私は、携帯電話業界に最近復帰したNokia 3310をこよなく愛しています。この製品を使ったことがないなら、あなたは近年の歴史において最も信頼性と耐久性が高い携帯電話の1つを知らないことになります。2000年初期とは異なり、現在ではくるみ割り器としても使えたり、高所からの落下にも耐えられたりする携帯電話は滅多に見られません。
電子設計において、これと同じような堅牢性と信頼性を持つのが、RS485通信です。Nokiaと同様に、私はRS485をいつまでも使い続けるつもりです。しかし、ワイヤレス通信テクノロジーが日々ますます遍在的になるにつれ、この多くの実績のあるプロトコルも過去の遺物となってしまうのであろうかという考えに駆られることがあります。
RS-485とアプリケーション
私はNokiaを愛していますが、以前に文字にも電話にも応答しない女の子とデートしたことがあります。彼女が会話さえ拒否するようになるまで、私はこれを問題とは思っていませんでした。結局のところ、人間関係も電子回路も、連絡が無ければ正しく機能しないということです。電子機器は多くの場合、互いに数百メートルも離れた場所に、理想的ではない電気的環境で設置されます。このため、電気的な干渉、距離、速度の懸念に信頼性の高い方法で対応できる通信方法が求められます。
干渉: RS485は半二重の差動モードでデータを伝送するシリアル通信プロトコルの電気的特性を定義する規格です。差動信号とより線ペアケーブルにより、RS485上で伝送されるデータは1200mまで伝達可能で、信号の干渉に対しても高い耐性があります。
プロセス自動化においては、RS485が今でも主流です
距離: Nokiaによって解決できなかったもう1つの通信の問題は、欧州へ旅行中に、北米に住んでいるガールフレンドに電話したときのことです。9時間の時差があるため、私が起床して一日の行動を開始する頃、彼女は寝る前ということになり、互いに関係を保つことが困難になりました。もしも私たちがRS485のような通信の専門家であり、位置の相違の問題を解決できたならうまく行っていたでしょう。異なる場所で動作するデバイスには、それぞれ異なる接地ポイントがあり、相対電圧も異なります。RS485では、2つのデバイスが参照しているGNDの電位が異なる場合でも、データインテグリティーは無事に保たれます。これは、RS485が差動信号を使用し、論理1は一対のデータラインの中で論理0により反映されるためで、データ信号をGNDに対して参照するシングルエンドの信号とはこの点が異なります。
速度: 最大距離における伝送速度は100kbpsと規定され、これはほとんどのアプリケーションで十分以上の速度です。これに対してRS232などの標準はシングルエンドの信号処理を使用しているため、最大で15mまでしか伝達できません。これに近い性能を持っているのはCANバスで、1,000mの距離で50kbpsまでの伝送速度を実現できますが、RS485と比較して、ファームウェアレベルでの実装ははるかに困難となります。
RS485は電気的な標準のみを定義しており、インターフェイスのプロトコルはModbus、Profibus、または当該製造業者により導入された独自プロトコルなどに任されています。この柔軟性から、RS485は自動化制御、データ収集ソリューション、ビルオートメーションシステムなどのアプリケーションで広く採用されるようになりました。
ワイヤレステクノロジーの出現による有線通信の衰退
近年において、ワイヤレス通信テクノロジーが組み込みシステムで一般的となってきました。Bluetooth、Wi-Fi、Zigbeeなどのワイヤレステクノロジーは特定の産業で非常に一般的となり、有線のソリューションに置き換わっています。スマートホーム、セキュリティシステム、IoTなどの商用自動化でも、明らかに同じ傾向が見られます。
RS485の競合相手
ワイヤレス通信は、有線の設備で困難を引き起こしていた、いくつもの問題点を解決します。原材料の価格が増大していることから、銅線は高価なソリューションとなり、多くのエンドユーザーが避けるようになってきています。また、ワイヤレスでは面倒な事前設置作業が完全に不要になります。これによって、今まで嫌われてきた穴開け、切断、ケーブルの配置が完全に不要となります。
屋外の設置では、有線プロトコルの破損の主要な原因の1つは落雷です。この場合、修理に多大なコストが必要で、大きな不便が発生します。多くの場合、落雷の発生しやすい場所に設置されるデバイスの寿命を延ばすため、高価な雷サージ保護回路が設置されます。これに対して、ワイヤレスリピーターには落雷に直接さらされるようなデータケーブルが存在しないため、大幅に寿命を延ばすことができます。
ワイヤレステクノロジーがデバイス間通信について、より経済的な手法を提供する状況は、RS485規格の終焉を意味するのでしょうか?
RS485が存続する理由
私の長距離恋愛の場合と同様に、シリアル通信は減少してきました。これは、消費者向け電子機器で特に顕著です。コンピューターのマザーボードにRS232ポートが搭載されなくなってから10年近くになります。企業は材料と労働力のコストを削減するため、ワイヤレステクノロジーを重視するようになりました。しかし、特定の産業ではRS485は依然として広く使用されています。特に、工業用プロセスおよびビルオートメーションにおいてはその傾向があります。
リピーターが多すぎると、簡素化という目的が失われる恐れがあります。
ワイヤレステクノロジーは設置が簡単ですが、デバイスがコンクリートの建造物によって分離された場所に設置されるようなアプリケーションにおいては、信号強度や安定性の点で依然として制約があります。Bluetoothの信号は、障害物の存在しない特定の環境に制限されます。Zigbeeでは複数のリピーターが必要な可能性があり、Wi-Fiではデバイスが建物のいくつものコーナーに分散すると信号強度が低下します。
RS485をワイヤレス製品に置き換えることを検討する企業が増えていることは否定できませんが、コスト削減の評価は技術的な複雑性によって相殺される可能性があります。複数のワイヤレスリピーターを使用すると障害ポイントがいくつも生まれる可能性があります。これに対してRS485の本質的なノイズ耐性特性は、複雑なアルゴリズムなしに、他の通信方式よりも優位点があります。
もちろん、低消費電力WAN(LPWAN)などの新しいテクノロジーが進化し、低消費電力や、広域な見通し範囲を維持しながら、高速なデータ伝送を対応するようになれば、RS485がRS422と同様に時代遅れとなる可能性はあります。それまでは、高速なデータ伝送、長距離通信、高い耐性を必要とするアプリケーション向けに、RS485は最良のオプションであり続けるでしょう。
RS485を使用するときの重要なヒント
RS485を、特にその長距離通信におけるノイズ耐性を最大限に活用するには、伝送速度が115kbpsを超える場合に終端抵抗を取り付ける必要があります。また、設置には、ツイストペア ケーブルのみを使用します。
RS485のデータを高速に伝送する場合、不要なEMIの問題を防止するため、データ接続(D+、D-)は並列に配線し、同じ長さにする必要があることに留意してください。また、RS485の回路を外部サージから保護するため、過渡保護コンポーネントを配置することも検討します。
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