πフィルターは一種のパッシブフィルターであり、ギリシャ語の文字である「π」の形になった3つのコンポーネントで形成されていることからこの名前が付けられました。使用するコンポーネントによって、ローパスフィルターかハイパスフィルターのいずれかとして設計できます。
電源のフィルタリングに使用されるローパスフィルターは、入力と出力の2つのコンデンサーとともに、入力と出力の間の直列のコイルで形成されます。電源で使用されるπフィルターの主な用途は、ローパスフィルターとしては整流器の出力を平準化することです。
ハイパスフィルターは、入力と出力の2つのコイルとともに、入力と出力の間の直列のコンデンサーで形成されます。
この記事ではローパスフィルターについてご紹介します。
πフィルターの3つのコンポーネントは、交流電流を遮断して直流電流を通過させます。まず、入力コンデンサーによってACコンポーネントが除外されます。次に、コイルによってリップルが効率的に除外されます。最後に、コイルを通過したACコンポーネントが出力コンデンサーによって除外されます。
πフィルターでは出力電圧が高くなって電流ドレインが最低になるため、出力ではほんのわずかしか電圧降下が発生しません。他の種類のフィルタと比較した場合のもうひとつの主なメリットは、リップル低減に優れていることです。ただしフィルターを流れる電流については、出力に負荷がかかると電圧低下が発生するため、πフィルターで電圧が制御されません。この電流はコイルにも流れるため、高出力電圧で使用する場合は高電力定格のコイルが必要になります。この制限については、高入力容量の要件と高電圧定格を踏まえて判断を行う必要があります。また、こうしたコンポーネントはかさばるうえに高額のため、基板の設計に影響が及びます。
πフィルターが効率的に機能するためには、安定した出力電圧が必要です。出力負荷が絶えず変化したり、ドリフト電流が速かったりすると、電圧制御がうまくいかなくなります。通常、AC電源はブリッジ整流回路の直後、スイッチモード制御回路の前に使用します。これらの電源は電源回路のコンバータステージへの入力で、整流された電力線のリップルを最小限に抑えます。
ローパスπフィルターのコイルを変圧器に置き換えると、同様にリップルが除外されるうえ、整流器の出力とスイッチモードの電力変換器の間を絶縁できるという利点があります。また、変圧器によって双方向のコモンモードノイズも除去されます。一方の方向では、整流器の出力に現れるAC入力のノイズが削減され、もう一方の方向では、スイッチモードの電力変換器の回路によって生成される高周波ノイズが電源を経由して主電源ラインに戻ってくるのを防ぐことができます。この構成では、πフィルターは「パワーラインフィルター」とも呼ばれています。
単純なLCフィルターと比較した場合のπフィルターのメリットは、インピーダンス整合に対する回路設計の柔軟性が増すことです。単純なLCフィルターには単一のコンポーネントの値しかなく、特定の周波数に必要なインピーダンスが生成されます。一方、πフィルターにはコンポーネントの値の複数の組み合わせがあり、それらによって特定の周波数に必要なインピーダンスが生成されます。異なる選択肢には異なるQファクタがあり、効率性とのトレードオフという形で、設計する回路に最適な共振挙動を選択することが可能です。
標準的なπフィルターの場合、典型的なサイズと重さのコンポーネントに、基板の大きな領域を割り当てる必要があります。また、コンポーネントの物理的な配置のずれを引き起こす外部の振動を防ぐために、慎重な取り付けも必要です。こうした配置ずれは、PCBに接続されるリードや半田接合部の割れの原因になることがあります。
通常、πフィルターは高出力の用途で利用されます。そのため、フィルターのコンポーネント間の配線はできるだけ短くし、接続と配線での電流密度もできるだけ低くする必要があります。高電流が関与する場合は過度な加熱を防止するために、コイルと変圧器で熱管理が必要になります。
分離が必要な場合は、設計に組み込まれた、またはメインの接続回路の外部要素として扱われる、既成の独立したユニットとしてパワーラインフィルターを使用できます。この方法では単価が上がりますが、基板設計が簡素化され、全体的な製造コストを削減できる場合があります。
物理的なサイズと重量の制約と熱管理に関する問題によって使用できない場合を除き、πフィルターは電源回路内で電源リップルを除去するのに役立ちます。電圧制御の制限があると出力フィルターとしては適さなくなるものの、電源回路内の中間フィルターとしては理想的です。また、変圧器をベースとするπフィルターでは、安全性に関連する用途で電力を分離できるという別のメリットもあります。
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