プリント基板のレイアウトに使用するフットプリントは、パッドを基本に構成されています。Altium Designerではあらかじめ用意された標準仕様のパッドだけでなく、カスタマイズによってさまざまな形状の異形(カスタムパッド)を作成し、利用する事ができます。
そこで、今回はこのカスタムパッドの概要を紹介したいと思います。
カスタムパッドは標準パッドの代替ではなく、標準パッドに対する形状のカスタマイズです。そこで、まず、ベースとなる標準パッドについておさらいします。
・ マルチレイヤパッドと、シングルレイヤパッド
標準パッドには、部品リードの挿入穴があり、全層にランドパターンを持つマルチレイヤパッドと、穴が無く特定の単層にしかランドパターンを持たないシングルレイヤパッドがあります。マルチレイヤパッドは、リード付き部品、シングルレイヤパッドは表面実装部品に使用されます。
・ パッド形状
Round(円形)、Rectangular(長方形)、Octagonal(八角形)、Rounded Rectangular(角の丸い長方形)が用意されており、XサイズとYサイズを個別に設定できます。
内層に対しても形状とサイズを、個々または一括で設定できます。
・ソルダーメタルマスクの開口
開口値の入力、およびデザインルールによってサイズを設定できます。
これらのオプションの設定に加え、各層の作画エリアに任意の形状のリジョンを配置する事により、カスタムパッドを作成する事ができます。
標準パッドに無い形状が求められる場合には、カスタムパッドを用います。
例えば、パッドの形状がパッケージの仕様書やリファレンスデザインで定められている場合があります。部品の端子が放熱フィンとしての役目を持つ場合や、高周波を扱うRF部品のパッドでは、特殊な形状が求められる場合があり、このような場合にカスタムパッドを用います。
また、スイッチの形成にはカスタムパッドが不可欠です。特に回転を伴う場合には同心円状に接点を形成しなくてはならず、作成には困難が伴います。これを能率良く作成するには、極座標グリッドを利用するなどのテクニックが必要です。
また、片面基板でよく使われるカットランドの作成にもカスタムパッドを使います。片面基板では、メッキ穴(スルーホール)が形成されない為、パッドの面積を増やす事によって強度を保ちます。この際によく使われるのが、円形パッドの一部を切り取ったような形のカットランドです。さほど複雑な形状ではありませんが、カスタムパッドででないと実現できません。
では、実際にカスタムパッドを作成してみます。
TO-220タイプのパッケージを片面基板に実装売する事を想定します。端子数は3本。端子ピッチは2.54mmとします。可能な限り広いパッド面積を得る為に、Round(円形)パッドを切り取ったような形状にします。
なお、ここでの説明はステップ・バイ・ステップでの解説は行わず、要点のみに留めます。
1. 標準パッドの配置
3個の端子を配置。とりあえず、1.27mm(50mil)径のRoundパッドを仮置きします。
2. 中央の端子のパッド形状を設定
中央の端子には、Rounded Rectangular (角の丸い長方形)を使用する事とし、カスタムパッドは使用しません。サイズは、2mm x 3.81mm、Corner Radius (角の丸め半径)を50%とします。なお、このCorner Radiusを100%に設定するとRoundパッドと同じ形になります。
3. 左端子のカスタムパッドを作成
まず「アーク」と「ライン」でパッドの外形を作成します。そして [ツール] - [変換] - [セレクト] したプリミティブからリジョンを [作成] コマンドでこの内側をリジョンで埋めます。リジョンが作成された後、元の外形線を消去します。これにより、標準パッド上にリジョンが被せられ、標準パッドと一体化します。
4. 右端子のカスタムパッドを作成
左端子パッドに被せられたリジョンをコピーし、180度回転させて右側のパッド上に被せます。
5. 属性の設定とシルク印刷
ソルダーレジストの設定、穴径の設定、シルクの作成などを行い、フットプリントを完成させます。
このカットランドスタイルのカスタムパッドは極めてシンプルですので、作成に手間取る事はありません。しかしスイッチの接点などの複雑なものを能率よく作成するためには、極座標グリッドなどを作図のガイドとして利用するなどのテクニックが必要です。また、最初からリジョンを配置するのではなく、一旦、アークやラインで外形を作成した後、リジョンに変換するほうが能率的です。これらの具体的な手順については、カスタムパッド形状の作成、PCBのグリッドシステムとPolarグリッドの活用 で紹介されていますのでご覧ください。
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