πフィルターを使った電源の設計

Mark Harris
|  投稿日 July 18, 2021  |  更新日 July 11, 2022
πフィルターを使った電源の設計

πフィルターは一種のパッシブフィルターであり、ギリシャ語の文字である「π」の形になった3つのコンポーネントで形成されていることからこの名前が付けられました。使用するコンポーネントによって、ローパスフィルターかハイパスフィルターのいずれかとして設計できます。

電源のフィルタリングに使用されるローパスフィルターは、入力と出力の2つのコンデンサーとともに、入力と出力の間の直列のコイルで形成されます。電源で使用されるπフィルターの主な用途は、ローパスフィルターとしては整流器の出力を平準化することです。

ハイパスフィルターは、入力と出力の2つのコイルとともに、入力と出力の間の直列のコンデンサーで形成されます。

この記事ではローパスフィルターについてご紹介します。

基本原則

πフィルターの3つのコンポーネントは、交流電流を遮断して直流電流を通過させます。まず、入力コンデンサーによってACコンポーネントが除外されます。次に、コイルによってリップルが効率的に除外されます。最後に、コイルを通過したACコンポーネントが出力コンデンサーによって除外されます。

特徴

πフィルターでは出力電圧が高くなって電流ドレインが最低になるため、出力ではほんのわずかしか電圧降下が発生しません。他の種類のフィルタと比較した場合のもうひとつの主なメリットは、リップル低減に優れていることです。ただしフィルターを流れる電流については、出力に負荷がかかると電圧低下が発生するため、πフィルターで電圧が制御されません。この電流はコイルにも流れるため、高出力電圧で使用する場合は高電力定格のコイルが必要になります。この制限については、高入力容量の要件と高電圧定格を踏まえて判断を行う必要があります。また、こうしたコンポーネントはかさばるうえに高額のため、基板の設計に影響が及びます。

電圧制御

πフィルターが効率的に機能するためには、安定した出力電圧が必要です。出力負荷が絶えず変化したり、ドリフト電流が速かったりすると、電圧制御がうまくいかなくなります。通常、AC電源はブリッジ整流回路の直後、スイッチモード制御回路の前に使用します。これらの電源は電源回路のコンバータステージへの入力で、整流された電力線のリップルを最小限に抑えます。

電源の絶縁

ローパスπフィルターのコイルを変圧器に置き換えると、同様にリップルが除外されるうえ、整流器の出力とスイッチモードの電力変換器の間を絶縁できるという利点があります。また、変圧器によって双方向のコモンモードノイズも除去されます。一方の方向では、整流器の出力に現れるAC入力のノイズが削減され、もう一方の方向では、スイッチモードの電力変換器の回路によって生成される高周波ノイズが電源を経由して主電源ラインに戻ってくるのを防ぐことができます。この構成では、πフィルターは「パワーラインフィルター」とも呼ばれています。

インピーダンス整合

単純なLCフィルターと比較した場合のπフィルターのメリットは、インピーダンス整合に対する回路設計の柔軟性が増すことです。単純なLCフィルターには単一のコンポーネントの値しかなく、特定の周波数に必要なインピーダンスが生成されます。一方、πフィルターにはコンポーネントの値の複数の組み合わせがあり、それらによって特定の周波数に必要なインピーダンスが生成されます。異なる選択肢には異なるQファクタがあり、効率性とのトレードオフという形で、設計する回路に最適な共振挙動を選択することが可能です。

設計に関する制約事項

標準的なπフィルターの場合、典型的なサイズと重さのコンポーネントに、基板の大きな領域を割り当てる必要があります。また、コンポーネントの物理的な配置のずれを引き起こす外部の振動を防ぐために、慎重な取り付けも必要です。こうした配置ずれは、PCBに接続されるリードや半田接合部の割れの原因になることがあります。

通常、πフィルターは高出力の用途で利用されます。そのため、フィルターのコンポーネント間の配線はできるだけ短くし、接続と配線での電流密度もできるだけ低くする必要があります。高電流が関与する場合は過度な加熱を防止するために、コイルと変圧器で熱管理が必要になります。

分離が必要な場合は、設計に組み込まれた、またはメインの接続回路の外部要素として扱われる、既成の独立したユニットとしてパワーラインフィルターを使用できます。この方法では単価が上がりますが、基板設計が簡素化され、全体的な製造コストを削減できる場合があります。

概要

物理的なサイズと重量の制約と熱管理に関する問題によって使用できない場合を除き、πフィルターは電源回路内で電源リップルを除去するのに役立ちます。電圧制御の制限があると出力フィルターとしては適さなくなるものの、電源回路内の中間フィルターとしては理想的です。また、変圧器をベースとするπフィルターでは、安全性に関連する用途で電力を分離できるという別のメリットもあります。

ご不明な点がありましたら、Altiumのエキスパートまで電話でお問い合わせください。次のPCB設計に役立つ情報をご案内いたします。Altium Designerの無償評価版はこちらからダウンロードしていただけます。

筆者について

筆者について

Mark Harrisは「技術者のための技術者」とでも言うべき存在です。エレクトロニクス業界で12年以上にわたる豊富な経験を積んでおり、その範囲も、航空宇宙や国防契約の分野から、小規模製品のスタートアップ企業や趣味にまで及んでいます。イギリスに移り住む前、カナダ最大級の研究機関に勤務していたMarkは、電子工学、機械工学、ソフトウェアを巻き込むさまざまなプロジェクトや課題に毎日取り組んでいました。彼は、きわめて広範囲にまたがるAltium Designer用コンポーネントのオープンソース データベース ライブラリ (Celestial Database Library) も公開しています。オープンソースのハードウェアとソフトウェアに親しんでおり、オープンソース プロジェクトで起こりがちな日々の課題への取り組みに求められる、固定観念にとらわれない問題解決能力を持っています。エレクトロニクスは情熱です。製品がアイデアから現実のものになり、世界と交流し始めるのを見るのは、尽きることのない楽しみの源です。

Markと直接やり取りする場合の連絡先: mark@originalcircuit.com

最新の記事

Altium Designerのベストプラクティス(パート2) - AltiumLive 2022 このセッションでは、ネットクラスやルールを使って設計意図を伝えるために回路図を使用する際のベストプラクティスをご紹介します。また、部品、ルール、ネットに優先順位とクラスを使用して、複雑な設計ルールを構築する方法も学習していきます。 ハイライト: 設計プロセスにおけるActiveBOM文書の活用 設計要件を理解 トランスクリプト: デビッド・ハバウド: 始めましょう。皆さん、ようこそ。デビッド・ハバウドです。Altiumでプロダクト・マーケティング・エンジニアをしています。本日は、Altium Designerのベストプラクティスをご紹介します。このプレゼンテーションは、「ベストプラクティス」に関する講演の第2部です。ですから、新規ユーザーの方や、ルール作成や情報提供の基礎から学びたい方は、先に「ベストプラクティス パート1」をまずご覧になることをお勧めします。 そこで今日はまず、PCBについて話す前に、回路図側からルールを定義することである「回路図ディレクティブ」について説明します。その後、PCBに話題を移した後は、複雑なルールの構築、ルールの複雑なスコープを作成するためのクエリ言語などの使用、優先順位付けがある場合の作業、違反に対する調和の構築、違反の対処方法などについてご説明します。 そこからは、設計レビューについても少しお話します。さまざまなステークホルダーがいる場合に、プロセスを少しでもスムーズにするためにできることがあります。このセクションでは、Altium 365でプロジェクトの作業をしながら説明します。プロジェクトはワークスペースでホストされます。そこから、出力ファイルの生成におすすめのファイルを紹介していきます。そして、これらの出力ファイルを手に入れたら、Altium 365ワークスペースのウェブインターフェースでもう一度確認し、すべての情報を製造業者に直接提供する方法について説明していきます。 それでは始めましょう。設計プロセスを開始する際に最初にすべきことは、設計要件を深く理解することです。新しい設計に取り組む際、要件を明確にするときに直面するいくつかの課題があります。 まず、一般的な要件を明確にしたら、それらがどのように相互作用するかを理解しなければなりません。例えば、エッジコネクタの場合、筐体の中にうまく収まるように、適切なクリアランスを確保する必要があります。また、ルールを明確にした後、違反が発生した場合、その違反を解決したり、必要に応じて免除したり、文書化したりすることは、非常に困難なことです。 ここで、検証が重要になってきます。これは、製造プロセスに移る前に、確実に設計意図を伝え、正確に処理されるようにするために、ルールを検証することです。そこで、これらの要件を満たしていることを関係者に証明するための文書を作成します。 そこで、設計要件について、3点ばかり重要なことをお伝えします。1つ目は同期です。設計はすべて2つの要素で構成されています。論理的な要件を明確にする回路図。コネクティビティはこの一例です。さまざまなネットクラスで差動ペアを定義します。このプレゼンテーションでは、ここに焦点を置きます。 もう1つは、PCB。定義した要件やルールが、実際のアプリケーションに反映されることになります。これらは、先程述べたように、筐体の適切なクリアランスや、インピーダンスプロファイルの適切な幅などが定義されていることが非常に重要です。 これらを明確にし、これらの要件が回路図かPCBか、どちらに影響を及ぼすかを把握したら、要件をルールにまとめるという次のステップに進みます。ここでは、部品のクリアランスなど、要求を分類する必要があります。その後、範囲を明確にします。範囲が適切に設定されていないルールを作成すると、意図したレベルの検証ができなくなるため、範囲設定は非常に重要です。そこで、同様に重要なのが優先順位付け。ルールには階層があります。これについても説明していきます。そして、設計要件を明確にする中で、次に取り組まなければならないのが、相反する範囲の削減です。 そこで、まずは「同期」について説明します。先に述べたように、設計プロセスにはいくつかの側面があります。私たちは、設計プロセスのすべての領域に適用される要件、対応するルールを作成します。先程お話ししたように、ルールの中でも、今日は、回路図ディレクティブに焦点を当ててお話ししていきます。回路図の選択肢としては、「差動ペア」「No ビデオを見る
ホームに戻る