PCB製造でのシルクスクリーンに関する問題の発生を防止するには

投稿日 八月 25, 2017
更新日 十二月 16, 2020
PCB製造でのシルクスクリーンに関する問題の発生を防止するには

PCBのシルクスクリーンの画像

 

 

1996年のオリンピックをご覧になっていれば、最後まで奮闘したケリー・ストラグ選手のことを覚えていらっしゃる方もいるでしょう。ストラグ選手は足首を痛めた状態で最後となる2回目の跳馬を跳び、アメリカチームに金メダルをもたらしました。彼女が教えてくれたのは、最後までやり抜くことの大切さでしょう。とはいえ、私たちはそれが回路基板設計となると、プロジェクトの最後には気が緩んで油断してしまいがちです。デザインを製造にリリースする前の最後の作業の1つは、基板のシルクスクリーンとデジグネータを調整することです。しかし、この手順が他の設計作業ほど真剣にとらえられていないことは多々あります。その結果、製造業者によってデザインが却下され、修正するよう送り返されてくるケースもあります。今回は、PCBのシルクスクリーンに潜在するいくつかの問題とそれらを回避する方法について見ていきましょう。

 

 

跳馬を跳ぶ体操選手

ケリー・ストラグ選手のように最後までやり抜く

 

 

PCBのシルクスクリーンに潜在する問題とは

  皆さんのなかには、「問題など起こりようがない」とお考えの方がいらっしゃるかもしれませんが、デザインをリリースする前にシルクスクリーンの最終調整をしなかったことが原因で発生する問題をいくつかご紹介しましょう。

 

コンポーネントが正しく表示されていない: 意図するコンポーネントがシルクスクリーンで正確に表示されていないと、デバッグや修正を担当する基板技術者の混乱を招く可能性があります。たとえば、関連するコンポーネントが正しく表示されていない形状、誤ったピンの数、誤ったピンに表示されている極性指示がこれにあたります。キャップのプラス側をチェックしたときに、極性指示が逆になっていることを知った技術者がどのような不安を感じるのかについては、皆さんも想像がつくでしょう。

 

テキストが判読できない: シルクスクリーンのテキストが判読できない場合、基板技術者はデジグネータの確認に余計な時間を費やさなければなりません。多くの場合、これは小さすぎて判読できないフォントサイズや誤った線幅を使用していることが原因です。線幅が小さすぎると基板にうまくスクリーン印刷ができず、逆に線幅が大きすぎると膨張してしまい、同じく判読不能になります。

 

デジグネータが誤ったコンポーネントに配置されている: デジグネータが誤ったコンポーネントに配置されている場合があります。これは、コンポーネントを移動したもののデジグネータが移動されていない場合に発生したか、設計者側の誤りの可能性があります。いずれにしても、基板のテストを実施する基板技術者は、回路図にあるコンポーネントと一致しないものをチェックすることになります。

 

実装するコンポーネントでデジグネータが覆われている: 実装する部品の下に配置されているデジグネータは、これまでに嫌というほど見てきました。密集したデザインでは避けられない場合があるものの、なんとかして阻止しなければなりません。デジグネータが見えない状態で「C143」を必死に探している基板技術者の姿を想像してみてください。

 

シルクスクリーンのインクが金属を覆っている、または穴に流入している: シルクスクリーンのインクが表面実装ピンやメッキされたスルーホールなどの露出金属を覆っていると、基板を廃棄しなければならないことがあります。同じく、シルクスクリーンの要素同士が衝突していたり、シルクスクリーンが基板からはみ出ていたりするのも大きな問題です。

製造業者との連携

こうした問題を回避するための第一歩は、回路基板の製造業者が作成したシルクスクリーンに関する設計ガイドラインの内容を理解することです。こうしたガイドラインでは、最適な最小フォントサイズや線幅に関する情報が提供されています。また、露出金属やメッキされたスルーホールなど、他のオブジェクトに対するシルクスクリーンのクリアランス仕様についても確認できるでしょう。デザインを製造業者へ提出する前に、適切な情報交換を行い、製造業者が必要なものを理解することは、製造に関する問題を削減するにあたって必要不可欠です。

 

 

「Let’s Do This!(実践する)」と書かれた黄色の付箋

「Let’s Do This!(実践する)」

 

 

シルクスクリーンに関する問題を最小限にするために、設計者が実践できること

基板の修正やデバッグを担当するつもりで、ご自身の設計を新しい視点から見直してみましょう。個別のビューアを使ってシルクスクリーンの出力を確認することは、このチェック作業に役立つでしょう。すべてのデジグネータがきちんと表示され、判読できるでしょうか?「ピン1」を見つけるために、たくさんのピンが配置された部品がマークされていないでしょうか?適切な部品に正しい極性が示されていますか?ご自身がシルクスクリーンを読んだり、理解したりできなければ、当然ながら技術者にも同じことが起こります。

 

最後に、お使いのCADシステムでシルクスクリーンのデザインルール チェック(DRC)を活用し、露出金属や穴に流入したインク、他のオブジェクトに対するクリアランスなど、シルクスクリーンの要素を必ず確認するようにしましょう。これによって、問題を大幅に削減できます。

 

現実を見つめましょう。基板の設計は本当に楽しいものです。実のところ、特に困難な配置や重要な配線を終えた後の最終的な手作業の配線は、非常に容易になります。とはいえ、最終出力ファイルに向けたデザインの作成は、退屈で面倒な作業になる場合もあるでしょう。PCB設計者がシルクスクリーンの仕上げや他の出力に関連した作業に神経を集中させないのは珍しいことではありません。これは、手元のデザインを仕上げ、早く次のプロジェクトに移りたいからですケリー・ストラグ選手のように、設計者も最後までやり抜かなければなりません。

 

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