自動車レーダーや5G用途の高周波回路向けPCB設計ガイドライン
投稿日 2017/05/19, 金曜日
更新日 2024/07/1, 月曜日
今朝、通りを歩いていて、非常に奇妙な光景を見ました。長くもつれた磁気VHSテープが、風に運ばれ、道を転がっていたのです。私は、ビデオレンタル店や巻き戻し機といった素朴な時代に連れ戻されました。もし、あの巻き戻し機を速いと思っていたならば、今日の電子回路の大躍進には、目が回るでしょう。基板設計における最新の進化の1つは、5Gネットワークおよび先進運転支援システム(ADAS)対応自動車という、2つの新しいテクノロジーによって促されています。これらのテクノロジーは両方とも、基板設計者によって長い間、恐れられてきた、極高周波(EHF)帯域を使用します。自分の基板が、ベータマックスや大型ラジカセと同じ運命をたどらないよう、高周波の未来に備えるのがよいでしょう。
これとお別れできてよかった
RFやマイクロ波の周波数が十分でないからといって、EHF帯域に移ろうとしているのは、なぜでしょう? 5GとADASレーダーという2つの進歩が、より高い周波数への移行を迫っているからです。
- 5G - 電気通信企業は、今日の4G/LTEの速度や待ち時間から、より速く明るい未来の5Gへと移行しようとしています。現在の移動体通信ネットワークでは、ダウンロード速度は、数十メガビット/秒、待ち時間は約70ミリ秒>です。5Gでは大きく飛躍し、ダウンロードは最大10Gbps、待ち時間は10ミリ秒未満になります。この全てが可能なのは、5GがEHF帯域で動作するからです。周波数帯域幅が広いほど、待ち時間は短く、周波数が高いほど、データ転送速度は速くなります。業界では、5Gの実装開始を2018年頃と予想しています。その時には、ミリメートル(mm)波長信号を扱う準備ができている必要があります。
- ADASレーダー - ADAS対応車向けレーダーは、開発済みの技術です。衝突検出レーダーは、30GHz未満で動作していましたが、最近、規格が77GHzまで上がりました。メーカーが製造するADAS機能付き自動車が増える>につれて、通りを走るレーダーシステムが増えると予想できます。何らかの種類の自動車レーダーを扱う基板を設計したい場合、EHF信号を扱う準備をしておくべきです。
これらの技術が両方とも成長するにつれて、その動作周波数を扱う方法について、ますます知る必要ができてきます。急速に変わる基板設計環境に対処するため、ここでは、材料と設計のガイドラインを示します。
実は、高周波基板に使用する材料を選ぶ>方法について、記事を書いたばかりです。しかし、話題にしている周波数は、通常より少し高いので、いくつかのポイントを繰り返します。
- 比誘電率(Dk)が非常に低い - しばしば、私たちエンジニアは、何かがうまく行くと、それをずっと使い続けます。おそらく、高周波基板をFR4から1レベル上げれば、EHFは大丈夫と考えているでしょう。ミリ波では、Dkが可能な限り低い材料を使用する必要があります。Dk損失は、周波数に比例して増加します。つまり、Dkが、そこそこ低いだけでは、もはや通用しません。
- ソルダーマスクが非常に小さい - 基板の吸湿性についてサプライヤーに尋ねるかもしれませんが、ソルダーマスクについては尋ねないでしょう。ほとんどのソルダーマスクは吸湿性が高く、Dkが70の水を多く吸収します。水分が多いソルダーマスクによって、ミリ波回路の損失が大きくなります。これらの基板で使用するソルダーマスクは、できるだけ少なくするべきです。
- 銅箔が非常に滑らか - これらの基板では、銅箔は、できるだけ滑らかであることが必要です。これらの周波数の電流では、皮膜の深さが非常に浅くなります。非常に浅いため、時には、表面がデコボコの山や谷のようになってしまいます。銅箔が滑らかでないと、電流の経路が長くなり、抵抗損失が大きくなります。滑らかな銅箔を使ってください。
ADAS自動車レーダーでは、新しい設計テクニックの学習が必要となります。
材料への配慮とともに、形状や他の物理的仕様についても考える必要があります。考えるべき2つの重要な点は、積層の厚さと伝送線路の特性です。
- 積層の厚さ - 適切な種類の積層だけでなく、適切な積層の厚さも選択する必要があります。通常、積層の厚さは、最高動作周波数の¼ ~ ⅛の波長あたりにします。積層が厚すぎると、自身の波を共振させ、伝播することさえあります。積層の厚さは、導体の幅に影響する場合があります。それを判断に含めてください。
- 伝送線路の特性 - 伝送線路については、マイクロストリップ、ストリップライン、接地共面導波路(GCPW)のうち、どのタイプの導体を希望するか決める必要があります。おそらく、マイクロストリップが、最も一般的でしょうが、30GHzを超えると、放射損失やスプリアスモード伝搬に問題があります。GCPWは、優れた選択肢ですが、マイクロストリップやストリップラインよりも導体損失が大きくなります。ストリップラインは優れていますが、製造が難しくコストが増える場合があります。更に、信号反射を最小にして、ストリップラインを外側のレイヤーに接続するために、マイクロビアを使用する必要があります。マイクロビアは製造が難しいので、このオプションを選択する場合には、製造業者と協力して、不具合を減らしてください。
私たち技術オタクは皆、議論するのが好きです。最初にベータマックス対VHS、次にブルーレイ対HD DVD、Firewire対USBなどが、ありました。私たちにとって不運なことに、次世代基板で高周波に異議を唱えることはできません。データ転送速度の上昇や、5GとADAS対応車などの変わりつつある技術は、周波数も上げつつあります。今や、私たちは、それに対処する方法を学ぶしかないのです。これらの新しい高周波設計に、どの基板材料を使用するか、注意が必要です。回路の物理的特性にも注意しておく必要があります。
時に未来は少し不気味な場合もありますが、幸い一人で直面する必要はありません。優れた基板設計CAD(Altium Designerなど)が、将来のテクニックをマスターするのに役立ちます。Altium Designerには、幅広い高度なツールが付属し、エンジニアが簡単に設計で活用できます。
EHF回路設計についてのご質問は、アルティウムのエキスパートにお問い合わせください。