザインルールを割り当てることもできます。配線ビアの場合、ネットクラスに関連付けてルールを設定する場合もあります。こうするとネットクラスに対して特定のサイズのビアを指定できるため、ネットに応じて使用するビアの種類を制御できます。

以下は、ビアの配線ルールを設定中の画像です。[Where The Object Matches] カテゴリで [Net Class] が選択されています。この設計ではすでに ネットクラスが定義済みであり、使用可能なクラスをドロップダウンメニューで確認できます。

 

Altium Designerのスクリーンショット: Altiumのブラインドビアとベリードビアのルールの割り当て 

Altium Designerでビアのルールをネットクラスに割り当てる

 

配線を行う際は、ネットクラスに対して定義した配線ルールによって使用されるビアが決定されますが、配線中にその場でビアを変更することもできます。ビアを基板上に配置した後、そのビアを右クリックして [Properties] を選択すると、ビアのプロパティが表示されます。下の画像のように、ビアの [Properties] パネルでサイズ、形状、穴の大きさ、その他のパラメーターを変更できます。

 

Altium Designerのスクリーンショット: ブラインドビアとベリードビアのプロパティ

ビアの [Properties] パネル

 

ブラインドビアとベリードビアのためにAltium Designerを設定する

Altium Designerでの標準的なスルーホールビアの使い方について分かったところで、ブラインドビアとベリードビアを使う上で必要なものについて詳しくご説明します。ブラインドビアとベリードビアは標準的なビアと似ていますが、特定のレイヤーの接続に制約されるという点が異なります。下の画像の矢印1で示すように、ブラインドビアは表面レイヤーから始まり、基板のレイヤースタックの途中で終わるため、ブラインドビアはこれらの特定のレイヤーで開始および終了する必要があります。

 

Altium Designerのブラインドビアとベリードビアの回路基板レイヤースタックの断面図

PCB内のビアの断面図

 

同様に、ベリードビアも特定のレイヤーで開始および終了しますが、上の画像の矢印2に示すようにどちらの表面レイヤーにも貫通しません。矢印3で示す通常のスルーホールビアと比較すると、これらの違いがわかりやすいでしょう。

ブラインドビアやベリードビアのスタート、ストップレイヤーを指定するには、Altium Designerのドリルペア マネージャーを使用します。ドリルペアを追加すると、使用するブラインドビア、またはベリードビア、それぞれのスタートレイヤーとストップレイヤーがAltium Designerに指示されます。下図の [Drill-Pair Manager] には、[Design] プルダウンメニューの [Layer Stack Manager] から、または選択したビアの [Properties] パネルから直接アクセスできます。

 

Altium Designerのブラインドビアとベリードビアのドリルペア マネージャー

Altium Designerのドリルペア マネージャー

 

ご覧のように、ドリルペア マネージャーはさまざまなブラインドビアとベリードビアで設定できます。ブラインドビアには、トップレイヤーから最初の内層(MidLayer1)までをつなぐものと、ボトム層で使用するものがあります。同じくベリードビアには、MidLayer1からMidLayer6までをつなぐものと、MidLayer3とMidLayer4をつなぐものがあります。ドリルペアを設定して [Drill-Pair Manager] ダイアログを閉じると、新しいドリルペアの設定が自動的にAltium Designerに反映されます。

 

Altium Designerでブラインドビアとベリードビアを使用する

ブラインドビアとベリードビアを使用する準備が整った後は、設定したネットクラスが大いに役立ちます。配線の密度と目的に応じて、ブラインドビアとベリードビアの特定のネットを分類する場合がありますが、ブラインドビア、またはベリードビアを使用する特定のレイヤー上の配線については、ネットクラスもビアに関するルールの優先度も簡単に設定できます。

配線時には「*」キーを使ってビアを開始し、上のレイヤーから順にクリックを繰り返してビアを配置します。また、CtrlキーとShiftキーを押しながらマウスのホイールを回転をさせても、各レイヤーを上下に移動できます。

ビアを開始するレイヤーに応じて、ブラインドビアとベリードビアのどちらが使用されるかが決まります。ブラインドビア、またはベリードビアで接続されるレイヤーが意図したものでない場合、[Properties] パネルでビアのドリルペアを別のペアに変更します。ビアが開始および終了するレイヤーが簡単に見分けることができるように、Altium Designerはブラインドビアとベリードビアを2色表示します。

 

Altium Designerのブラインドビアとベリードビアでのビアの色の説明

ブラインドビアとベリードビアの色で、スタートレイヤーとストップレイヤーを識別できます

 

上の画像で、左側のスルーホールビアは中心が単色です。中央のビアはベリードビアであり、黄色のレイヤー(MidLayer1)で開始し紫のレイヤー(MidLayer6)で終了しています。右側のビアはブラインドビアであり、青のレイヤー(TopLayer)で開始し黄色のレイヤー(MidLayer1)で終了しています。

他のビアと同様に、配置したブラインドビアやベリードビアは編集することもドラッグして移動することもできます。下の画像のように、マウスで操作するだけでも簡単に移動できます。

 

Altium Designerのブラインドビアとベリードビアの編集 

Altium Designerでマウスを使ってビアを移動する

 

PCB設計の配線では、ブラインドビアとベリードビアが威力を発揮します。これらのビアを使用することで、これまでにない配線方法を使ったり、より高い配線密度に対応したりできるようになります。Altium Designerの 性能と機能を使うと、ブラインドビアとベリードビアを簡単に活用できます。

豊富な機能を備えた基板設計CADであるAltium Designer は、今回ご紹介したブラインドビアとベリードビアを含むインタラクティブ配線に対応しています。PCB設計の配線で活用できるAltium Designerの機能の詳細については、 アルティウムのエキスパートにお問い合わせください。

 

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