上の画像の部品のどこかに、リジッドスタックアップ材料で作られたPCBがありますが、これらの材料は、基本的な性能要件を満たすため、特定の動作基準をクリアしていなければなりません。高電圧電源システムの設計者を含む、多くの最新パワーエレクトロニクス設計者は、製造業者にデフォルトのスタックアップを任せ、すぐにPCBレイアウトを作成し始めます。これは、多くの一般的な製品(例:マイクロコントローラー基板)で完全に受け入れられている(かつ推奨されることも少なくない)方法です。
では、なぜ、高電圧PCB材でも同じことができないのでしょうか?
高電圧PCBには、他のほとんどの基板に見られない独自の安全性および信頼性の問題があります。製造業者が高電圧PCBを専門としており、材料を在庫として保管している場合、材料一式と、特定の電圧および周波数で使用できる標準スタックアップを推奨してくるかもしれません。一方、貴社独自の材料を使用する必要がある場合は、この先を読み進み、適切な材料を選択するのに役立ててください。
ここで「高電圧」とは、通常、DCまたはACのいずれかでkV範囲に到達するものを指します。ラミネートのデータシートには、回路基板に最適なラミネートを選択するのに役立ち、高電圧でも安心して使用できるいくつかの材料特性が記載されています高電圧PCBでは、次のような材料が使用されます。
別の材料セットを使用する場合は、次の仕様に注意してください。
設計が絶縁破壊に耐える能力を定量化するために使用される重要な総括指標は、比較トラッキング指数(CTI)です。CTI は、PCB基板などの絶縁材料が表面付近で破壊し始める電圧を明確にします。材料は破壊されると、炭化し始め、導電性が高くなり、漏れ電流量が増加し、時間の経過とともに破壊が加速します。
IEC-60950-1やIPC-2221などの業界規格は、CTI値に基づき、高電圧PCBで使用できる推奨材料を紹介しています。これらの値は、UL 746A、IEC 60112、またはASTM D3638のいずれかを使用した標準テストを通して得ることもできます。CTI値は、6つのパフォーマンスレベルカテゴリー(PLC)に分類されます。
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実際、CTIにより、導体の配置間隔が非常に狭くなったときの2つの導体間の漏れ電流量を推定できます。CTIで観測できる劣化は、イオン化とその後の電流サージにつながる絶縁破壊とは同じではないことに注意する必要があります。これらの評価は、CTIによる評価よりもはるかに高く、通常はkVと同程度になります。これらの電圧にさらされる設計は、長期的な信頼性を確保するために、少なくともPLC 0材が必要になります。
設計に使用される材料システム、特に樹脂含有量と硬化剤は、設計の信頼性に影響します。FR4ラミネートは、破壊電圧値が高いにもかかわらず、CTI値が低い(約200~300 V DC)ため、高電圧PCBとみなされる一部の設計で使用できます。また、高電圧PCB材料の経時的な回復力も、樹脂含有量と硬化剤の両方に関連しています。高電圧PCBでこれが重要な理由は次のとおり2つあります。
ジシアンジアミド (DICY)ベースのFR4ラミネートでは、ガラス転移温度(Tg)値がかなり高くなり、約180°Cにも達します。ただし、Isolaのデータが示すように、これらの樹脂システムは高電圧勾配で早期に故障する可能性があります(以下参照)。どちらも同様のCTIとなる可能性がありますが、硬化したラミネートではCAFの成長が抑制されるため、フェノール硬化剤の失敗率は高くなります。
高電圧基板の信頼性におけるもう1つの側面は、ガラスの織り方です。1080や2113、または2116のようなやや細かいガラス織りが理想的ですが、106織りのように織り込み方が緩いものは、製品寿命が短くなる可能性があります。これらの織り方は、低電圧でCAFを抑制する必要性とバランスを取りながら、樹脂の流れと浸透を可能にします。
また、銅箔品質も、高電圧での動作条件を満たさなければなりません。そのため、銅箔重量と表面仕上げの選択が重要になってきます。むき出しの銅箔(推奨されません)を使用する場合でも、ENIGのような標準的な表面仕上げを施された銅箔を使用する場合でも、仕上げ面はできるだけ滑らかなものを使用する必要があります。表面が粗いと静電荷が蓄積しやすい領域を作るため、より滑らかな表面仕上げの設計が推奨されます。低電圧環境では、導体の各セクション間の電界強度が低すぎて、空気中でアーク放電や絶縁破壊が発生しないために、このことは大した問題になりません。製造業者に尋ねれば、完成した基板の取り扱い方法と、必要な銅箔重量に最適なメッキ材/厚に関して、適格なアドバイスをしてくれるでしょう。
高電流材では、銅箔重量がより重要になります。これは、常にそうであるとは限りませんが、電圧が高くなると電流量も増える傾向があるためです。電流が多い場合は銅箔重量を増やす必要があり、大規模設計で電流が100Aを超える場合は、どこかの時点でバスバーに切り替える必要があります。PCBの導体のサイジングを開始する際には、IPC-2152ノモグラフをまず確認するとよいでしょう。ただし、ここで推奨されている値は極めて保守的で、すべてのPCBに普遍的に適用できるわけではないことに注意してください。
最終的には、基板に適し、長期に及ぶ高電圧動作に耐えられるラミネートを選択することが必要です。PCBのためのラミネート層、銅箔重量、メッキを決めたら、スタックアップとPCBレイアウトの計画段階に進むことができます。スタックアップは、製造業者と相談して決定する必要があります。製造業者で特定のラミネートが使用できない場合、代わりに使用できるラミネートを提案してくれるはずです。
次に、レイアウトが基本的な安全性と信頼性の規則に則っていることを確認する必要があります。これには、安全基準で規定されている導体間の配置間隔が含まれます。ほとんどのリジッドPCBレイアウトで、IPC-2221が出発点になります。また、MIL-AEROエレクトロニクスのような信頼性の高いものでは、MIL-STD-275で8V/milのスペーシングを推奨していますが、これらの規格は古く、HVPFやカプトンのような1000V/milに対応できる新しい素材に対応していないものもあります。詳細については、これらのPCB規格およびその他の業界規格(IECなど)でご確認ください。
貴社の設計に適した材料を決定したら、新しい高電圧PCBレイアウトを作成することができます。その際には、最高の使い勝手を提供する Altium Designer®のECADソフトウェアをお使いください。 これらのファイルを製造業者に渡す準備ができたら、Altium 365®プラットフォームを使用することで、プロジェクトでのコラボレーションや共有が簡単になります。高電圧PCBの設計と製作に必要なものはすべて、1つのソフトウェアパッケージに含まれています。
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