Susy Webb: 私はヒューストンにあるFairfieldNodalに勤めており、弊社は陸上および海洋環境向けの石油探査ならびに観測機器を製造しています。弊社が製造するデバイスは一定の領域内で広がり、地底深くに送られて戻ってくるエネルギーの波動を受信します。これらのエネルギーの波動を解析すると、特定領域の地中に石油鉱床があるかどうかを予測することができます。
Judy Warner: 基板設計に携わってどのくらいになりますか。また、これまでに設計したその他の製品について教えてください。
Webb: PCB設計の経験は35年になります。サービスビューローや、メモリシステム、コンピューターマザーボード、産業用コンピューターの設計会社を経て、現在の石油探査企業は2社目です。私は難題とそれに伴う学習を楽しめるタイプなので、常に挑戦して自身を高めることで成長してきました。常に学ぶ姿勢を貫き、この業界で成長しようと努力する人は誰でも優れた設計者になれると考えています。上司や会社がカンファレンスへの出席を決めたり、雑誌記事を手渡してくれたりするのを当てにするのではなく、自身で責任を持って学習することです。私がカンファレンスの出席から得たものは非常に多く、これがその後の成長の基盤となりました。余裕のある限りあらゆる講座を受講しました。学位は持っていますが工学分野ではありません。講座やカンファレンスに出席して独学するか、または大学に戻って電気工学の学位を取得するという選択肢がありましたが、必要としている実用的な知識を電気工学課程で得られるかどうか確信が持てなかったので、カンファレンスへの参加を学費と同じ自己投資と見なすことにしたんです。
Warner: 人々が移動や自費での支払いに抵抗を示すのはなぜだとお考えですか?
Webb: 予備のお金がないのかもしれないし、個人の技術や経歴にどれだけ大きな影響があるかを認識するための観点が不足しているのかもしれません。特定の企業文化に浸かり、その企業のやり方だけに固執して、必要なことはすべて身につけたと思い込むのはよくあることです。一社にずっと留まるのであれば問題はありませんが、一時解雇が実施されたり、転職を希望したりする場合はどうでしょうか。私の考えでは、設計者は自身の経歴に主体的に取り組むべきです。これには、書籍や資料の購入と、あらゆる学習の機会への参加が含まれます。
FairfieldNodal 石油探査機器
Warner: どのようにして、設計者としての経歴を築かれましたか?
Webb: 多数の講座や書籍、人脈や優れた指南役との出会いがありました。さまざまな書籍や論文を購入し、印をつけながら読みました。たとえば、Bruce Archambault、Lee Ritchey、Todd Hubing、Henry Ott、Hall、Hall、McCall、Howard Johnsonの著作などです。一度では完全に理解できたかどうか自信がなかったため、何度も読んだ本もあります。ただし、すべてを書籍から学ぶことはできません。物事を明確にし、現実での問いに答えてくれる指南役が必要です。私にとって、PCB WestやIPC APEXなどのカンファレンスへの参加を通じて、Gary FerrariやRick Hartleyといった指南役を得られたのは本当に幸運でした。カンファレンスに行くと、DFMやシグナルインテグリティーなどに関する細かい質問をしたものです。顔を突き合わせて掘り下げた議論ができますから。このほかに、ボランティアとしての活動もしており、IPC Designers Councilの理事を務めています。設計者の認定とその他の標準を開発する委員会にも参加しました。IPCは国際的な組織で、世界中の人々がボランティアとして協力できます。IPCへの参加には、きわめて高い価値があります。1998年にIPC Designers Councilの理事になる前は、Houston DC支部に参加していました。残念なことに、現在この支部の活動は活発ではありません。この支部の一員となって活躍してくれる新しい人達が必要です。同じ担当者が長く幹部を務めているなら、別の誰かが交代する必要があります。過度な負担を負わされるのではないかと思って二の足を踏む気持ちは私も理解できます。けれども、数名の担当者が作業を分担するだけで、最小限の労力で支部を非常に簡単に運営できるのです。
Warner: 工学専攻ではなかったのに、PCB設計者になった経緯を教えてください。
Webb: 美術を専攻していたんですが、手先が本当に器用だったのです(当時はエレクトロニクスに関する知識もあまり必要ではありませんでした)。はじめは商業美術に携わりましたが、第一子ができて、当時はそれが普通だった6週間の短い産休を取った後、フルタイム勤務に戻ろうとは思いませんでした。そうは言っても、多少の収入は得たいと考えていたところ、PCB設計者として在宅で働いていた友人が手助けを必要としており、私に基板設計を教えてくれることになりました。彼女から技術を学び、彼女のもとで2年間働いたのち、起業して自分の設計事務所を構えることにしました。空いていた寝室に2台の特大ライトテーブルを置いて、在宅で12年間働きました。当時はすべてのPCB設計が手作業でしたが、世界中がコンピューター支援設計(CAD)へと向かっていました。ある顧客企業から、同社の基板を設計するという条件でコンピューターとソフトウェアを支給してくれるという申し出がありました。それは1980年代後半のことで、使用したツールはP-Cadでした。私は日夜を問わず、スケジュールと納期を守るために長時間働いたものです。
Warner: 現在の設計者にとって、最大の障害は何であるとお考えですか?
Webb: そうですね、どれが正しい情報なのかを読み解くことが困難になっていると思います。データシート、設計基準、技術者、書籍、論文など、相反するさまざまな情報源があり、少しずつ内容が異なる場合があります。そんなとき、私は信頼できる情報源から書籍や講座を調べますし、もちろん技術者とも話し合います。多くの場合、その情報が特定の設計に対して有効かどうかを調べる唯一の方法は、すべてを分析して、最も状況に適すると思われる方法を適用することです。その後で、基板をテストして結果を検証します。
Warner: 経験の浅い技術者やPCB設計者にアドバイスするとしたら、どのような言葉をかけますか?
Webb: そのような機会があれば、できる限り多く学習するように伝えるでしょう。本を読み、可能な限りすべての講座を受講し、講義中に質問することをためらわないことです(何かを完全に理解していないのは、あなただけではありません)。電気技術者であっても、PCB内での信号の挙動について大学で教えられているわけではありません。また、できるだけ指南役となる人を見つけましょう。引退を控えて、これまでに蓄えた知識を伝えたがっている設計者が世の中には数多くいます。クラスで先頭に立って発表する人たちも、喜んで手助けしてくれると思います。新たな方向性を指摘してくれる場合もあるでしょう。可能であれば、講師を会社に呼んで部門全体に向けて話してもらいましょう。私は話をする側と聞く側の両方の経験がありますが、全員が共通の認識を持てるのでお勧めです。それから、言うまでもなく重要なのは、人脈づくりです。
Susy Webb、FairfieldNodal、シニアPCB設計者
IPCや、ソフトウェアツール、製造業者のフォーラムなどにはオンライングループがありますから、さまざまな支援が得られるでしょう。お住まいの地域や全国レベルのグループに所属して、世間に公開する情報を決定するプロセスに参加することも重要です。簡単なことではありませんが、その利点は計り知れません。懸命に努力して知識を獲得することで、特定のポストや報酬を得られる可能性があります。私がこの業界で得た仕事はすべて、人脈を通じて見つけたものです。
Warner: 基板設計をしていないときは、どのようなことをするのが好きですか?
Webb: プレゼンテーションと講義の開発に多くの時間を割いていますが、ものすごく楽しい時間です。調査を通じて同時に自分自身の知識を深めることもできます。米国、カナダ、メキシコ、オーストラリアにある個人企業やカンファレンスを訪れたこともあります。
旅行は大好きで、会いたい人、訪れたい場所、観たいものをリストにして、現在取り組んでいるところです。
自分の系譜を調べるのも好きなのですが、これは旅行と多少関係していますね。
楽しむための読書もしますし、生演奏を聴いたり、もちろん友人や家族を訪ねるのも好きです。
Warner: これまでの経験や知見、アドバイスをお話ししていただきありがとうございました。
Webb: どういたしまして。仲間の設計者のお役に立てれば幸いです。
FairfieldNodal