ブラジルのヒューマノイドロボット サッカーチーム「ITAndroids」のAzevedo氏

Judy Warner
|  投稿日 December 12, 2017  |  更新日 November 5, 2020

2017 ITAndroidsチーム

Judy Warner: ITAndroidsチームはいつ、どのように結成されたのですか?

 

Arthur Azevedo: ITAndroidsチームは2005年にJackson Matsuraによって結成されました。当時、彼は修士課程の学生でした。現在は、電子工学科の教授です。大学生2人と、もう1人の修士課程の学生がチームに参加しました。彼らはその年のLatin America RoboCup(LARC)2Dサッカーシミュレーションで勝利しました。彼らはすぐにラテンアメリカの上位チームのひとつになり、2006年から2008年のRoboCupで優勝しました。その後チームは2つに分かれました。

 

ITAndroidsチームは2011に再結成し、2012年のRobocupの2Dサッカーシミュレーションリーグに参戦することができました。チームの順位は10位でした。同じ年、2012 LARCでチームは3つのトロフィーを獲得、つまり2Dサッカーシミュレーションで優勝、3Dサッカーシミュレーションで優勝、ヒューマノイドロボットレース(HRR)で3位を獲得しました。またこの年、チームは新しいメンバーの募集とトレーニングを開始し、その後急成長を遂げました。ITAndroidsはLARCの2Dサッカーシミュレーションで4回優勝しました。

 

2012年、チームは超小型リーグ専用ハードウェアの設計に着手し、2017年に、2017 Robocupのキッズサイズヒューマノイドリーグへの参加資格を得ました。この年、私たちは、商用ロボット(Darwin-OP2)と、チーム内で設計および製作したChapeというロボットでLARC HRRに参加し、ここでも1位および2位の成績を収めました。私たちは、小型リーグに参加するためのロボットの設計も開始しており、2018 LARCにはチームメンバー全員が参加できる予定です。

Chapeの内部のしくみAltium Designerソフトウェアを使ってチームが設計した回路基板

Warner: 大成功を収めた長い旅だったようですね!チームには何人の学生が参加しているのですか? また電気関連のサブチームメンバーと、回路基板設計担当者は、何人いるのですか?

 

Azevedo: チームにはおよそ60名の学生が所属しており、さまざまなロボットプロジェクトに分かれています。3種類の物理的なロボット(超小型、小型、ヒューマノイド)があるので、各タイプのロボットに固有の設計を専門に担当する電気技術者のグループが3つあります。ヒューマノイド担当の電気設計グループは、1年、2年、4年の学部生で構成されており、経験豊富な技術者が指導者としてサポートしています。このグループには、仕様要件、設計、基板のテストと製造、ロボットの組み立てと統合などのコンセプトで構成されたプロジェクトがあります。

 

Warner: 皆さんが作っているロボットの種類についてもう少し詳しく説明していただけますか?

 

Azevedo: ITAndroidsチームは5つの部門に参加しています。そのうちの2つはシミュレーション、後の3つは実際のロボットを使った競技です。

 

サッカーシミュレーション2D: この部門にはハードウェア開発がなく、サッカーの試合における自律型ロボットの戦略が中心となります。今年のプロジェクトでは、重要なコードのリファクタリングを行っています。バグを修正したり、コードを読みやすく書き直したり、チームの記述パターンに移行したりしています。エージェントへの動的なロール割り当て戦略の実装もありました。

 

サッカーシミュレーション3D: この部門では、先ほど説明した部門の課題を追求します。3Dのヒューマノイドロボットのシミュレーションに加え、ロボットの動きを実装する必要があります。今年のプロジェクトでは主に、動きのパラメーターの最適化とロボットのナビゲーション、それらの最適化のためのクラスタリングツールとより効率的なロボットのテスト方法に重点を置いています。

 

ヒューマノイド: 物理的なヒューマノイドロボットを開発し、サッカーシミュレーション3Dで特徴的な全ての技術を、実際のロボットに実装します。

チームは、親しみを込めて名付けたChapeという、自分たちのヒューマノイドモデルを製作したおかげで、ハードウェアの知識を大幅に広げることができました。Chapeは、昨年から使用している、Darwin-OPという外部から採用したロボットをベースにしています。ハードウェアプロジェクトは、ロボットのほぼ全ての部品の機械加工およびプリントを含む機械的作業と、Altium Designerを使って設計する電気的作業があり、作業は広範囲に及びました。ソフトウェア開発チームも、非常に苦労しながらロボットの動きや視覚機能の多くを改善しました。

ロボットは1学期間で完成しました。これで、6月のRobocup競技会への参加が確実です。

 

超小型(VSS): サッカーをする立方体型の3種類のロボットのチームで構成されます。私たちのチームは、強化された処理基板とモーターを搭載した新しいロボットを制作し、ハードウェアの設計にはAltium Designerを使用しました。このソフトウェアはチームの戦略をサポートしてくれたので、私たちはテストに役立つシミュレーターを開発できました。

 

小型: 先ほど述べた部門の拡張版とみなすことができます。より規模の大きなチームと、より複雑な機械構造を持つロボットで競います。新しい部門として、プロジェクトは1年にわたって開発フェーズにありました。この経験は、ハードウェア性能の

さらなる大幅成長に役立ちました。ここでも、Altium Designerは、私たちのプロジェクトで重要な役割を担っていました。カスタムソフトウェアを開発する必要もありました。これはやりがいのあるプロジェクトでした。

Robocup競技会のChape

Warner: RoboCup競技会に参加なさっていますが、そのご経験についてお聞かせください。

 

Azevedo: RoboCupへの参加は、自分たちの設計を「フィールド」に置いて機能や動きを実際に見ることができる、すばらしい機会でした。世界中から集まったチームとの交流も非常に刺激的でした。多くを学びまた教える経験ができました。世界中の大学のチームメンバーとの会話により、私たちのスキルは格段に向上しました。Robocupにより、チームは成熟し、システムは堅牢性が増しました。人脈も増えました。

 

Warner: 非常にエキサイティングで記憶に残る経験をなさったようですね。ロボットに電力を供給するため、どのようなタイプの回路基板が必要ですか? またそれらの設計をどのように学びましたか?

 

Azevedo: ヒューマノイドロボットのChapeは、ある程度のモジュール性を備え、保守を簡単に行えるように作られました。Chapeの電気的アーキテクチャーは、電力の調整や供給、センシングやアクチュエーターの制御、下位レベルのデータ通信、状態監視、可用性、およびデバッグと保守の役割を共有するさまざまなタイプの基板を必要とします。

アーキテクチャーは、2枚の基板で構成されます。

PWBは、電力マネージャーとして機能する、電力制御アルゴリズムに特化したスマート基板です。安定した電圧バスはPWBで生成されます。高出力で電圧が安定しないバスは、電池や外部からの電力供給などの電源管理から生成されます。

CMBは、低レベルの物理層の中心です。これは、サーボ機構を制御する監視基板のコントロールです。埋め込まれた慣性モジュールからのデータを解釈し、読み取った内部温度に基づいて安全な動作を選び、冷却ファンを動かし、助言を求めるためのLEDとブザーを制御し、不安定な高出力電圧バスを供給します。高度な処理を行うメインコンピューターとの通信は、IntelのNUC i5が行います。歩く、走る、蹴るなどの動作を可能にするデータ交換を行います。NUCとの通信は、USB2.0と、差動データペアのインピーダンスマッチングです。I2Cバスは、ロボットとの対話を可能にするLED、ブザー、およびボタンから成る残りの基板を統合します。

チームメンバーが基板設計を学ぶプロセスは、

電気的設計に重点を置いた短期コースから始まります。このコースでは設計の原則を学びます。上級生は、ボランティアの技術指導者がサポートするグループに自分たちの専門知識を提供します。それらの学生たちは、通常の授業や教授陣、インターネットから知識を得るため時間を費やしています。

Robocup競技会の合間に休憩するヒューマノイドロボットのChapeAltium Designerソフトウェアを使って設計

Warner: チームの指導者の役割についてお聞かせください。

 

Azevedo: チームは、主に学部の学生で構成されているので、十分な経験もなければ、チームのニーズを満たすほど成長もしていないということがたびたびあります。しかしながら、必要があればいつでも指導者を頼ることができます。

チームには4人の指導者がいます。2人は電気(Miguel Angelo SampaioとJosé Roberto Colombo Jr.)、1人は機械(Daniela Vacarini de Faria)、残りの1人はソフトウェアと制御について助言する教授(Marcos Ricardo Omena de Albuquerque Máximo)です。

電気関係の指導者は、新しいメンバーに知識を教えるほか、Chapeや、VSSの電子回路やPCBレイアウトの設計に関してすばらしい仕事をしてくれました。機械関係の指導者は、CADプロジェクトでも製作でも、Chapeロボットプロジェクトになくてはならない人でした。彼らは、小型リーグのチームのサポートも行いました。教授は、自分の時間と労力をプロジェクトの成功につぎ込みました。彼は、全ての分野に対して集中的なサポートを提供し、また自分の博士論文として、ヒューマノイドロボットの歩行アルゴリズムも開発しました。指導者たちは毎年、チームの技術を維持できるよう、チームメンバーに授業を行っています。

 

Warner: 今年度、チームは何に取り組んでいるのですか。

 

Azevedo: 2017年は、ITAndroidsにとって大きな成長の年でした。チームの管理面から

技術面に至るまで、チーム全員に山のような作業がありました。各サブチームの作業に加え、私たちは2つの主要イベントに参加しました。Robocup国際大会とLatin American Robocup(LARC)です。また、それより規模の小さい、IEEE VSS(Very Small Size)タイプに重点を置いたイベントにも参加しました。これらの競技会でのチームの奮闘の結果、合計5つのトロフィーを獲得しました。

学術的には、私たちは常にチームの学生に科学的研究を推奨しており、その結果6つの論文が発表されました。

ITAndroidsチームが製作した小型クラスのロボット

Warner: 非常に成功したこの1年と、チームをその成功に導いた情熱的な学生、教授、指導者の方々に、お祝いを申し上げます。お忙しいところ、お時間を割いてITAndroidsの活動と業績についてお話しくださり、ありがとうございました。

 

Arthur: 私たちのチームについて話す機会をいただき、ありがとうございました。

 

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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