何年も前、筆者は既存の基板からコピーしたデザインを扱っていましたが、問題が1つありました。レイアウト上のいくつかの回路が、技術者が作成した回路図の回路と一致しませんでした。これによって多くの混乱が生じました。最終的には、設計が承認されて製造部門に送られた後で基板に加えられた編集が問題だったことが判明しました。実装バリアントを作成したことで、回路図との同期が失われたと同時に、基板に不用意な変更が行われたのです。手作業で実装バリアントを管理しようとした場合、このような問題が忍び寄ってくる可能性があります。これにより、設計が遅れたり、さらに悪いことには、発覚していないエラーのため不良基板が製造されるかもしれません。
同じ基板を、複数用途のため、実装時に異なる構成にできるよう回路基板を設計することは一般的です。これらの異なる構成は実装バリアントとして知られています。例えば、異なる電圧で動作させることができるよう電源供給を設計するケースがあります。どの部品を使用するか、使用しないか、あるいは変更するかを変えることで、実装時に異なるバージョンの電源供給基板を作成する方法が決まります。
実装バリアント用の回路基板を設計する場合、金属の電気回路構成要素(パッド、トレース、領域フィルなど)が、提案された全ての構成で機能するようレイアウトされることが重要です。このように、異なる構成が全て、未加工の同一基板設計から作成可能です。これにより、設計者の作業負荷を減らすだけでなく、基板製造と在庫の費用を減らすことができます。
各PCB実装バリアントにはドキュメントが必要です
手作業による実装バリアントの作成とドキュメント化
従来、PCB設計者は、複数のバリアントを扱う場合、各基板の実装構成に対応するため、別々のデザイン データベースを作成する必要がありました。これは、各実装に専用のドキュメントが必要だからです。ただし、この方法でも設計エラーが生じる可能性がありました。
各デザイン データベースは、未加工の基板設計を含んでいるので、全てのバリアント データベースにコピーされます。未加工の基板設計のマスターコピーを1つ持つことは優れた設計慣習ですが、そのマスターコピーが各バリアントのコピーに含まれる場合は問題が生じる可能性があります。これは、たとえ偶然でも、未加工の設計がいずれかのバリアントコピーで変更された場合、未加工の基板設計の異なるコピーが作成されることになります。こうなると、どれが正しいマスターコピーか分らなくなる可能性があります。未加工の基板が全ての異なる実装バリアントの基本デザインである場合、これは問題です。何年も前に経験済みですが、変更の結果、回路図とのリンクが切断された場合、状況はさらに悪化します。
最終的には、これらの潜在的な問題と、同じデザイン データベースでの複数コピーの管理は、作業負荷を増やします。未加工の基板が意図的に変更されるたびに、各バリアント データベースに編集内容をコピーする必要があります。これは、時間のかかる作業であり、データベース間でデザインの一貫性を確実に保つために高い集中力が求められます。
PCB実装バリアントにより、同じ基板を異なる用途のために構成できます。
バリアント管理ツールによるプロセスの簡素化
CADアプリケーションのバリアント管理ツールは、1つの基本データベース内で全ての作業を行えるようにすることで、異なる実装バリアントの作成と管理のプロセスを簡素化します。バリアントを作成する際、特定部品を使用する、使用しない、あるいは値を変更するなどを指定することができます。また、バリアント管理ツールにより、実装図面などの出力や部品表を変更して、変更された部品の状態を反映できます。
さらに、複数の実装バリアントをメインのデザイン データベース内に作成することができます。これにより、複数データベースの管理やそれに伴って発生するエラーの問題を完全に解消できます。最も重要なことは、この機能によって作業負荷を抑えられるということです。
複数の実装構成の作成に携わる設計者にとって、CADアプリケーション内でのバリアント管理ツールの使用は、重要な戦力になるでしょう。バリアント管理ツールを使用すると、エラーの可能性と設計者の作業負荷を軽減して、担当している設計の全体像を把握し、全てのバリアントを同一データベースに保存することができます。プロフェッショナル向けの設計ソフトウェアAltium Designer 17が、実装バリアントの管理作業を始めるお手伝いをします。
実装バリアントに関するご質問は、Altiumのエキスパートにお問い合わせください。