Judy Warner: Avishtech社を立ち上げるきっかけとなった要素は、技術的にはどのようなことだったのでしょうか?
Keshav Amla: 簡単に答えると、PCBのシグナルインテグリティ、製造可能性、信頼性について、既存の電気設計および開発方法には深刻な弱点がいくつもある、と気付いたとことです。シグナルインテグリティについて言えば、損失のモデリングのお粗末さに非常に驚かされました。しかし、それよりもっと大きな不安の種は、製造可能性と信頼性の問題を予測できないことでした。古い手法では、再設計を繰り返し試作基板を何度も再作成するのが基本でした。スタックアップ設計段階で実際の挙動を予測するために必要な技術を構築する上で、自分たちこそが適任者だと感じました。
Tarun Amla: 今の話に少し付け加えると、重要な点は、1つですべての目的を満たそうとする試作品はうまく機能しないということです。それぞれのスタックアップは違うものです。試作基板で一連のテストに合格したとしても、実際には、その試作基板で使われた特定の設計が機能したというだけです。一般に、設計技術者は「ワーストケース」の試作品を作成できると考えられていますが、実際にはそのようなものは存在しません。
Judy Warner: Avishtech社が提供しているツールセットとサービスにはどのようなものがありますか?
Tarun Amla: 弊社は、設計、およびシミュレーション ソフトウェアであるGaussシリーズを提供しています。Gauss 2Dは、伝送線路のシグナルインテグリティシミュレーションのための2D電磁界ソルバー、および周波数依存性解析ツールです。Gauss Stackは、信頼性、製造可能性、シグナルインテグリティを予測するためのPCBスタックアップ設計、およびシミュレーションツールです。
また今回、弊社はGauss Synthesis製品を発表しました。これにより、弊社のツールセットの機能をオンライン、オンデマンドで必要に応じて利用できます。特定のツールセットの使い方を学ぶ必要も、結果の解釈方法を判断する必要もありません。単に必要な入力データを付けて発注し、結果と専門家のフィードバックが記載されたレポートを受け取るだけです。
Judy Warner: Gaussツールセットを、その他のEDAベンダーの製品から差別化しているものは何ですか?
Keshav Amla: Gauss Stackは、ガラスストップ/樹脂欠乏、メッキスルーホールの信頼性、マイクロビアの信頼性、はんだ接合部の信頼性などの製造可能性の問題を予測するための完全統合型の設計、およびシミュレーション環境です。Gauss Stackの登場以前は、試作基板の作成によって設計プロセスを何か月も費やした後でしか、これらの問題に気付けませんでした。そこで不具合を発見したとしても、その対策方法に関する手がかりは得られませんでした。Gauss Stackを使えば、ソフトウェア内で直接、この試作プロセスを実行し、修正を繰り返すことができます。数か月どころか、数時間でです。
Gauss 2Dの際立った特徴は、GNDプレーンの損失に関連しています。GNDプレーンの損失は、高い周波数で非常に大きくなり、導体損失の35%を上回ることもありますが、競合他社のツールセットでは、これが考慮されていません。Gauss 2Dは(Gauss Stackとともに)、損失のモデリングにGNDプレーンの損失を含めることで、SIシミュレーションと実際の性能の差を埋める市場初で唯一のツールです。これ以外にも、Gauss 2Dには、広帯域抽出ユーティリティという画期的なツールがあります。このユーティリティを使うと、一連のSパラメーターから直接、全周波数範囲にわたって、RMS銅箔表面粗さとDk、およびDfを抽出できます。
Gauss Synthesisでは、具体的な要求に合わせ、年間ライセンス、またはオンデマンドの方法を通じて、弊社ツールセットの機能を柔軟にご利用いただけます。
Judy Warner: Avishtech社のツールセットとサービスが取り組む設計上の具体的な課題と弱点はどのようなものでしょうか?
Tarun Amla: Gauss Stackは、スタックアップ設計段階で長期的な信頼性を予測し、故障モードを見つけるシミュレーション環境を提供することで、「最初から正しい設計」を実現できるようにユーザーを手助けします。Gauss Stackは、信頼性テスト用試作品の代わりになるため、コストを低減し、より優れた設計をより早く市場に投入できるようになります。
Gauss 2Dは、シグナルインテグリティ試作品(SITV)ではなく、シミュレーションという手段を用い、伝送線路の挙動を適正に特性評価する上で必要な、きわめて詳細で精度の高い機能を提供します。Gauss 2Dは、インピーダンス、RLGCを正確にシミュレートし、最も重要な点として、他のツールとは異なり、実質的にSITVの代わりとなります。
Gauss Synthesisでは、弊社ツールセットの完全なサブスクリプションまでは必要としない企業も、弊社ツールセットの機能を利用できます。弊社は、これ以外にも、寸法安定性シミュレーション、DTR (Design To Requirement) サービスなど、付加価値の高いサービスを提供しています。完全な年間サブスクリプションを購入する必要も、自分でツールセットを実行する必要もありません。
Judy Warner: 今日、これらの課題と要因がそれほど重要な理由は何ですか?
Keshav Amla: 112 Gbps/チャンネル、および5G/ミリ波アプリケーションなど、今日の高データレート製品には、融通を利かせられる余地がほとんどありません。それだけでなく、高データレート製品の設計の多くでは、さまざまな目標を両立させる必要があります。例えば、多くの5G基板では、ハイブリッド構造が必要とされますが、この構造には、弊社ツールのようなツールを必要とする課題が山積しています。一見、何でもなさそうな違いでも、正しく機能する基板と、作成さえできない基板を分ける差になりかねません。この融通の利かなさと、相反しがちな目標が、これらの問題をより頻繁に発生させる原因となっています。
Judy Warner: Avishtech社のツールセットとサービスが対処できるビジネス、および経済的要因には、どのようなものがあるでしょうか?
Tarun Amla: 弊社のツールセットは、それを使用して設計した最終製品の製造可能性、信頼性、競争優位性、総合的な収益性を対応しています。弊社のツールセットのシミュレーション機能を使うと、不完全な設計、または予定通りに動作しない設計に起因する、費用のかかる再設計を回避できます。もっと困るのは、現場での不具合です。これは、利益だけでなく、企業の評判に対しても、壊滅的で長期にわたる影響をもたらすことがあります。
Gauss製品シリーズを使うことで、危険を最小限に抑え開発期間を大幅に短縮できます。これは、競争上の重要な利点になり得ます。
Judy Warner: Avishtech社のツールセットとサービスを使うのに、どのようなレベルの能力が必要ですか?
Keshav Amla: 弊社は、弊社のツールを学びやすく使いやすくするために、かなりの時間と労力を費やしました。この使いやすさは、弊社の全製品の開発の中心部分であり続けました。そのため、習熟曲線は事実上、存在しません。
エディターの注釈: Gauss 2DとGauss Stackの詳細はwww.avishtech.comをご覧ください