EIPC: プリント基板技術専門家の欧州コミュニティ

Judy Warner
|  投稿日 七月 12, 2019  |  更新日 十一月 12, 2020

6月中旬、非常にうれしいことに、私はオーストリアのレオーベンで開催されたEIPCカンファレンスに初めて参加してきました。EIPC(European Institute for the PCB Community)は、50年以上続く組織です。このグローバルな欧州エレクトロニクス業界を巻き込んだ活動を継続しながら、欧州エレクトロニクス業界およびサプライチェーンに貢献しています。この記事では、活気に満ちてダイナミックな組織の目的、活動の内容と範囲について、EIPCの技術ディレクターであるTarja Rapala氏に伺ったお話を紹介します。

 

TarjaTarpala氏


Judy Warner: EIPCの歴史や現在の目標、またどのような企業およびメンバーに対してサービスを提供しているか、などについてご説明ください。

Tarja Rapala: EIPCは、欧州のエレクトロニクス業界の専門家で構成されたプリント基板コミュニティのための欧州機関です。私たちは、会員の皆様にビジネスや技術に関する情報を交換する場を提供し、支援します。私たちの主要な目的の1つは、欧州の業界を世界規模で可視化し、また同時に欧州で起こっていることについてのニュースを広めることです。ドイツは、欧州のプリント基板業界において非常に強い立場にあります。ですから、ドイツで定期的に会合を開くようにしています。またドイツのFED協会と協力してドイツ語でワークショップも開催しています。さらに、欧州の他の地域でもワークショップを開催する計画を立てています。

EIPCは、WECC(World Electronic Circuits Council)に所属する独立組織で、ECWC(Electronic Circuit World Convention)の代表を務める組織の一部です。このコンベンションで、EIPCは、業界に関連する世界中の8つの事業者団体から成るグループです。1つは米国(IPC)、1つは欧州(EIPC)、残りはアジア(JPCA、CPCA、HKPCA、KPCA、TPCA、およびIPCA)です。 

参加者を歓迎する、EIPCの代表Alun Morgan氏

 

Warner: Tarpalaさんの、専門家としての業界での経験と、EIPCでの役割について教えてください。

Tarpala: 私は、技術ディレクターとして2018年9月にEIPCに入り、Michael Weinhold氏の後を引き継いでいます。氏の国際的な評判を目の当たりにして、自分も高い水準の仕事をしなければと奮起しています。アジア、米国、欧州を含む多文化環境における複雑なエレクトロニクスプロジェクトの管理で、30年以上の経験があります。

10年間、PCBのグローバル企業でVP of Technologyとして中国で働きました。2018年の夏にフィンランドに戻り、今も欧州の状況をより深く理解できるよう探っているところです。自分の知識、人脈、特にアジアでの10年間の経験を通じて、EIPCの仕事にあらたな価値をもたらすことにとても興奮しています。これにより、新たな視点や斬新なアイディアが生まれることを期待します。

私の役割の重要な部分は、夏季および冬季のカンファレンスの組織でKirsten Smit-Westenberg氏およびAlun Morgan氏をサポートすることです。また、欧州サプライチェーン内で話題の興味深いさまざまなテーマに基づき、欧州での各種技術ワークショップ開催の企画も行います。

EIPCを代表してWECCの会合やCPCA、TPCA、IPCショーなどのイベントにも参加します。EIPCは、IPC、IEC、およびWECCを通じて標準化に関する仕事も行っています。小規模なEIPCチームの効率を最大化できるよう、メンバー企業と密に連携して作業を行っています。これにより、私たちは、ダイナミックなグローバルペースで活動を続け、成果を挙げることができるのです。

訪問者を歓迎するレオーベン副市長のDaniel Geiger氏

 

Warner: ちょうど夏季カンファレンスが終わったところですが、イベントの概要と、今年の開催地をオーストリアのレオーベンにした理由を教えてください。

ジェスチャー制御ドローンの操作を実演するAlun Morgan氏

 

Tarpala: カンファレンスの目的は、5G、デジタライゼーション、AI、常時高速化の要求など、グローバルな技術要件や課題をサポートすることです。この目的は、これらのグローバルなトレンドに対する欧州業界のアプローチとソリューションへの見識を私たちに与えてくれたプレゼンテーションを通じて達成されました。取り上げられたトピックは、材料の選択基準からプロセスの選択、製品テスト、信頼性にまでおよびました。カンファレンスは、製品の追跡可能性や信頼性をサポートする方法、より早い速度やクリーン度を計測およびテストする方法、次世代の5Gアプリケーションにおいてより高速のアプリケーションの重要な要素は何か、などを学ぶ機会を提供しました。プレゼンテーションは、Ericsson、Ucamco、Polar Instruments、Gen3 Systems、Gardien、Elmatica、Orbotech、Agfa-Gevaert、Taiyo、HDPUG、Rogers Corporation、EMC、およびDavid Bernard Consultancyなどの企業によって行われました。

技術的な情報が満載の内容に関心を寄せるカンファレンス出席者


ハイライトは、欧州全体を通じて現れつつある新たなイノベーションについてのセッションでした。その他に、Indubond(新しいマルチレイヤープレス技術)、Lackwerke Peters(新しいコーティング技術)、SunChemicals(高度なLPSIMと直接画像化)、Frauenhofer IZM(ファンアウトパネルパッケージングのための高密度RDL技術)、Meyer Burger NV(インクジェット印刷技術)、Tactotek(スマート成形構造によるサーフェス加工)、Picosun(whiskerを回避するための原子層成長法 [ALD] およびプリント基板の新しいソルダ―マスクソリューション)によるプレゼンテーションもありました。

AT&Sの施設
 

毎年、私たちはカンファレンスの開催地として、メンバー企業様またはEIPCのビジネスエリア内にある興味深い施設を訪問できる場所を戦略的に選びます。今年は、AT&S様がレオーベンの施設を訪問する機会を提供してくださいました。参加者は、欧州で成功しているこの製造業者が地方の一業者から世界的なテクノロジーリーダー(欧州で収益が最も高いプリント基板製造業者)にどのようにして成長したのかを理解することができました。またAT&Sは、基調プレゼンテーションで、プリント基板設計の重要性を含め、組み込みコンポーネント技術についても紹介してくれました。開発作業は欧州のパートナーと協力して行われ、レオーベンで製造されます。

AT&S内の多数のツアーグループの1つ

 

Warner: 今年の夏季カンファレンスの参加者はおよそ何人くらいいましたか? またどのような企業および役職の方が代表として参加していましたか?

Tarpala: 参加者は122名で、前回のカンファレンスよりおよそ20%増でした。

Warner: EIPCが成長し、活動の範囲を広げるには、どのような方法がありますか?

Tarpala: EIPCの機能は、欧州のエレクトロニクスサプライチェーンの全ての関係者のつながりを促すことによって、メンバーの利益促進をお手伝いすることです。私たちの信念は、EIPCのトレーニングワークショップや技術的なスナップショットが、基板メーカーや設計者がプリント基板テクノロジーの最新トレンドを学ぶための、他に類を見ない機会を提供できること、

そして、キャリアの追求を希望し、自社の費用対効果を改善したい参加者に真の価値を提供できることです。EIPCは、プリント基板をその活動の中心に据えており、革新的なエレクトロニクスソリューションの実現者として、プリント基板の重要性を強調するコースやプログラムを開発し続けます。

Warner: ハードウェア技術者にとって、EIPCは特にどのようなメリットがありますか?

Tarpala: EIPCへのメンバー登録またはニュースレターの購読により、EIPCの重要なメリットとして、ハードウェア技術者は新しいプリント基板テクノロジーの最新情報を入手し、基板の製造から信頼性に至るまでのさまざまな技術的課題を把握することができます。カンファレンスへの参加により、出席者はプリント基板業界の専門家との人脈を築くチャンスがあります。プリント基板の技術分野で何が起こっているのか、またハードウェア設計にとってそれがどれほど重要であるかをより広く理解することができます。また、設計の側面から、知識や課題を共有するフォーラムでもあります。同様に設計作業をサポートする、興味深い活動やトピックを提案できます。

Warner: この記事の読者は、EIPCおよび今後のカンファレンスに関する詳しい情報をどのように入手できますか?

Tarpala: EIPCのWebページにアクセスするか、直接お問い合わせください。

Warner: レオーベンでお会いできて本当によかったです。カンファレンスのご成功、おめでとうございます。EIPCに関する情報およびEIPCが提供するすばらしい活動内容を教えていただき、感謝いたします。

Tarpala: カンファレンスに参加してくださり、また読者の皆様にEIPCのことを知っていただく機会を作っていただき、ありがとうございます。

ホストおよびツアーガイドからのお礼の品とごあいさつ

 

ご招待とおもてなしについて、EIPC代表のAlun Morgan氏、EIPCエグゼクティブディレクターのKirsten Smit-Westenberg氏に特に深く感謝いたします。 

すばらしい施設でのおもてなしとツアーについてAT&Sにもお礼申し上げます。

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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