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大学で夜遅く勉強していたとき、人工頭脳を埋め込みたいと、よく思いました。そうすれば、必要な情報をダウンロードし、その後すぐに思い出すことができます。勉強しないですむし、ガールフレンドの誕生日を忘れることもなくなる。たぶん、自分の頭の中でNetflixを見ることさえできるでしょう。残念なことに、私より前に現れた優れた電気エンジニアは、代わりに、モノのインターネット(IoT)機器を設計しました。私がまだ、機械による記憶を待ち続けている間に、それらの機器は、自分の心を手に入れつつあります。機械学習と人工知能(AI)は、話題のトピックであり、おそらく、あなたのような設計者は、組み込みシステムにそれらを実装しようとしているのでしょう。1つだけ問題があります。機械学習に使用されるニューラルネットワークは、使用するエネルギーや必要な処理能力が大きすぎるのです。5Gの到来、そしてクラウドコンピューティングと5Gの組み合わせが、その難問への解決策になる可能性があります。5Gの高帯域と低レイテンシーを利用して、クラウドコンピューティングは、人工知能付きの組み込みシステムにパワーを与えることができます。
組み込みシステムでの機械学習
機械学習は、新しい概念ではありませんが、処理能力の継続的な向上によって、実現されようとしています。AIによって、機器は、その環境とはるかに賢くやりとりすることができます。
Future Interfaces Groupが作成したSynthetic Sensorは、機械学習がどのようにシステム運用を改善できるかの優れた例です。このモジュールには、周囲温度、EMI、ノイズなど、「スマート」デバイスに見られる一般的なセンサーのほとんどが搭載されています。そして、このモジュールは、その環境を理解するために機械学習を利用します。Synthetic Sensorは、コンロのどのバーナーに火を付けたか、どの器具が動作しているかを把握できます。これによって、ユーザーは、留守の間に自宅で何が起こっているかを正確に知ることができます。
組み込みシステムにとって、インテリジェントセンシングには大きなメリットがあります。一部の機器は、既にそれらを利用しています。Nestサーモスタットは、住人のお好みの室内温度を学習し、住人の行動を追跡します。その結果、サーモスタットは、好みやスケジュールを理解した上で、室内の温度を調節します。在宅中は温度を高く、留守中は温度を低く設定します。このように理解しスケジュールを調整すれば、自宅のエネルギー効率を改善できます。
肉体にAIシステムを埋め込まないでください。
機械学習を妨げるもの
機械学習が、それほど素晴らしいものなら、あらゆる場所にまだ実装されていないのは、なぜでしょうか? 私に人工頭脳がないのと同じ理由です。大きすぎ、必要なエネルギーが多すぎるのです。
組み込みシステムにスーパーコンピューターを収めるのは、必ずしも簡単ではありませんが、AIが欲しければ、それを行う必要があります。機械学習には、組み込みシステムに収めることができる以上の、途方もない処理能力が必要です。先進運転支援システム(ADAS)対応車のメーカーでさえ、インテリジェントシステムに必要なCPUを搭載できるか心配しています。開発者は、機械学習プロセスを加速するために、現在はGPUを使用していますが、それではチップを必要なサイズまで小型化できません。
適切なチップが利用できても、まだAIのパワー要件に対処する必要があります。1989年、カーネギーメロン大学の研究者たちは、ディープラーニング技術を利用して自動運転する自動車を作りました。その車の名前はALVINNで、100 MFLOPのCPUには、5,000Wの発電機から電気が供給されました。現在のチップは、それより少ない電力を使用しますが、大幅に少ないというわけではありません。ADAS対応車のような、大きな組み込みシステムの場合、バッテリーを多く積むスペースがあるかもしれません。しかし、器具や携帯機器の場合には、機器より大きなバッテリーが必要となります。
これらは両方とも困難な問題ですが、最終的には克服できるでしょう。一方、組み込みシステムにAIを搭載する、より短期のソリューションは、5Gとクラウドコンピューティングです。
クラウドコンピューティングと5G
クラウドは、何と不思議なものなのでしょう。クラウドを、トロンの世界として想像するのが好きです。争いの少ない方が良いのですが。5Gと組み合わせれば、クラウドコンピューティングは、私自身のコンピューターの世界を作るのに役立つほど高性能です。
クラウドコンピューティングは、前述のパワーや処理の制限を解決できます。事実上無限の計算能力とグリッド接続を使って、計算を外部で実行することができます。クラウドは既に分散コンピューティングに使用されているので、組み込みシステムが同じことをしてはいけない理由はありません。これに応じて、Google、Amazonなどの企業は、クラウドの機械学習サービスの提供を始めています。プロセッサは、どこか離れたコンピューターファームにあり、アンテナへの動力供給についてのみ心配すればすみます。このため、5Gを利用します。
機械学習は、多くのデータを必要とします。現在、それだけのデータを無線で送信するのは困難です。ADAS対応車は1秒あたり1GBのデータを処理する必要があると、インテルは推定しています。WiFiまたは4G接続で送信するには多い情報です。たまたま5Gがサポートするデータ転送速度は最大10Gbpsであり、遅延は10ms未満です。つまり、機器は、必要なデータを転送し、ほぼ即座に解釈を受信できます。また、企業は、少ない電力で基板が的確な判断をできるように、低電力の5Gアンテナの開発に取り組んでいます。
クラウドコンピューティング付きの機械学習は、まさにこのように見えるでしょう。
機械学習は、組み込みシステムを大いに強化するエキサイティングな分野です。クラウドコンピューティングが、AI処理と電気要件に対応でき、5Gが、データ転送要件を解決します。
組み込みシステムで機械学習が実現可能になれば、全ての設計作業を手伝ってもらうのに、ヒト型ロボットのようなものが必要となります。ヒト型ロボットはご用意できませんが、次善の策はあります。Altium Designer PCB設計ソフトウェアは、あらゆる種類の組み込みシステム用の基板を設計するのに役立ちます。その幅広い優れたツールのおかげで、自身が超人的なPCB設計者になったように感じます。
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