PCB設計のレシピに従う: PCBの製造図

投稿日 十二月 5, 2017
更新日 二月 4, 2021

手作りのクレームブリュレの画像

 

数年前、私は妻の誕生日にクレームブリュレを作りました。妻は呆然としていました。なにしろ、その時の私にできた料理といえば、ゆで卵と焦げたトーストくらいだったからです。実際に作ってみる前にはいくらか時間をかけて、わかりやすい作り方が書かれたレシピを手に入れました。そのレシピを手にひとつひとつの工程を進み、その日のヒーローになるために調理しました。

 

後になって考えてみると、失敗しても失うものはそれほどありませんでした。がっかりはするかもしれませんが、クレームブリュレがなくてもお祝いはできるのですから。PCB製造の世界ではそうはいかず、はるかに多くの危険が潜んでいます。不適切な基板はコストを跳ね上げるどころか、設計者の職まで危険にさらされる恐れがあります。基板が自分の手から離れたら、後は製造業者を信じるしかありません。無条件に信用したくないのなら、製造図に明確な指示を記載して、製造を成功させるようにしなければなりません。

 

不完全な製造図は、製造プロセスを遅らせるだけでなく、基板の製造を取り消す原因にもなります。基本的な材料がないと料理が始まらないように、製造図もに基本的な材料が必要です。設計している基板に独自の要素を追加するのはその後です。優秀な料理人が調理道具を巧みに使って絶品を作るように、基板の設計でCADツールを使って作業を進める方法をご紹介します。手遅れになることがないよう、オーブンを開けて、料理がどうなっているのか確かめてみましょう。

 

 

実装に送られるPCB

製造ラインから実装に送られるPCB

 

PCBの実装図:基本的な材料

クレームブリュレの基本的な材料は卵、クリーム、砂糖だけですが、製造図に含める基本的な指示も必要なものだけに減らすことができます。製造図を使って直接伝える必要のある最も重要な指示は下記のとおりです。 

 

基板外形:  製造業者が製造する必要のある、長穴やカットアウトなどの要素を含むPCBの外形です。ただし、これは基板の実装図ではないため、長穴やカットアウトを使用する機械的な要素を含める必要はありません。

 

ドリル穴の位置: 基板のすべてのドリル穴は、独自のシンボルを使って、基板外形の中に示す必要があります。製造業者は設計者が送ったドリル用ファイルを使って実際の穴の位置を確認するものの、ここではドリルシンボルを参照用に含めます。

 

ドリル図: 「ドリルスケジュール」とも呼ばれるこの図では、穴の完成サイズと数量にそれぞれのドリルシンボルを追加します。これにより、製造業者は製造図に含まれる穴のサイズを簡単に把握できるようになります。

 

寸法線: 製造図には寸法線を追加し、基板の全体的な長さと幅を示したほうがよいでしょう。また、すべての長穴、カットアウト、その他の固有の基板外形の位置やサイズについても寸法線を含めます。

 

レイヤースタックアップの図: これは実際のレイヤースタックアップが表示される基板の側面図です。ここでは、基板のレイヤーの構成や幅のほか、レイヤー間のプリプレグやコアを詳細に示すためにポインターを使用します。

 

製造の注記: これは、製造図に文章で記載する実際の製造指示です。ここには、基本的な製造指示、業界標準や仕様の参照、特別な要素の位置などを記載します。

 

製造の識別情報: 通常、製造の概要には製造図の番号、修正レベル、基板の名称、会社情報、作成日を記載する場所を設けます。

高度な要素: 艶出し、ソテー、盛り付け

表面の砂糖を焦がしてカラメルにするのであれ、クリームを冷やして固めるのであれ、作ったものをテーブルに出す前に高度な一手間を加えると味がぐんと引き立ちます。これと同じように、製造図をさらに明確にするための方法をいくつかご紹介しましょう。

 

  • 拡大図: 基板外形以外の特定の要素の拡大スナップショットを追加し、基板上の位置をポインターで示すことができます。拡大図を使用すると、要素の寸法線を通常の基板外形よりも詳細に示すことができます。
  • 追加の基板外形: 基板外形の画像を追加して、ベリードドリル穴の位置を示すことができます。密集した基板上でドリル穴が重なり合っている場合、メインの基板外形にこれらの穴をすべて表示するとわかりにくくなることがあります。基板のサイズによっては、これらの予備的な基板外形を製造図の追加ページに含めるとよいでしょう。

 

CADシステムを使用する技術者の画像

PCBレイアウトソフトウェアから直接、製造図を作成する

 

PCBレイアウトツールを活用する

私が回路基板の設計を初めて手掛けたときに使ったCADシステムの描画機能は、まだまだ発達していませんでした。ドリル位置などの一部の基板データは使用できましたが、製造図の大半の要素は手動で作成する必要がありました。そのため、基板外形、詳細な図、その他の製造図の要素の作成にかなりの時間がかかりました。幸いにも、現在のPCB-CADシステムの描画機能を使用すれば、製造図を簡単に作成できます。

 

この機能では、空白の描画フォーマットをライブラリから使用するか、自動的に生成し、デザイン データベースと組み合わせます。製造の注記を簡単に作成して製造図に追加したり、ファイルからインポートしたりすることができます。ドリル図は自動的に作成され、基板で使用されるドリルサイズに合わせて追加されます。また、寸法線を含めたい要素にカーソルを合わせてクリックすると、寸法線をさまざまなモードで簡単に追加できます。

 

現在も製造図を手動で作成している場合は、高度な作成機能を備えるレイアウト ソフトウェアをチェックしてみてください。製造図は設計のデータベースにリンクされているため、設計変更は製造図に即座に反映されます。これによって作業量を減らせるだけでなく、手動での製造図の作成によるエラーの発生を除外できます。

 

製造図に関するこうした目的を念頭に置いておくことで、作業の効率を上げながら、より正確な製造図を作成できるようになります。おまけに、クレームブリュレのレシピについても知っていただくことができました(とはいえ、きちんとしたレシピに従うことをおすすめします)。Altium Designerは、製造図の高度な作成機能を搭載するPCB設計ソフトウェアです。Draftsmanを活用すると、基板を最初から適切に設計してエラーのない製造図を作成できます。

 

PCBの製造図の作成をお手伝いいたします。アルティウムの専門家にぜひお問い合わせください。

 

 

 

 

 

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