以前、私が持っていた屋外センサーシステムのカスタムPCBは、毎日夜明けに2時間、データの記録を停止したものでした。これは、基板がその日動作する前に「美容のための十分な睡眠」を必要としたためではありません。実際には、センサーボックスに朝露がたまり、基板を誤動作させていたのです。もちろん、現場に配置した際、私たちのPCBが湿気にさらされるとは思い付きませんでした。これはよい状況ではないように思われますが、回路がショートせず、一旦乾燥するとシステムが正常動作に戻ったのは幸運でした。
このように幸運なことはまれですが、このことで湿気が、PCBの誤動作の非常に一般的な原因であることが分かりました。結露が誤動作を引き起こす恐れがあることが分かれば、以下の複数の方法でPCBを保護できます。
基板を乾燥状態に保つ - プラスチックケースに入れます。
PCBを筐体に収納する
湿気管理のもっとも単純な解決策はPCBを箱の中に入れることです。筐体は、PCB設計に対する変化を最小限に抑え、しかも比較的安価です。試作用には、シリコーンで密封した食品保存用容器でもよいかもしれません(プロによるアドバイス: きれいな食品保存用密封容器のみ。ポテトチップスと電子部品は一緒にしないこと)。
ほとんどあらゆるサイズの、各種密封方式の既製の箱またはケースを購入できます。
さらに進んで、自分でケースを設計する場合、側壁に結露しても水滴がPCBから離れて流れるように丸みを帯びた側面を使うことを考慮します。部品に触れないで溝内に収まるように十分な余裕をもって基板を設計する必要があります。
箱内の湿気を吸収するため乾燥剤(靴の箱や食品の袋に入っている「食べられません」と表示されたパックのことです)を入れることもできます。
電子回路は結局パッケージに入れる必要があるため、多くの場合、密封容器は簡単な解決策です。しかし、場合によってはそれだけでは不十分です。以下の場合、恐らく追加の保護策をお探しのはずです。
浸水で損傷したPCB。注意しないとこうなる恐れがあります。
絶縁保護コーティングは、PCB保護の最も一般的な方法です。絶縁保護コーティングには複数の種類がありますが、通常安価に塗布でき、量産にも対応できます。
コーティング材を選ぶ前に、湿気に加えて何か他のものに対して保護する必要があるかどうかを確認します。私たちのシステムは屋外(時には農地の近く)に配置したため、温度、悪天候、筐体(定期的に開閉する必要がありました)に入る恐れがある農薬を心配しました。あるシステムにはキノコが生えてきて驚いたこともありました。その際は、特に特殊な方法で基板を修正する必要がありました。
コーティング材を選択する場合、以下の特性を考慮する必要があります。
●耐湿性:
●耐薬品性:
●温度レンジ:
●誘電特性: RF
●塗布のしやすさ:
●柔軟性:
●再加工:
基板に再加工を行うことは避けたいものです。
最も一般的なコーティング材を以下に示します。
●シリコーン:
●ウレタン:
●ワニス:
●アクリル:
Miller-Stephenson社、ACC Silicones社、ElectroLube社、HumiSeal社の製品を調べることで、選択肢の概要をよく理解できます。
また、全体をコーティングする前に、コーティングしてはいけない部品を全て確実に隠すようにします。
完全な保護が要求される場合は、ポッティングを検討することになります。ポッティングとは、基板全体を保護材料(通常エポキシまたはシリコーン)に埋め込むことです。
通常、ポッティングは部品レベルで行われます。しかし、海中などの電気的に厳しい環境のPCBは、基板全体を保護する必要がある場合があります。生産規模を拡大する場合、これを行う製造業者も必要です。材料中の隙間を防止するのは容易ではありません。これらが発生すると、基板を保護するために行った全作業をやり直すことになります。
温度要件は重視すべき事柄です。一旦基板全体をエポキシに埋め込むと、温度変化による圧縮と引っ張りがはんだ接続とパッケージ化された部品を変形させる恐れがあります。このひずみがクラックを引き起こすと問題です。損傷した基板を再加工するのは本当に困難なためです。Epic Resins社、Master Bond社等は、これらの種類の問題を回避するのに役立つ高熱伝導率、低熱膨張係数の材料の選択肢を提供しています。
生産性を考慮して設計する場合、基板の保護は、部品の選択と同様に重要です。さもなければ私のように、基板が日光にさらされて正常動作に戻るまでの間、手動計測を行うために夜明けに沼地を重い足取りで進むことになってしまいます。
部品の仕様を記録するために、部品のピッチや温度ディレーティングを記載した大量のスプレッドシートを作成していました。大変な労力です。それを最新の状態に保つことは、夕暮れ時に虫がたくさんいる湿地から故障したPCBを回収して来るのとほとんど同じくらい大変です。うるさい蚊を叩き落したと思ったらすぐ別の蚊が刺しに来ます。痛みを伴わない解決方法の1つは、Altium Designerなどのプロ用PCB設計ソフトウェアを使うことです。Altium Designerを使うと、お使いの部品の仕様をデザインルールに組み込むことができます。さらに、Altium DesignerのアドオンであるVaultは、部品の仕様を記録し、部品が特定のコーティングまたはエポキシにふさわしいかどうかを検証するのに役立ちます。Altium Designerは設計した筐体の3Dクリアランスもチェックできます。これらのツールを使うことで、PCBを正しく簡単に設計できます。もう重い足取りで歩く必要はありません。
PCB設計ソフトウェアの機能の詳細については、Altiumのエキスパートにお問い合わせください。