よほど浮世離れしている方でない限り、信頼できる半導体のサプライヤーを見つけることが非常に困難になってきていると多くの人が感じていると思います。企業は、必要に応じた調達戦略を実践することで膨大な消費者需要に対処する一方で、半導体業界は製造工程への新たな投資で対応しています。ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスは海外で数十億ドルの追加投資を行い、またインテルはオハイオ州に2つの新工場を建設するという200億ドルの投資を行い、話題の的となりました。
半導体業界は多くの新規投資を行っており、需要の高まりはずっと続くことが予想されていますが、PCBの最前線では何が起こるのでしょうか。外注体制が北米、特に米国国内のPCB製造業界を壊滅させている原因となっていることはよく知られています。国内のPCB製造業界の大部分は、軍用PCBの製造、機密性の高いIPを使用したアセンブリ、短納期の試作や、契約製造、またはロータッチ製造といった分野に追いやられてきました。
米国国土安全保障省(DHS)と米国商務省(DoC)が2月24日に発表した新しい報告書によると、ホワイトハウスは情報通信技術(ICT)のオンショア製造能力の戦略的重要性を認識しているそうです。これは、米国政府の電子機器サプライチェーン全体の見方と、ICT製品におけるPCBの役割が大きく変化したことを示しています。
DHS/DoCの報告書は、ベアPCBなどの上流コンポーネントから、アセンブリやアプリケーション開発まで、ICTサプライチェーンのあらゆる側面に焦点を当てています。さらに、PCBサプライチェーンのリスクに関して、今後の業界の指針となりうる重要な結論を導き出しています。
ここで指摘されたリスクは、米国の電子機器製造手法の欠陥を指摘した先月のIPC報告書で見られた指摘と一致します。具体的に言えば、生産能力の外注と中国への製造能力の集中が、上記のリスクの根本的な原因となっています。中国でPCB製造が行えなくなってしまったら、経済が深刻な被害を受けることとなります。
米国のPCB業界が外注業務に支払ってきた代償が、ここ数年の間にサプライチェーンと地政学的な側面における不安定性に直面してようやく明るみに出てきたのです。国内生産能力の問題は比較的迅速に解決できますが、労働力の問題ははるかに深刻で、多額の投資が必要です。高度な電子機器の製造に不可欠な知識は、現在働く従業員の世代が引退するにつれて失われる可能性があります。
報告書内では、避けるべきサプライチェーンのリスクに対処するための行動方針が7つ示されており、国内製造、労働力開発、製造業者による持続的な研究開発などが挙げられています。現在、世界のPCB生産において米国のシェアは以前の30%越えからわずか4%にまで低下しており、電子機器製造サービス(EMS)企業上位20社のうち米国に拠点を置く企業は4社のみとなっています。新型コロナウイルス流行中に重大なサプライチェーンの問題を抱えた米国とヨーロッパの企業は、特にAPAC地域への外部委託に過度に依存しているところでした。
米国とAPAC地域の生産能力の差は2000年頃から見られるようになり、以下のIPCデータに見られるように、米国外での生産が着実に増加しています。
上記のデータは2014年までのものですが、現在もその傾向が続いており、現在販売されているPCBの50%以上が中国で生産されていることは有名です。海外での製造は悪いことではありませんが、リスクを管理することも重要であり、それは分散化によってのみ可能になります。
サプライチェーンの状況に詳しい人なら誰でも、生産能力の多様化はエンドユーザーのリスクを軽減する1つの解決策であるということに頷くはずです。この生産能力を国内に戻すか、または最低でも東南アジアを超えて拡大することが、上記のリスクを軽減する最良の方法です。政府が認識し始めたことは、米国のPCB生産能力にとって、また欧米の製造業全体にとって有望な進展ですが、これはまだ長い道のりの始まりにすぎません。
IPC、PCEA、PCBAAなどの組織が、知的財産(IP)の保護が必要でミッションクリティカルな製品の生産地移動を推進できるかどうかが判明するには、まだ時間がかかります。米国の電子機器メーカーの多くが、20年以上にわたる外注化によって大幅な市場シェアを失い、一方で東南アジアは生産能力を蓄積してきました。その結果として、サプライチェーンの課題という大きなリスクが生まれています。2020年から2021年にかけて、この状況が半導体業界に及ぼしてきた影響を目の当たりにすることになったわけですが、現在、米政府は半導体外注に関する問題を国家安全保障の問題だと捉えるようになったようです。この報告書からは、PCBの製造、アセンブリにおいても政府が同様の姿勢をとっていることが示されていることがわかります。
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