PCBに最適なめっき材とめっき厚を選択する方法

Zachariah Peterson
|  投稿日 十二月 5, 2021  |  更新日 七月 1, 2024
PCBめっき

基板の標準的なPCB製作プロセスが終わると、PCB上のむき出しの銅に表面仕上げを施す準備が整います。パッド、ビア、その他いずれの導電性要素であるにせよ、ソルダーマスクから露出するPCBの銅を保護するためにめっきを塗布します。多くの場合、設計者は錫鉛(SnPb)めっきなどを標準的に使用していますが、基板の用途により他のめっき材の方が適している場合があります。

この記事では、さまざまなPCBめっき材のオプションと、PCBで使用する場合のそれらの利点について説明します。選択できるオプションはいくつかあります。信頼性や用途に応じて、設計に必要なめっきを製造業者が塗布することができるかどうかを確認する必要がある場合があります。これらのオプションと、めっきが損失に与える影響について簡単に説明します。

PCBめっきの種類

PCBのめっき材には、いくつか種類があります。以下のセクションでは、設計者が把握しておくべき一般的材料をまとめました。これらのオプションを一切提供していない製造業者は見たことがありません。契約している製造業者が以下のリストのいずれかのオプションを提供していると名言していない場合は、PCBめっき材のオプションを含む、サービス内容リストを一度メールでリクエストするとよいでしょう。

錫鉛(SnPb)および無電解錫

このPCB表面仕上げ材はおそらく最も安価なオプションですが、めっき仕上げに鉛が使用されているため、RoHSに準拠していません。無電解錫は、エントリーレベルの基板で使用できる無鉛オプションです。

メリット

デメリット

非常に平らな表面

複数の実装処理工程や再作業には不向き

安価

時間の経過とともに錫ウィスカーが形成される

標準的なはんだ付けに対応

取り扱いによっては損傷を受けることがある

 

SnのCuへの拡散は、金属間化合物の含有量に応じて、品質保持期間を短くすることがある

 

めっき工程中にソルダーマスクにダメージを与えることがある

 

ホットエア・レベラー(HASL)と無鉛HASL

 

HASLは従来に非常に人気のある表面仕上げ材として選ばれてきましたが、他のめっき材ほど信頼性が高くありません。安価な無鉛タイプもあるため、エントリーレベルのめっきオプションとして使用できます。

メリット

デメリット

安価

表面がでこぼこしているため、小さなSMD部品には不向き

修正可能

熱衝撃で破損することがある

 

不良湿潤のため、はんだ付けが難しいことがある

 

無電解金めっき(ENIG)

 

SnPbと無電解錫の欠点を考慮すると、ENIGが業界で最も人気のある表面仕上げ材であることはほぼ間違いありません。このめっき材で、ニッケルは、銅箔と部品がはんだ付けされる薄い金の表面層との間のバリア層として機能します。

メリット

デメリット

非常に平らな表面

複数の実装処理工程や再作業には不向き

PTHホールのめっき加工が容易

高価な場合がある

入手しやすい

金層とニッケル層の間にリンが侵入することがある(ブラックパッド症候群)

はんだ付けが容易

インターフェースが粗く、高周波で信号損失を引き起こす

微細ピッチ部品に最適

 

機械的損傷に対する高い信頼性

 

ワイヤボンディング可能(Al)

 

 

有機溶媒和性保存剤(OSP)

 

この有機水性表面仕上げ材は、銅に選択的に結合し、非常に平坦な表面仕上げを実現します。有機材料であるため、取り扱いや汚染物質に敏感ですが、PCBで使用される他のめっき材よりも塗布プロセスが簡単です。また、高周波での損失も非常に少なくなっています。

メリット

デメリット

非常に平らな表面

破損しやすい

塗布後に修正可能

品質保持期間が短い

塗布プロセスが簡単

 

高周波相互接続での損失が非常に低い

 

ワイヤボンディング可能(Al)

 

 

無電解銀

 

これは、私が好む高周波用PCBめっき材です。むき出しの銅を滑らかなインターフェースに仕上げるため、他の表面仕上げ材ほど多くの導体損失をもたらしません。主な欠点はベア基板における変色で、製作後できるだけ早くはんだ付けしてパッケージ化する必要があります。

メリット

デメリット

アルミニウムへのはんだ付けおよびワイヤボンディングが容易

時間の経過とともに銀ウィスカーを形成することがある

非常に平らな表面

むき出しの(はんだ付けされていない)導体は、時間の経過とともに変色する可能性があるが、OSPを塗布することでこれを防げる

配列ピッチが細かい部品に最適

小径ビアへのめっき塗布が難しい場合がある

高信頼性システムにおける高周波相互接続に最適

 

ワイヤボンディング可能(Al)

 

 

無電解ニッケル無電解パラジウム無電解金めっき(ENEPIG)

 

このめっき材は、銅-ニッケル-パラジウム-金の層構造で、めっきに直接ワイヤーボンディング性を特化させることができます。最後の金層は、ENIG同様、非常に薄くなっています。金層はENIG同様に柔らかいため、過度の機械的損傷や深い傷によりパラジウム層が露出する可能性があります。

メリット

デメリット

はんだ付けが簡単で、ワイヤーボンディング可能

高価

非常に平らな表面

パラジウム層は、濡れにくく、はんだ付けがより困難になる場合がある

配列ピッチが細かい部品に最適

別の処理ラインが必要なことがある

市販のPCB板用めっき材の中で腐食性が最も低い

 

ワイヤーボンディング可能(AlおよびAu)

 

 

金めっき

 

このめっき材料は本質的にENIGですが、非常に厚い金の外層を備えているため、最も高価なPCBめっき材の1つです。金層は損傷しやすい硬い表面を提供しますが、その厚さによりニッケル層を完全に露出させることは困難です。

メリット

デメリット

ワイヤーボンディング可能(AlおよびAu)

非常に高価

非常に耐久性のある表面

はんだ付け可能な箇所には不向き

 

選択的に塗布するには、追加の処理工程が必要

 

裂け目が発生することがある

 

上述のオプションの中で、ENIGはコストと耐久性、適用範囲のバランスが最も優れていると言えるでしょう。低周波のアナログシステムや、常時高速のエッジレートで動作するわけではないデジタルシステム(SPIやI2Cなど)では、IPCクラス3に準拠する必要がある高信頼性システムも含めて、ENIGが選択されることが一般的です。また、高密度のBGAまたはQFNパッケージのパッドにも適しています。上述のめっき材を見ると、特定の用途に適した材料があるのがわかります。たとえば、RFシステムには無電解銀やOSPが最適で、無鉛対応が必要なスローアウェイ(クラス1)製品には無電解錫が適していると考えられます。超高速デジタルやRFなど、より特殊な用途では、以下に詳述するように、めっき厚が極めて重要になります。

PCBのめっき材とめっき厚の指定方法

典型的なPCBのめっき厚は、約100マイクロインチです。無電解銀とOSPの場合、通常の厚さは約10マイクロインチまで薄くできます。PCBのめっき材とめっき厚は、製作メモで簡単に指定できます(以下の例を参照)。試作品を製作していて、メーカーが標準の見積もりフォームを持っている場合は、ここでめっき材の種類を指定することができます。これらのフォームでは、厚さを記載する場所がないことがあるため、特定の厚さが必要な場合は必ず指定してください。必要なめっき厚を指定したら、求められる厚さに塗布するのは製造業者の責任となります。

PCB製作メモにめっき厚を指定
PCBめっきを指定する製作メモの例。ここでは、めっき厚は具体的に指定されておらず、代わりに完成した銅箔重量が記載されています。こちらのブログでは、製作メモ全文をダウンロードするためのリンクを紹介しています。

めっき材の厚さが重要なのはなぜでしょうか?これには2つの理由があります。まず、IPC-2221A規格では、IPC製品クラスごとに最小めっき厚を定めています。 (表4.3参照。この規格は、こちらのリンクからダウンロードできます)。製品をIPC規格のいずれかの製品クラスに準拠させたい場合は、めっき厚がその仕様を満たしていることを確認する必要があります。製作メモで通常行っているように、製品クラスを指定すると、最小めっき厚が示唆されます。そのとき、値に矛盾が生じないように気をつけてください。そうしないと、製造業者からめっきに関するメモについての確認メールが届くことになるでしょう。

PCBのめっき厚を気にするもう1つの理由は、損失への影響です。低周波数では、おそらく周波数への影響に気付かないでしょう。そのため、低速デジタル信号と1GHz以下の周波数帯を使う無線では、PCBのめっき厚についてそれほど心配する必要はありません。かつて私は、テストセットアップで受信機を圧倒したENIG(高周波には不向き)を使用し、5.8GHzのWi-Fiでカスタムプリントエミッターを動作させたことがあるので、回路が正しく設計されていれば、これらの周波数ではほとんどのめっきを使うことができます。

損失の問題は、短距離レーダー(24 GHz)以上など、mmWave周波数で発生します。これらの周波数においては、特にRogersなど、損失分が少ないRF基板で、銅の粗さが損失の原因となることがよくあります。めっき厚は、信号が伝播するときに信号が経験する粗さ、つまり表面摩擦抵抗を決定します。結果の例については、この記事で紹介しているJohn Coonrodの結果、特に、挿入損失を示した一連のグラフをご覧ください。ご覧のように、めっきが粗いほど、損失分が増加する可能性があります。便宜上、マイクロストリップを以下の1つのグラフに再現しました。

PCBめっき厚の挿入損失
2つの厚さのENIGめっき銅とむき出しの銅の単位長さあたりの挿入損失。ENIGめっきを厚くするほど、より多くの損失が発生します。[出典]

設計に必要なPCBめっきを決定し、製作要件を指定する準備ができたら、Altium Designer®の使いやすい製作ツールを使用してドキュメントを作成できます。設計の完全な設計レビューと製作の準備が整ったら、チームは Altium 365™プラットフォームを通じてリアルタイムで共有および共同作業を行うことができます。Altium 365を使用すれば、安全なクラウドプラットフォームで製作データと製作要件を共有できます。

ここでは、Altium 365 と Altium Designer で何が可能か、その一部を紹介したに過ぎません。ぜひ、Altium DesignerとAltium 365をご検討ください。Altium Designerの無償評価版をを今すぐ開始しましょう。

筆者について

筆者について

Zachariah Petersonは、学界と産業界に広範な技術的経歴を持っています。PCB業界で働く前は、ポートランド州立大学で教鞭をとっていました。化学吸着ガスセンサーの研究で物理学修士号、ランダムレーザー理論と安定性に関する研究で応用物理学博士号を取得しました。科学研究の経歴は、ナノ粒子レーザー、電子および光電子半導体デバイス、環境システム、財務分析など多岐に渡っています。彼の研究成果は、いくつかの論文審査のある専門誌や会議議事録に掲載されています。また、さまざまな企業を対象に、PCB設計に関する技術系ブログ記事を何百も書いています。Zachariahは、PCB業界の他の企業と協力し、設計、および研究サービスを提供しています。IEEE Photonics Society、およびアメリカ物理学会の会員でもあります。

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